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通用しないテンプレ

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 アルダリンに問いかけられ倉野は頷いた。

「ええ、実はそうなんです。オネットさんに話したいことがありまして・・・・・・今、オネットさんは屋敷の中におられますか? 先ほど声をかけたのですが反応がなくて」
「ほっほっほ、彼は自分が面白くないと思えば徹底的に動きませんからな。不意な来客を避けるために呼び鈴も設置していないほどです。先ほどのレインさんの声も届いていましたが、誰かわからない相手に会うのは面倒だからと無視するように言われました。おっと、結論を申しますともちろんオネット中におりますぞ」

 そう言いながらアルダリンは屋敷の方を手で指し示す。
 なるほど、と倉野たちは納得した。グランダー伯爵から聞いていた通りオネット・マッティーノという男は変わり者らしい。
 呼び鈴すら設置しないという徹底ぶりだ。
 だが、こうしてアルダリンが出てきてくれたおかげで話を進めることができる。
 そう判断したレインがアルダリンに語りかけた。

「あの、アルダリンさん、不都合がなければオネット氏に合わせていただけませんか? どうしてもお話したいことがありまして」
「ふむ、リオネさんやクラノさんもいることですし可能な限りお力になりたいというのが私の本心です。しかし今のオネットは人と会うことを極端に嫌がっておりましてな。もしよろしければ話の内容を教えてはいただけませんか。その内容を取り継ぎ、私から話した上で話の場を設けさせましょう」

 少し申し訳なさそうにアルダリンは答える。
 考えてみれば当然かもしれない。自分が立ち上げた商会を他人に乗っ取られ、部下たちから追い出されたのだ。人を避けるようになるのも無理はない。
 そう理解した上でリオネが呟く。

「・・・・・・そうですよね。信頼している人から裏切られたのであれば、人を避けるのも・・・・・・」
「確かに・・・・・・」

 リオネの呟きに同調する倉野。
 しかしアルダリンは呆気に取られたような表情を浮かべてから笑った。

「ん? ああ、ほっほっほ、そうではありませんぞ。今オネットはこの土地の研究をしてましてな、人に会う時間が惜しいと考えているというだけの話です。いやはや勘違いさせてしまって申し訳ない」

 違ったらしい。裏切られた結果、人を避けるようになったというようなよくある展開ではなかった。ただ人に会うよりも自分が面白いと思う研究を続けたかっただけ。やはり変わり者のようだ。
 それを知った倉野は苦笑してからレインとリオネに視線を送る。するとレインたちは同意するように頷いた。
 事情を話そうという意思疎通である。
 二人の同意を得た倉野はアルダリンに事情を話し始めた。
 世界平和を目指すためにピース・リンクという機関を立ち上げること。
 その上で世界の国々をつなぐ世界連盟をつくるという計画。
 世界連盟への加盟を打診する際に交渉に特化した者が必要だということ。
 
「なるほど、その交渉役にオネットをとお考えということですな?」
 
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