異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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行動前夜

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 倉野とレインが陥った謎の興奮状態が落ち着いたところでリオネが状況をまとめる。

「えっと、オネットさんの居場所はアンゼロスで確定ですよね。どうしましょうか、今から向かうこともできますけど」

 そう言いながらリオネは部屋の中から窓の外を眺めた。
 陽が沈みかけ空は黒と橙が拮抗している。すぐに夜が来ることは明らかだ。
 リオネの隣で外を眺めていたレインが冷静に答える。

「もうこんな時間か。確かに残された時間は多くないが無理して夜に進んだところで意味はないだろう」
「私もそう思います」

 レインの言葉に同調したリオネは反応を待つように倉野へ視線を送った。
 確かにレインの言う通り、暗闇の中では一気に進むこともできないだろう。むしろ夜は休んで明日、フォンガ車などで進む方が効率的かもしれない。
 そう考えた倉野は二人に同意する。

「そうですね。今日はこの家で休ませていただいて、明日の朝出発しましょう」

 三人の意見が一致したところで倉野班の話し合いは終わった。
 グランダー伯爵は各人に一部屋ずつ用意してくれている。倉野たちは自分の部屋に戻っていった。
 部屋に戻った倉野はベッドに座ってから自分の鞄を開きツクネを抱き抱える。

「起きてるかい、ツクネ」
「クー?」

 ずっと眠っていたらしくツクネは寝ぼけ眼で答えた。
 そんなツクネの頭を撫でながら倉野はもう一度鞄を覗き込む。すると蓄えておいた干し肉がなくなっていることに気づき、ツクネをベッドに離した。

「そっか、干し肉はもう全部食べちゃったんだな。ちょっと買ってくるからここで待っててくれ」

 倉野はそうツクネに伝えて、立ち上がり部屋を出る。
 するとちょうどグランダー伯爵班の話が終わったようで、部屋の前の廊下に伯爵とレイチェル、シラムが歩いていた。
 伯爵は部屋から出てきた倉野に気づき即座に声を掛ける。

「おや、クラノ殿。何かあったかな?」
「あー、蓄えていた干し肉がなくなってしまったので買いに行こうかと」
「干し肉? ああ、あの子のご飯だね」

 倉野の言葉からツクネ用だと察した伯爵は微笑みながらそう返した。
 肯定するように倉野が頷くと伯爵はさらに言葉を続ける。

「干し肉なら我が家にもあるんじゃないかな。どうだ、シラム」
「ええ、保存食として多少備蓄がございます」
「いくらか用意してクラノ殿に渡してあげなさい」
「畏まりました」

 伯爵の指示を受けたシラムが頷いた。伯爵の優しさに甘えていいのだろうか、と倉野が口を開く。

「え、いいんですか?」

 すると思いもよらぬ方向から答えが返ってきた。

「だめです!」
「え?」

 驚いた倉野が声に反応する。答えたのはレイチェルだった。
 驚いたのは倉野だけではない。伯爵も同じように驚き、レイチェルに問いかける。

「どうしたんだ、レイチェル。もしかして夜食にしようと思っていたのか? だったら他の料理を用意させよう。いや、夜に食べすぎると太ってしま」
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