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相見える闇と光
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下から睨みつけて叫んだ倉野。
しっかりとその声は届いていたらしく、デザストルは視線を下げた。
「ああ? 下等生物の鳴き声が聞こえたなぁ。俺様の名前を呼びつける度胸は認めるが・・・・・・」
倉野の姿をとらえたデザストルは明らかに不快そうな表情を浮かべる。
「下等生物が一匹・・・・・・気に食わねぇなぁ。身の丈に合わぬ大剣と正義ぶったツラ・・・・・・あの男にそっくりだぜぇ。それにクセェ・・・・・・鼻につくクソ溜めの臭いだ」
どうやら倉野の姿や表情が七百年前の英雄オーウェン・ビルドに似ていたらしい。だが不快感の理由はそれだけではないようだ。
自分を認識したデザストルにクレアシオンの鋒を向けながら倉野は再び叫ぶ。
「他の人を襲う前に僕と戦え!」
「ああ? 何で俺様が下等生物に命令されなきゃならねぇんだ。殺したい時に殺したいやつを殺す、心配しなくてもお前も殺してやるよ」
そう言いながらデザストルは大きく羽ばたき、移動の予兆を見せた。
どうせ殺すならば一人ではなく一気に大人数を、と考えているのだろう。
絶対にこの場から移動させるわけにはいかない。
倉野はそう判断し、デザストルを挑発する。
「逃げるのか!」
「・・・・・・何言ってやがんだ、下等生物。雑魚は何一つ決めることを許されていない、己が死ぬタイミングもなぁ」
「そうか、怖いならそれでもいいさ。どうせ七百年前も英雄オーウェンを見下していたんだろう! 見下した相手に負け、オーウェンのいない今蘇った! ただの臆病者だ!」
激昂させろ、とにかくデザストルの憎しみを自分に向けさせるんだ。倉野は自分にそう言い聞かせ挑発を繰り返す。
「お前が人間を根絶やしにしようとするのは人間が怖いからだろ! 自分を殺した種族を恐れているんだ!」
「クソがぁ! 超えちゃあならねぇ境界があんだろうが。そんなに死にてぇならぶち殺してやるよ!」
倉野の思惑通り挑発に乗ったデザストルは移動を取りやめ、口を開閉し牙を鳴らした。
するとデザストルの口内に赤黒い炎が集まっていく。
状況から察するに倉野への攻撃。おそらく炎の弾を吐き出すのだろう。
回避するために倉野は『神速』を発動しようとした。しかし、その瞬間頭の中にイスベルグの声が響く。
「よくやった、クラノ。お前が奴を挑発したおかげで全ての準備は整ったぞ。世話になったな・・・・・・あとは自分の身を守れ。お前と出会えて良かった」
まるで別れの言葉ではないか。倉野がそう思った瞬間、体から一気に力が抜けるのを感じる。
いや、力というよりももっと根源的なもの。そう魂が抜けていくような感覚だった。
だが倒れるわけにはいかない。
そんな状況でもデザストルを睨みつけていた倉野の視界が突如として光で溢れる。
それが光ではないと気づいたのは次の瞬間だった。
光だと錯覚したそれは一気に上空へと舞い上がる。
青白い体表の巨躯。纏う冷気と美しい両翼。デザストルを闇とするならばその姿はまさに光。
「イ、イスベルグさん・・・・・・どうして・・・・・・」
思わず倉野は光の名前を呼んだ。
そう、突如として現れた光は氷雪を司る青きドラゴン、イスベルグである。
しっかりとその声は届いていたらしく、デザストルは視線を下げた。
「ああ? 下等生物の鳴き声が聞こえたなぁ。俺様の名前を呼びつける度胸は認めるが・・・・・・」
倉野の姿をとらえたデザストルは明らかに不快そうな表情を浮かべる。
「下等生物が一匹・・・・・・気に食わねぇなぁ。身の丈に合わぬ大剣と正義ぶったツラ・・・・・・あの男にそっくりだぜぇ。それにクセェ・・・・・・鼻につくクソ溜めの臭いだ」
どうやら倉野の姿や表情が七百年前の英雄オーウェン・ビルドに似ていたらしい。だが不快感の理由はそれだけではないようだ。
自分を認識したデザストルにクレアシオンの鋒を向けながら倉野は再び叫ぶ。
「他の人を襲う前に僕と戦え!」
「ああ? 何で俺様が下等生物に命令されなきゃならねぇんだ。殺したい時に殺したいやつを殺す、心配しなくてもお前も殺してやるよ」
そう言いながらデザストルは大きく羽ばたき、移動の予兆を見せた。
どうせ殺すならば一人ではなく一気に大人数を、と考えているのだろう。
絶対にこの場から移動させるわけにはいかない。
倉野はそう判断し、デザストルを挑発する。
「逃げるのか!」
「・・・・・・何言ってやがんだ、下等生物。雑魚は何一つ決めることを許されていない、己が死ぬタイミングもなぁ」
「そうか、怖いならそれでもいいさ。どうせ七百年前も英雄オーウェンを見下していたんだろう! 見下した相手に負け、オーウェンのいない今蘇った! ただの臆病者だ!」
激昂させろ、とにかくデザストルの憎しみを自分に向けさせるんだ。倉野は自分にそう言い聞かせ挑発を繰り返す。
「お前が人間を根絶やしにしようとするのは人間が怖いからだろ! 自分を殺した種族を恐れているんだ!」
「クソがぁ! 超えちゃあならねぇ境界があんだろうが。そんなに死にてぇならぶち殺してやるよ!」
倉野の思惑通り挑発に乗ったデザストルは移動を取りやめ、口を開閉し牙を鳴らした。
するとデザストルの口内に赤黒い炎が集まっていく。
状況から察するに倉野への攻撃。おそらく炎の弾を吐き出すのだろう。
回避するために倉野は『神速』を発動しようとした。しかし、その瞬間頭の中にイスベルグの声が響く。
「よくやった、クラノ。お前が奴を挑発したおかげで全ての準備は整ったぞ。世話になったな・・・・・・あとは自分の身を守れ。お前と出会えて良かった」
まるで別れの言葉ではないか。倉野がそう思った瞬間、体から一気に力が抜けるのを感じる。
いや、力というよりももっと根源的なもの。そう魂が抜けていくような感覚だった。
だが倒れるわけにはいかない。
そんな状況でもデザストルを睨みつけていた倉野の視界が突如として光で溢れる。
それが光ではないと気づいたのは次の瞬間だった。
光だと錯覚したそれは一気に上空へと舞い上がる。
青白い体表の巨躯。纏う冷気と美しい両翼。デザストルを闇とするならばその姿はまさに光。
「イ、イスベルグさん・・・・・・どうして・・・・・・」
思わず倉野は光の名前を呼んだ。
そう、突如として現れた光は氷雪を司る青きドラゴン、イスベルグである。
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