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イスベルグVSデザストル

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 元々、イスベルグは自分の中に魔力を溜めすぎて暴発寸前だった。比喩でも揶揄でもなく魔力が溜まりすぎると世界を破滅させても余りあるほどの爆発を起こす。
 それは魔法を使えば良いという問題でもなく、何がきっかけで暴発してしまうかわからない状況だったのだ。
 そのため、魔力を持たない倉野の中に避難し少しずつ魔力を消費していたという状況。
 イスベルグが姿を現したということは、魔法を使える程度には魔力を消費したということだろうか。
 倉野はイスベルグの姿に目を奪われながらも思考を巡らせる。

「まさか、イスベルグさん・・・・・・」

 そんな倉野の呟きはデザストルの咆哮でかき消された。

「オラァ! イスベルグゥ・・・・・・クセェと思ったらテメェかよ!」

 そう叫びながらデザストルはイスベルグに向け赤黒い炎を吐き出す。その炎弾自体が通常のドラゴンと見間違えるほどの大きさだ。
 しかしイスベルグは冷静に表情を変えず、自らも口を開く。

「デザストル・・・・・・この世界に敗者復活のシステムは存在しない。大人しく退場するがいい」

 言葉を吐き出すと同時にイスベルグの口内には目で見えるほどの冷気が集約されていった。
 まるで蝋燭の小さな火でも消すかのようにイスベルグが息を吐き出すと地獄の業火は凍り砕け散る。
 キラキラと光を乱反射して散る氷の破片はイスベルグの神々しさに拍車をかけた。
 自分の攻撃を掻き消されたデザストルは不機嫌そうに口を開く。

「こんなところで何してやがんだぁ、成りそこないのイスベルグ! 俺様の攻撃に攻撃をぶつけやがってよぉ」
「攻撃? ただ息を吐いただけだ。あのような弱々しい火種に攻撃する必要がどこにある」
「七百年経ってもクソムカつく野郎だなぁ! 炎に嫌われた出来損ないがよぉ! オラァ!」

 言いながらデザストルは再び炎を吐き出した。次の炎は球体ではなく槍のように尖っている。
 しかし、イスベルグには通用しない。
 先ほどと同じように冷気を吐き出し、凍らせ砕け散らせた。

「どうやら地獄で脳髄まで焼かれたらしいな。いや、元からだったか」
「ああ?」
「一度通用しなかった技を繰り返してどうなる。人類を根絶やしにするという愚行も同じだ。一度負けたお前に何ができる」

 冷たく言い放つイスベルグ。
 どうやらその言葉はデザストルにとって地雷だったらしく、苛立ちで表情を歪めた厄災が翼から炎を放つ。
 翼の羽ばたきに合わせて放たれた炎は鋭い刀のような形でイスベルグに飛びかかった。しかし問題は形ではない。
 数百、数千という数の攻撃が一気に放たれたのだ。
 だが、イスベルグは全く慌てることなく口角を上げる。

「威力を上げても掻き消されると考え、数で仕掛けてきたか。底知れぬ地獄を知っているにしては随分と底の浅い思考だな」
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