異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
439 / 729
連載

出発の朝

しおりを挟む
 自分の部屋に戻った倉野はツクネの食事を終えると明日に備えて早めに眠ることにした。
 ベッドに入りツクネに話しかける倉野。

「そろそろ寝るかな。ツクネ、明日からまた移動になるけど大丈夫か?」
「ククー」
「そうだね、新しい場所に行くのは楽しみだ」
「クククッ!」
「ああ、美味しいものも食べような。温泉に入って・・・・・・ああ、オネットさんに加入してもらって・・・・・・」

 会話の途中で倉野は眠気に襲われゆっくりと瞼を閉じた。
 そんな倉野の顔に身を寄せたツクネは体を丸め、満足そうな表情を浮かべて自身も眠り始める。
 一人と一匹はお互いにとってこの世界で唯一家族と呼べる存在に身を寄せながら穏やかな夜を過ごしていった。

 次の日、窓から差し込む日の光に気づき倉野が目を覚ます。その瞬間に部屋の外からリオネの声が聞こえてきた。

「おはようございます、クラノさん。起きてますか?」
「ん・・・・・・あ、はい。今起きました。おはようございます」

 まだ残っている眠気を払うように目をこすりながらクラノが返答する。
 すると扉の向こうにいるリオネは申し訳なさそうに言葉を続けた。

「すみません、起こしちゃいましたね」
「いえ、ちょうど起きるところだったんです。ちょっと待ってください」

 そう伝えてから倉野は急いで身支度を整える。まだ眠っていたツクネを鞄の中に移動させると慌てて部屋から出た。
 扉を開けてすぐ倉野はリオネに微笑みかける。
 
「お待たせしました」
「あ、ここ寝癖がついていますよ」

 そう言いながらリオネが倉野の髪に手を伸ばした。何回か撫でるように髪を直すと満足そうに笑顔を浮かべる。

「よし、これで大丈夫です。さぁ、レインさんが待っていますよ」

 寝癖を直すという目的があったとはいえ突然頭を撫でられた倉野は照れ臭くなって自分の頭に触れる。リオネの手の温度が鮮明に残っていた。

「あ、ありがとうございます」

 倉野が動揺しながら礼を言うとリオネは優しく微笑んで彼の手を引く。

「ほら、行きましょう」

 倉野はその行動が今までのリオネよりも積極的だと感じた。
 どうしたんだろうと思いながらも倉野は彼女についていく。
 リオネに手を引かれたまま屋敷の正門まで来ると全ての準備を終えたレインが立っていた。

「あ、レインさん」

 倉野が名前を呼ぶとレインは爽やかに右手を上げて返答する。

「クラノ、リオネ。おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます」

 挨拶を交わすとレインは正門の外を指差した。
 するとそこには小さめのフォンガ車が待機している。

「グランダー伯爵が昨夜のうちに用意してくれたのさ。フォンガ車なら目的地のアンゼロスまで半日と少しで着くはずだよ」

 フォンガ車の説明をするとレインは荷物をまとめて乗り込んだ。
 倉野たちも続くように乗り込む。
 目的地は観光都市アンゼロス。目的はオネット・マッティーノの勧誘。
 
「さぁ、行こうか」

 そのレインの一言でフォンガ車は進み出した。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。