異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

革命という提示

「・・・・・・面白い」

　倉野の話を聞いたオネットは一言そう呟いた。
　その瞳は少年のように輝き、狡猾な軍師のように未来を見ているようにも感じる。
　オネットの一言を聞いたアルダリンは少し驚いたような表情を浮かべた。

「オネットから面白いという言葉を聞いたのはコア開発の話以来です」

　どうやら簡単には言わないらしい。
　だが、事前情報としてオネットという男は面白いと思ったことにだけ全力で参加すると聞いている。
　これは実質彼の了承を得たと考えていいのだろうか。
　倉野たちは期待を含んだ視線をオネットに送る。
　オネットは興味深そうに微笑んでから口を開いた。

「自分たちで世界を変える。だが変えるのはシステムじゃなく意識。なるほどなるほど、意識を変えるために選択肢としてシステムを提示するわけですね。訂正しましょう。命を語るにはまだ若いと言いましたが、若いからこそ未来を見据えて動くことができる。それはクラノさんの強みです」
「ありがとうございます」

　褒められた倉野が礼を言うとオネットはさらに言葉を続ける。

「私の根底にあるのはどこまで行っても人です。人がいるからこそ組織が生まれ、国が生まれ、流通が生まれ、生活が生まれる。人の意識に語りかける革命ならば賛同できますよ。発生する不満すら計画通り・・・・・・ええ、面白いです」

　再び面白いという言葉を引き出したところでレインが身を乗り出した。

「それでは」

　そこまでレインが口にしたところでオネットは言葉を続ける。

「ええ、ですが今すぐというわけにはいきません。そうですね、私の研究が終わり次第というところでどうでしょう？」

　優しい笑みを浮かべそう答えるオネット。
　欲していた答えだったが研究が終わり次第という条件がついている。手放しで喜んでいいのか難しいところだ。
　オネットの答えを聞いた倉野は抱いていた疑問を口にする。

「研究・・・・・・それはアンゼロスの構造についての、ですか？」
「おや、アルダリンにでも聞いたのですか？」

　そう言いながらオネットはアルダリンに視線を送った。するとアルダリンは首を横に振る。

「私が話したのはこの土地について、という言葉だけですぞ。オネットが気になっているのは構造という言葉でしょう？」
「ええ、構造なんて言葉はこの土地の違和感に気づいていないと出ない言葉です。益々もって面白い人ですねクラノさんは。ふっ、その通りですよ私が研究しているのこの都市の構造です」

　オネットがそう話すとリオネが首を傾げた。

「あの、アンゼロスの構造って何かおかしいんでしょうか」

　そんな彼女に同調するようにレインが頷く。

「確かにそうだね。壁に囲まれていて、大通りがあって・・・・・・うん、他の街と大きく変わらないような気がするけど」

　するとオネットは自分の好きな話をする少年のような表情で語り始めた。