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厄災の鼓動

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 オネットの言葉を聞いた倉野は恐ろしい未来を想像してしまった。
 倉野は知っているのである。この土地に二つのエネルギーと魔法式が存在することを。

「・・・・・・それって、魔法式さえあればいつ世界が滅ぶような魔法が発動してもおかしくないってことですよね?」

 言葉では表せない寒気を感じながら倉野が問いかけた。
 するとオネットは何故そんなことを聞くのか、と疑問に思いながらも答える。

「そうですね。何者かが故意的に用意した魔力と魔法式であり尚且つ発動条件が満たされればですがね。そうなった時に後悔しても遅い。ですので私はこの土地の構造について研究しているのです」

 その答えを聞いた倉野は一瞬迷った。
 アンゼロスの構造が魔法式のそれと酷似していることを教えるべきかどうか。
 もちろん何故、倉野が知っているのかという話になるだろう。
 いや、今はそんなことを考えている暇などない。絶望的に大きな魔法式の発動がいつになるのかわかっていない状況。今この瞬間かもしれないし、いつまでも発動しないかもしれない。
 一人だけ魔法式の存在を知っている倉野は恐怖を感じる。
 迷った挙句、意を決した倉野がオネットの欲している答えを言葉にしようとした。

「あの、実はアンゼロスの構造は・・・・・・」

 そこまで口にした瞬間。
 腹の底に響くような音が聞こえた。ドクンという何処かで聞いたことがあるような音である。
 その場にいた全員が一気に身構え、周囲を確認した。
 だが、不自然な点は何もない。
 
「い、今のは何の音だったんでしょうか」

 リオネがそう言葉にするとレインも不思議そうに口を開く。

「大きな音というよりは直接体に響いてきたような・・・・・・」

 続けてアルダリンとオネットも音について考察し始めた。

「私がここにきてまだ三日ですが、このような音を聞いたのは初めてです。何かの合図かですか、オネット」
「いえ、私も聞いた覚えがありません。もしかすると何かが起きる前兆なのかもしれない」

 次の瞬間には再びドクンという音が響く。
 音に耳を澄ませ、どこから聞こえているのか確認する。
 ドクンドクンと音は一定間隔で響いてきた。
 何もわからないという不安が全員の頭をよぎる。
 どうやら、倉野たち以外にもドクンという音は聞こえているようで、屋敷の外から不安の声が聞こえてきた。

「何の音だ」
「おい、どこから聞こえてくるんだよ」
「お前も聞こえているのか」

 外から聞こえてくる声はパニック寸前という様子である。
 その間も音は続いていた。

「一体、何なんでしょうか・・・・・・」

 不安そうな表情を浮かべるリオネ。
 もちろん倉野もその音に不安を覚え『説明』を発動しようとした。だが、スキルの発動よりも先に頭の中に言葉が浮かんでくる。

「生命の誕生・・・・・・厄災の復活・・・・・・鼓動」
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