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連載
職業当てゲーム
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屋敷の中もそれほどの豪華さはない。シンプルなデザインでまとめられており、生活に必要な最低限のものを置いているといった感じだ。
全体的に清潔感があり、オネットが綺麗好きだとわかる。
そしてアルダリンに案内されるまま倉野たちは応接間へと通された。
応接間の扉を開けると眼鏡をかけた四十代後半くらいの男性が椅子に座っている。赤に近い茶髪が印象的で長い前髪を結んであげていた。彼がオネット・マッティーノなのだろう。
オネットが座っている椅子はよくある木製の一人掛け。大きな机を挟んで向かい側に三人掛けのソファが置いてある。倉野はまるで集団面接でもするかのような雰囲気を感じていた。
いや、実際に集団面接と言っていいだろう。オネットが面白いと思うか、という面接だ。
扉が開き倉野たちが見えるとオネットは座ったまま名乗る。
「やぁ、どうも。私がオネット・マッティーノです」
倉野たちが思っていたよりも好意的な挨拶だった。
変わり者ではあるが偏屈ではないらしい。商会の代表として様々な交渉を行なっていたのだから、当然といえば当然だ。
先に名乗られてしまった倉野たちは急いで立ったまま名乗り始める。
「申し遅れてすみません、倉野と申します」
「リオネ・ブルーと申します」
「オランディ国軍近衛騎士団長レイン・ネヴァーと申します」
三人の名前を聞くとオネットは穏やかな表情でソファを手で指し示した。
「まぁまぁ、とにかくお座りください。立ったままする話ではないでしょう」
そう促された倉野たちはいそいそとソファに座り、オネットと向かい合う。
倉野たちが座ったのを確認するとオネットはまだ入口で立っているアルダリンに声をかけた。
「アルダリン、お前も同席するのでしょう? 隣の部屋にある椅子を持ってきたらどうだ。あ、ついでに茶を出してくれないか。今日は家政婦が休みをとっているんだ、どこに何があるのかわからない」
「はいはい、わかりましたよ」
オネットからの頼み事に慣れている様子のアルダリンが椅子と茶を用意するため部屋を去ろうとする。
そんな彼の背中にリオネが話しかけた。
「あ、私も手伝いましょうか?」
するとアルダリンは優しく微笑んでから自慢の髭を撫でる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。どうぞ先に話を進めておいてください。三人の言葉でしか伝わらないこともありましょうぞ」
そう言ってアルダリンは一度応接間の扉を閉めた。
扉が閉まった直後、オネットは倉野たちを順番に眺めてから微笑む。
「職業柄様々な方を見てきましたが、なるほど面白い面構えをしている。騎士と冒険者・・・・・・ふむ、彼は」
レイン、リオネの職業を口にしてからオネットの視線は倉野で止まった。少し考えてから再び微笑む。
「一番近いのはどこかに勤める商人。だが、ここ最近は戦いの場に身を置いているというところだね」
自分の近況を言い当てられた倉野は驚きをそのまま表情に反映させた。
どうしてわかるんだ、と思いながらもオネットの言葉に耳を傾ける。
「いや、挨拶ついでに自分がどのような人間か教えておこうと思ってね。観察して答えを出すのが自分の仕事であり生き方だよ。レインさんは自分の職業を名乗ってしまったから言い当てるも何もなかった。リオネさんはその装いである程度分かる。クラノさんは少し難しかったが、体つきと新しい拳の傷を見れば推測できないことはない」
オネットはゲームを楽しむ少年のような瞳で語った。
彼の言葉を聞いた倉野は頷きながら言葉を返す。
「正解です。さすがですね、オネットさん」
全体的に清潔感があり、オネットが綺麗好きだとわかる。
そしてアルダリンに案内されるまま倉野たちは応接間へと通された。
応接間の扉を開けると眼鏡をかけた四十代後半くらいの男性が椅子に座っている。赤に近い茶髪が印象的で長い前髪を結んであげていた。彼がオネット・マッティーノなのだろう。
オネットが座っている椅子はよくある木製の一人掛け。大きな机を挟んで向かい側に三人掛けのソファが置いてある。倉野はまるで集団面接でもするかのような雰囲気を感じていた。
いや、実際に集団面接と言っていいだろう。オネットが面白いと思うか、という面接だ。
扉が開き倉野たちが見えるとオネットは座ったまま名乗る。
「やぁ、どうも。私がオネット・マッティーノです」
倉野たちが思っていたよりも好意的な挨拶だった。
変わり者ではあるが偏屈ではないらしい。商会の代表として様々な交渉を行なっていたのだから、当然といえば当然だ。
先に名乗られてしまった倉野たちは急いで立ったまま名乗り始める。
「申し遅れてすみません、倉野と申します」
「リオネ・ブルーと申します」
「オランディ国軍近衛騎士団長レイン・ネヴァーと申します」
三人の名前を聞くとオネットは穏やかな表情でソファを手で指し示した。
「まぁまぁ、とにかくお座りください。立ったままする話ではないでしょう」
そう促された倉野たちはいそいそとソファに座り、オネットと向かい合う。
倉野たちが座ったのを確認するとオネットはまだ入口で立っているアルダリンに声をかけた。
「アルダリン、お前も同席するのでしょう? 隣の部屋にある椅子を持ってきたらどうだ。あ、ついでに茶を出してくれないか。今日は家政婦が休みをとっているんだ、どこに何があるのかわからない」
「はいはい、わかりましたよ」
オネットからの頼み事に慣れている様子のアルダリンが椅子と茶を用意するため部屋を去ろうとする。
そんな彼の背中にリオネが話しかけた。
「あ、私も手伝いましょうか?」
するとアルダリンは優しく微笑んでから自慢の髭を撫でる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。どうぞ先に話を進めておいてください。三人の言葉でしか伝わらないこともありましょうぞ」
そう言ってアルダリンは一度応接間の扉を閉めた。
扉が閉まった直後、オネットは倉野たちを順番に眺めてから微笑む。
「職業柄様々な方を見てきましたが、なるほど面白い面構えをしている。騎士と冒険者・・・・・・ふむ、彼は」
レイン、リオネの職業を口にしてからオネットの視線は倉野で止まった。少し考えてから再び微笑む。
「一番近いのはどこかに勤める商人。だが、ここ最近は戦いの場に身を置いているというところだね」
自分の近況を言い当てられた倉野は驚きをそのまま表情に反映させた。
どうしてわかるんだ、と思いながらもオネットの言葉に耳を傾ける。
「いや、挨拶ついでに自分がどのような人間か教えておこうと思ってね。観察して答えを出すのが自分の仕事であり生き方だよ。レインさんは自分の職業を名乗ってしまったから言い当てるも何もなかった。リオネさんはその装いである程度分かる。クラノさんは少し難しかったが、体つきと新しい拳の傷を見れば推測できないことはない」
オネットはゲームを楽しむ少年のような瞳で語った。
彼の言葉を聞いた倉野は頷きながら言葉を返す。
「正解です。さすがですね、オネットさん」
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