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早まる鼓動
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まだ困惑しているオネットを置いてレインとリオネが屋敷の外に急ぐ。二人を追いかけるように走り出そうとしているアルダリンをオネットが呼びかけた。
「アルダリン、本当に始まってしまったと思っているのか。物語の続きが・・・・・・」
「オネット、確かに我々は商人・・・・・・ありとあらゆる情報を仕入れて慎重に慎重を重ねるのが性分でしょうな。しかしこの場は商人の領分ではない。考えるべきはどちらが後悔しないか、ですぞ」
そう言ってからアルダリンは屋敷の外へ走っていく。
外ではドクンドクンという音と同時にレインやリオネ、アルダリンが避難を勧める声が響いてきた。
「今すぐアンゼロスから避難してください! 説明している時間はないんです! 少しでも遠くへ!」
「逃げてください!」
そんな声を聞きながらオネットは未だ戸惑っている。
本当に目の前の男を信じていいのか。何の目的があって・・・・・・いや、アンゼロスで騒ぎを起こしたところでこの男に利益などあるはずがない。
つまり、何かが起ころうとしているのは限りなく事実に近いはずだ。
だが、このような騒動を起こしてしまえば。
そこまで考えてからオネットは自分の思考を振り払った。
彼の中で最も優先すべき感情が湧いてきたのである。
「ふっ、そうだ。私は何を動転しているのでしょう。最高に面白いじゃないですか。アンゼロスにいる全ての人間を助けるなど、最高に激る・・・・・・面白いよりも優先することなんてこの世にありはしないのだから!」
自己解決したオネットは倉野に微笑みかけた。
「全ての説明はことが終わってから・・・・・・お願いしますよ」
「はい!」
「まったく、アルダリンたちは何をしているのでしょう。全ての人間を逃すなんてそれほど難しいことでもないでしょうに」
そう言ってからオネットはアルダリンたちを追って屋敷の外に出る。
一人残った倉野は自分の中にいるイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん、厄災の復活まではどれくらいの猶予があるか、分かりますか?」
「お前がスキルで調べた方が早いだろう。だが、鼓動の音が早まっているそれほど時間は残されていないだろうな。今すぐこの集落の人間全員が避難を始めたとしても間に合うかどうか・・・・・・そもそもわかっているのか、避難させたところで、デザストルを倒せなければ人間という生物はここで終わる」
そう、どれだけ遠くへ逃したところで延命に過ぎない。デザストルを倒さなければ意味がないのだ。
それは倉野も理解している。
レインたちに指示を出した時点で戦う覚悟を決めていた。
しかし倉野の体はデザストルの脅威を感じ取っているかのように震える。
「戦うしか・・・・・・ない!」
自分を奮い立たせるためにそう呟く倉野。
そんな彼に平静を保たせるためイスベルグが状況を説明する。
「デザストルが復活のためにこの地を選んだのは、感情や痛みの収集だろう。湯畑には痛みや悲しみ、苦しみを抱えて訪れる人間が多い。そんな負を収集して自分の力としているのだ。つまり復活を果たしたデザストルは七百年前よりも強い。そしてこのタイミングで復活したのには明確な理由がある」
「今、復活した理由・・・・・・偶然じゃないってことですか?」
「ああ、そうだ。魔法式を発動するのに必要な要素はわかるか?」
イスベルグに問いかけられた倉野は自分の持っている知識で答えた。
「魔力ですよね」
「それも一つ。だが、重要なのはイメージだ。魔法式に関する知識と魔法へのイメージがなければ魔法は発動しない」
その言葉を聞いた倉野は唐突に気づく。
「アルダリン、本当に始まってしまったと思っているのか。物語の続きが・・・・・・」
「オネット、確かに我々は商人・・・・・・ありとあらゆる情報を仕入れて慎重に慎重を重ねるのが性分でしょうな。しかしこの場は商人の領分ではない。考えるべきはどちらが後悔しないか、ですぞ」
そう言ってからアルダリンは屋敷の外へ走っていく。
外ではドクンドクンという音と同時にレインやリオネ、アルダリンが避難を勧める声が響いてきた。
「今すぐアンゼロスから避難してください! 説明している時間はないんです! 少しでも遠くへ!」
「逃げてください!」
そんな声を聞きながらオネットは未だ戸惑っている。
本当に目の前の男を信じていいのか。何の目的があって・・・・・・いや、アンゼロスで騒ぎを起こしたところでこの男に利益などあるはずがない。
つまり、何かが起ころうとしているのは限りなく事実に近いはずだ。
だが、このような騒動を起こしてしまえば。
そこまで考えてからオネットは自分の思考を振り払った。
彼の中で最も優先すべき感情が湧いてきたのである。
「ふっ、そうだ。私は何を動転しているのでしょう。最高に面白いじゃないですか。アンゼロスにいる全ての人間を助けるなど、最高に激る・・・・・・面白いよりも優先することなんてこの世にありはしないのだから!」
自己解決したオネットは倉野に微笑みかけた。
「全ての説明はことが終わってから・・・・・・お願いしますよ」
「はい!」
「まったく、アルダリンたちは何をしているのでしょう。全ての人間を逃すなんてそれほど難しいことでもないでしょうに」
そう言ってからオネットはアルダリンたちを追って屋敷の外に出る。
一人残った倉野は自分の中にいるイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん、厄災の復活まではどれくらいの猶予があるか、分かりますか?」
「お前がスキルで調べた方が早いだろう。だが、鼓動の音が早まっているそれほど時間は残されていないだろうな。今すぐこの集落の人間全員が避難を始めたとしても間に合うかどうか・・・・・・そもそもわかっているのか、避難させたところで、デザストルを倒せなければ人間という生物はここで終わる」
そう、どれだけ遠くへ逃したところで延命に過ぎない。デザストルを倒さなければ意味がないのだ。
それは倉野も理解している。
レインたちに指示を出した時点で戦う覚悟を決めていた。
しかし倉野の体はデザストルの脅威を感じ取っているかのように震える。
「戦うしか・・・・・・ない!」
自分を奮い立たせるためにそう呟く倉野。
そんな彼に平静を保たせるためイスベルグが状況を説明する。
「デザストルが復活のためにこの地を選んだのは、感情や痛みの収集だろう。湯畑には痛みや悲しみ、苦しみを抱えて訪れる人間が多い。そんな負を収集して自分の力としているのだ。つまり復活を果たしたデザストルは七百年前よりも強い。そしてこのタイミングで復活したのには明確な理由がある」
「今、復活した理由・・・・・・偶然じゃないってことですか?」
「ああ、そうだ。魔法式を発動するのに必要な要素はわかるか?」
イスベルグに問いかけられた倉野は自分の持っている知識で答えた。
「魔力ですよね」
「それも一つ。だが、重要なのはイメージだ。魔法式に関する知識と魔法へのイメージがなければ魔法は発動しない」
その言葉を聞いた倉野は唐突に気づく。
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