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シュクルートの真実

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 自分でもどうしてここまで推理することができたのか理解していない倉野。
 だが、シュクルートの話に乗るつもりなどなかった。

「お断りします。先ほどの方が言っていたように詐欺師であることは間違いないようなので」

 倉野がそう言い放つとシュクルートは嬉しそうに笑う。

「はははっ、正義感も持ち合わせているんですね。では、これは知っていましたか? 先ほどあなたが助けた男の名前はドンツー・ディアディア。奴隷売買に手を出し、財産を築いた男です」
「え?」

 突然告げられた事実に倉野の中の善悪が逆転した。
 シュクルートがドンツーという男を騙し財産を奪った悪人だと思っていた倉野。だが、真実は悪人であったドンツーを騙し財産を奪い取ったという構図だった。
 シュクルートが詐欺師だという事実に変わりはない。しかし、その意味合いは変わってくる。

「・・・・・・どういうことですか?」

 倉野がそう問いかけるとシュクルートはいやらしい笑みを浮かべて聞き返した。

「おや、私の話を聞きたいんですか? 詐欺師の戯言を」

 嫌味な言葉を投げかけられた倉野は苦笑しながらも反省する。

「すみません、わかった気になっていました。今は・・・・・・できれば事情をお聞きしたいと思っています」
「・・・・・・はぁ、挑発にも乗ってきませんか。やりにくいったらありゃしませんね。そのように素直に謝られたのでは張り合いがありませんよ」
「すみません」

 申し訳なさそうに倉野が再び謝罪するとシュクルートは諦めたように口を開いた。

「私の依頼主は娘を無理やり奴隷にされたとある父親です。娘を取り返すためにはドンツーの全てを奪う必要がありました。そのために私は金主から見せ金を借り、ドンツーを罠に嵌めたのです。あとはお察しの通りかと。あぁ、もちろん得た利益は全て金主と依頼主の父親に渡しています。私の全財産はドンツーに持っていかれたもので全てです」

 砕けたような口調で話すシュクルート。どうやら少しずつ心を開いているらしい。
 そんなシュクルートを見た倉野は彼の評価をし直す必要があると反省する。
 彼は詐欺師でありながらもいわゆる義賊というような立場だった。
 行為の正しさは置いておいて、その思想は一方的に断罪できるものではない。
 シュクルートの事情を知った倉野はふと気になったことを口にする。

「えっと、全財産は本当に渡しちゃったんですか?」
「ええ、そうですよ。約束は約束、契約は契約ですから。それゆえに今の私は無一文です」

 自分の利益のためではなく他人のために自らの能力を発揮する彼を悪人だと言い切れるだろうか。彼には彼の正義があった。

「改めて謝罪させてください。詐欺師扱いをして申し訳ありませんでした」

 倉野が正式に謝罪するとシュクルートは爽やかに微笑む。

「そこまで謝られると恐縮してしまいますよ。理解してくださったならよかったです。それでは・・・・・・」

 そう言ってシュクルートは右手を開いて差し出した。
 
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