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氷狼攻め

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 イスベルグの両翼から膨大な冷気が放出され、空気中に十ほどの氷塊が現れる。
 その氷塊は徐々に形を変えながらデザストルに向かって高速で飛んでいった。
 魔法の名前通り氷塊は氷の狼へと変貌する。まるで意識を持っているかのように狼たちは左右に動き回りデザストルを翻弄しながらその体に噛み付いた。
 首や翼、手足に牙を立てる氷の狼。

「鬱陶しい魔法だなぁ! だが、この程度の魔法回避する必要もねぇ!」

 デザストルはそう叫んで体に張り付く狼たちをを振り払おうとする。
 確かに狼たちの大きさなどデザストルやイスベルグに比べれば、大した大きさではない。
 牙を立てているとしても分厚い体表には傷ひとつつけることはできないだろう。
 デザストルが必死に回避しなかったのはそれが理由だ。
 余裕そうに振り払おうとするデザストルだったが、一気に顔が歪む。
 襲ったのは強烈な痛みだった。

「グァ! な、なんだこれ・・・・・・か、体が」

 驚愕するデザストルの目に映ったのは凍りついていく自分の体である。
 凍っているのは体表だけでない。噛み付いたところから体内に冷気を送り血液を凍結させていた。
 痛みを与えながら体の動きを鈍らせるイスベルグの魔法『氷狼攻め』を受けたデザストルは困惑してしまう。
 
「何をしやがった、テメェ!」
「外部を破壊するだけが攻撃ではない。どれだけ強固な体を持っていたとしても内部から凍らされれば意味がないだろう。どうだ、七百年ぶりの痛みは」
「狂っちまいそうだぜぇ、怒りでなぁ!」

 魔法『氷狼攻め』の仕組みを聞いたデザストルは怒りを燃やし、体温を急上昇させた。それにより凍結した血液を溶かし、体の自由を取り戻したデザストルは暴れるように腕を振り回す。
 その上で全身の炎の出力を上げて狼たちを消しとばした。

「一瞬凍ったところで意味はねぇだろ! さっさとぶち殺してやる」

 そう言いながらデザストルがイスベルグを睨みつける。しかし、先ほどまでいた場所にイスベルグはいなかった。
 この一瞬であれだけの巨体を見失ってしまったのである。
 だがドラゴンは魔力で相手の居場所を把握することが可能だ。
 
「こっちかぁ!」

 デザストルは一気に振り向き、背後に移動していたイスベルグを視界に捉える。
 しかし既にイスベルグは次の攻撃を発動していた。

「攻撃は一度で完結するものではない。自らを最強の種族だと思い込んでいるお前には『繋ぐ』という言葉の意味は理解できんだろうな。次へと繋ぐ攻撃、誰かに想いを繋ぐ戦い・・・・・・お前の致命傷は『侮り』だったな。この一瞬の隙がお前を殺す。古代魔法・戦々氷々」
 
 平然と説明してからイスベルグが放った魔法『戦々氷々』自らは何かを放つものではない。それ故にデザストルは何が起きているのか分からなかった。
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