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稀有な土地

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 話の内容を理解したアルダリンはオネットに話を取り継ぐために屋敷の中へ戻って行った。
 彼を見送ってからレインは困ったような表情で口を開く。

「どうだろうか・・・・・・面白いと思ったことしかしないというオネット氏がこの土地の研究に夢中なのであれば、ピース・リンクへの参加は難しいんじゃないかな」
「確かにそうですね・・・・・・」

 レインの言葉に同意するリオネ。
 二人がオネットが参加してくれるかどうかと心配している中、倉野だけは違うことを思考していた。

「この土地の研究って・・・・・・イスベルグさん、さっきの話ですけど」

 倉野が小声で呟くように自分の中にいるイスベルグに話しかける。
 するとイスベルグは少し面倒そうな声色で返答した。

「なんだ? この集落の構造が魔法式と似ているという話か?」
「ええ、そうです。その感覚って人間にもわかるものなんですか?」
「難しい話だな。私はドラゴン・・・・・・故に人間の感覚を理解することはできぬ。お前たち人間が魔物の感覚を理解できぬようにな。だが、話を聞く限りそのオネットという者は魔法に詳しいのだろう? コアとかいう妙な魔石を開発するくらいだからな」

 倉野の問いかけに答えるイスベルグ。
 さらに倉野は小声で会話を続けた。

「そうだと思います」
「だとするならば魔法の構造を解明しているかもしれんな。私のように感覚で理解しているのではなく己の理論で不自然さに辿り着いた、ということならばあり得る」
「不自然さ・・・・・・ですか?」
「ああ、この土地に踏み入れた瞬間に足元の熱を感じたろう?」

 イスベルグに問いかけられ倉野は足元の温度を再確認する。革靴を履いていても岩盤浴のように熱い。

「この地熱ですか? 温泉の近くですし、地熱くらいそれほど珍しいものではないのかと」
「この土地の下にマグマ溜まりが存在しているのだろうな。熱自体はそれによるものだ。だが、この熱には微量の魔素が混じっている。つまりこの土地の下にあるのはマグマ溜まりであり魔素溜まりだ」
「それがイスベルグさんの言う不自然・・・・・・」
「ああ、熱と魔素。二つのエネルギーが共存している稀有な土地だ」

 イスベルグはそう答えて欠伸のような声を漏らした。疲れているのだろうか、と倉野は会話を終える。
 だが、倉野が考えるべきはここから先起こる大事態に備えて体力を蓄えているのかもしれない、という可能性だった。
 この土地が非常に珍しい。それ故にオネットが研究に没頭している。そう理解した倉野はそれ以上疑問を持つことはなかった。
 倉野がイスベルグとの会話を終えた頃、屋敷の中からアルダリンが姿を現す。

「いやはや、お待たせ致しましたな。どうやらオネットは興味を持ったらしく話だけでも聞きたいと言っています。どうぞ、中で話しましょうぞ」

 そう言ってアルダリンは倉野たち三人を屋敷の中へ招き入れた。
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