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イスベルグの弟デザストル
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「これで確定した。この土地で厄災と呼ばれているのはデザストルという名のドラゴンだ。デザストルは地獄の業火を纏う真紅のドラゴン。奴は先代竜王の息子だった」
「竜王?」
倉野が聞き返すとイスベルグは少し面倒そうに詳細の説明を加えた。
「竜王というのは文字通りドラゴンの王だ。それくらいわかるだろう、話を進めるぞ。先代竜王には三体の子どもがいた。そのうちの一体がデザストル・・・・・・奴は竜王争いに負けドラゴンの谷を出ることになった。その後、塵芥に等しい魔物を集め集落を築き、七百年ほど前に死んだと聞いている。竜王にはなれなかったが人間から見れば厄災に等しい強さではあったな」
まるでそのデザストルというドラゴンを知り合いであるかのように語るイスベルグ。もちろん倉野もそこに疑問を抱き、問いかけた。
「あの、そのデザストルって・・・・・・もしかして」
「ああ、私の弟だ」
「!?」
突然告げられた事実に倉野は言葉を失う。
まさか、こんなところでイスベルグの身内と繋がるとは思っていなかった。想像すらできるわけがない。
だが、イスベルグの弟だとわかったことで確定したことがある。
今、復活しようとしている厄災デザストルは間違いなく強い。おとぎ話の通り、人間を全て根絶やしにできるほどの力を秘めているはずだ。
衝撃の事実を知った倉野は顔を伏せて悩む。
自分はどうするべきか。この事実をオネットやアルダリンたちにどう伝えるか。どうすれば厄災の復活を止められるのか。どうすれば誰も死なずに済むだろうか。
顔を伏せている倉野に気づいたリオネが心配して問いかける。
「大丈夫ですか、クラノさん」
「・・・・・・はい、大丈夫です」
リオネの声を聞き冷静さを取り戻した倉野は顔を上げてその場にいる全員に向けて話し始めた。
「みなさん聞いてください。詳しい説明は後で必ずします・・・・・・だから、とにかくこの都市から全ての人を逃がして欲しいんです。今すぐ」
倉野の言葉を聞くとオネットとアルダリンは即座に疑問を吐き出す。
「どういうことですか、クラノさん」
「何かわかったんですか? 厄災についてわかっていることがあるならば・・・・・・」
当然の行動だ。いきなりアンゼロスにいる全員を逃がせと言われれば疑問を抱き、問いかけずにはいられないだろう。
だが、そんな二人の疑問をかき消すようにレインとリオネが立ち上がった。
「わかった、どこまで逃せばいい?」
全てを納得したようにレインはそう問いかける。
一瞬遅れてリオネも頷いた。
倉野の言葉を全面的に信頼している二人に背中を押されて倉野は立ち上がる。
「ありがとうございます! とにかく遠くへ、できるだけ遠くへ逃してください!」
そんな三人の信頼と行動を目にしたオネットは戸惑いを見せた。
「それほどまでに信じるというのですか、クラノさんの言葉を」
「ええ、言ったはずですよ。クラノには信じる価値があるとね。もしもクラノが今すぐ踊れというのなら全力で踊って見せますよ」
レインはまっすぐな視線でそう答える。男の覚悟を目の当たりにしたアルダリンは思わず口角を上げた。
「ほっほっほ、そうでしたな。突然のことで動転してしまいましたが、今すべきことを誰よりも分かっているのはクラノさんでしょうな。私も住民や観光客を逃してきましょうぞ」
「アルダリンまで・・・・・・一体、クラノさんは・・・・・・」
「厄災に対抗しうる人間がいるとすれば彼くらいなものですよ。そう、オーウェンの再来です」
「竜王?」
倉野が聞き返すとイスベルグは少し面倒そうに詳細の説明を加えた。
「竜王というのは文字通りドラゴンの王だ。それくらいわかるだろう、話を進めるぞ。先代竜王には三体の子どもがいた。そのうちの一体がデザストル・・・・・・奴は竜王争いに負けドラゴンの谷を出ることになった。その後、塵芥に等しい魔物を集め集落を築き、七百年ほど前に死んだと聞いている。竜王にはなれなかったが人間から見れば厄災に等しい強さではあったな」
まるでそのデザストルというドラゴンを知り合いであるかのように語るイスベルグ。もちろん倉野もそこに疑問を抱き、問いかけた。
「あの、そのデザストルって・・・・・・もしかして」
「ああ、私の弟だ」
「!?」
突然告げられた事実に倉野は言葉を失う。
まさか、こんなところでイスベルグの身内と繋がるとは思っていなかった。想像すらできるわけがない。
だが、イスベルグの弟だとわかったことで確定したことがある。
今、復活しようとしている厄災デザストルは間違いなく強い。おとぎ話の通り、人間を全て根絶やしにできるほどの力を秘めているはずだ。
衝撃の事実を知った倉野は顔を伏せて悩む。
自分はどうするべきか。この事実をオネットやアルダリンたちにどう伝えるか。どうすれば厄災の復活を止められるのか。どうすれば誰も死なずに済むだろうか。
顔を伏せている倉野に気づいたリオネが心配して問いかける。
「大丈夫ですか、クラノさん」
「・・・・・・はい、大丈夫です」
リオネの声を聞き冷静さを取り戻した倉野は顔を上げてその場にいる全員に向けて話し始めた。
「みなさん聞いてください。詳しい説明は後で必ずします・・・・・・だから、とにかくこの都市から全ての人を逃がして欲しいんです。今すぐ」
倉野の言葉を聞くとオネットとアルダリンは即座に疑問を吐き出す。
「どういうことですか、クラノさん」
「何かわかったんですか? 厄災についてわかっていることがあるならば・・・・・・」
当然の行動だ。いきなりアンゼロスにいる全員を逃がせと言われれば疑問を抱き、問いかけずにはいられないだろう。
だが、そんな二人の疑問をかき消すようにレインとリオネが立ち上がった。
「わかった、どこまで逃せばいい?」
全てを納得したようにレインはそう問いかける。
一瞬遅れてリオネも頷いた。
倉野の言葉を全面的に信頼している二人に背中を押されて倉野は立ち上がる。
「ありがとうございます! とにかく遠くへ、できるだけ遠くへ逃してください!」
そんな三人の信頼と行動を目にしたオネットは戸惑いを見せた。
「それほどまでに信じるというのですか、クラノさんの言葉を」
「ええ、言ったはずですよ。クラノには信じる価値があるとね。もしもクラノが今すぐ踊れというのなら全力で踊って見せますよ」
レインはまっすぐな視線でそう答える。男の覚悟を目の当たりにしたアルダリンは思わず口角を上げた。
「ほっほっほ、そうでしたな。突然のことで動転してしまいましたが、今すべきことを誰よりも分かっているのはクラノさんでしょうな。私も住民や観光客を逃してきましょうぞ」
「アルダリンまで・・・・・・一体、クラノさんは・・・・・・」
「厄災に対抗しうる人間がいるとすれば彼くらいなものですよ。そう、オーウェンの再来です」
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