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優しさの行方
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伯爵の話を聞いた倉野が最初に思いついたのはアルダリンのことだった。
ネメシスの陰謀に巻き込まれ意識を失わされたアルダリン。命に別状がなかったとはいえ、被害者であることに間違いはない。
倉野は目覚めてからずっと彼のことが気になっていた。
少し身を乗り出し、倉野がそれを言葉にする。
「えっと、ピース・リンクには直接関わらないことなんですけどいいですか? アルダリンさんのお見舞いに行きたくて」
すると少し残念そうな表情を浮かべたリオネが口を開いた。
「あの、クラノさん。伝えられていなかったのですが、アルダリンさんはもう帝都にはいないんです」
「もしかして、オランディに帰っちゃったんですか?」
倉野が聞き返すとリオネは首を横に振る。どうやらオランディに帰った訳ではないらしい。
「いえ、オネットさんの居場所がわかったとかで慌てて帝都を出られたんです」
アルダリンの護衛として雇われていたリオネ。だが、状況を察したアルダリンは彼女を帝都に置いていき別の冒険者を護衛として雇ったという。
「私もついていく、と言ったんですけど、今はクラノさんのそばにいた方がいいと。気を遣ってくれたみたいです」
リオネは申し訳なさそうにそう付け足した。
先の戦いでネメシスに加担していたマッティーノ商会。それを立ち上げたのがアルダリンの友人オネット・マッティーノである。商会の代表だった彼は邪悪な野望を抱いたエメロードという男に商会を乗っ取られ追い出された。
アルダリンはオネットの行方を自分の部下に探させていたのだが、ようやく見つかったということなのだろう。
その上でアルダリンは倉野とリオネを気遣い、他の冒険者を護衛として雇った。全ての行動に優しさが滲み出ている。
アルダリンの事情を知っている倉野は会えなくても仕方ないか、と納得した。
「そっか、オネットさんの居場所がわかったのなら、すぐにでも駆けつけたいですよね」
倉野がそう呟くとリオネがさらに言葉を付け足す。
「まだクラノさんが目覚めそうになかったのでアルダリンさんから言付けを預かっていますよ。お世話になりました。またどこかでお会いしましょう、とのことです」
「お世話だなんて、むしろこちらこそですよ。船にも乗せてもらって、宿のお金も払ってもらいましたからね。どこかで会った時は恩返ししないと」
友人の元へと向かったアルダリンを思いながら再び会えることを願って倉野は微笑んだ。
アルダリンの話が終わると議題はエスエ帝国側からの答えを待つ期間をどう過ごすかに戻る。
手を上げて発言したのはレインだった。
「ここから数日間どう過ごすかについて考えがあるんだけどいいかい?」
これまでグランダー伯爵とレオポルトに対しては比較的丁寧な言葉遣いをしていたレインだが、今は少し砕けた話し方をしているように感じる。
「ああ、思いついたことはなんでも話してくれ」
レオポルトが促すとレインは言葉を続けた。
ネメシスの陰謀に巻き込まれ意識を失わされたアルダリン。命に別状がなかったとはいえ、被害者であることに間違いはない。
倉野は目覚めてからずっと彼のことが気になっていた。
少し身を乗り出し、倉野がそれを言葉にする。
「えっと、ピース・リンクには直接関わらないことなんですけどいいですか? アルダリンさんのお見舞いに行きたくて」
すると少し残念そうな表情を浮かべたリオネが口を開いた。
「あの、クラノさん。伝えられていなかったのですが、アルダリンさんはもう帝都にはいないんです」
「もしかして、オランディに帰っちゃったんですか?」
倉野が聞き返すとリオネは首を横に振る。どうやらオランディに帰った訳ではないらしい。
「いえ、オネットさんの居場所がわかったとかで慌てて帝都を出られたんです」
アルダリンの護衛として雇われていたリオネ。だが、状況を察したアルダリンは彼女を帝都に置いていき別の冒険者を護衛として雇ったという。
「私もついていく、と言ったんですけど、今はクラノさんのそばにいた方がいいと。気を遣ってくれたみたいです」
リオネは申し訳なさそうにそう付け足した。
先の戦いでネメシスに加担していたマッティーノ商会。それを立ち上げたのがアルダリンの友人オネット・マッティーノである。商会の代表だった彼は邪悪な野望を抱いたエメロードという男に商会を乗っ取られ追い出された。
アルダリンはオネットの行方を自分の部下に探させていたのだが、ようやく見つかったということなのだろう。
その上でアルダリンは倉野とリオネを気遣い、他の冒険者を護衛として雇った。全ての行動に優しさが滲み出ている。
アルダリンの事情を知っている倉野は会えなくても仕方ないか、と納得した。
「そっか、オネットさんの居場所がわかったのなら、すぐにでも駆けつけたいですよね」
倉野がそう呟くとリオネがさらに言葉を付け足す。
「まだクラノさんが目覚めそうになかったのでアルダリンさんから言付けを預かっていますよ。お世話になりました。またどこかでお会いしましょう、とのことです」
「お世話だなんて、むしろこちらこそですよ。船にも乗せてもらって、宿のお金も払ってもらいましたからね。どこかで会った時は恩返ししないと」
友人の元へと向かったアルダリンを思いながら再び会えることを願って倉野は微笑んだ。
アルダリンの話が終わると議題はエスエ帝国側からの答えを待つ期間をどう過ごすかに戻る。
手を上げて発言したのはレインだった。
「ここから数日間どう過ごすかについて考えがあるんだけどいいかい?」
これまでグランダー伯爵とレオポルトに対しては比較的丁寧な言葉遣いをしていたレインだが、今は少し砕けた話し方をしているように感じる。
「ああ、思いついたことはなんでも話してくれ」
レオポルトが促すとレインは言葉を続けた。
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