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新たな機関

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「善悪の区別・・・・・・その基準となるのはクラノです。この男はどの国にも属していない存在。だからこそ、平らな視線で物事を判断することができる」
「・・・・・・あー、本来なら危惧すべきなんすよね。それだとクラノ殿が個人で大きな戦力を持ち過ぎてしまう・・・・・・って。けど、この国を救ってもらい本人を目の当たりにした今、不思議なことに微塵もそう言う気持ちにならないんすよ。ある意味困ったっす」

 皇帝は倉野の表情を眺めながら話す。
 話がここまで進んだことで、倉野もその内容の輪郭を掴んできた。

「世界平和・・・・・・独自の機関に善悪の基準。もしかしてレオポルトさん・・・・・・」

 そこまで倉野が口にするとレオポルトは狙い通りだと言わんばかりに口角を上げる。

「ああ、そうだ。ワシらはクラノを中心とした世界平和を目指す機関を作ろうと考えている。そのために必要なのはしがらみのない環境だ。どこの国に属してしまうと自由に動くことはできない。政治的な思惑に左右される場面も生まれるだろう。だが、勝手に組織したところで世界に対して何の影響力を持たない。ジレンマというやつだな」

 なるほど、と倉野は頷いた。
 漠然と世界平和を目標に掲げた倉野だったが具体的な方法など思いついているはずもない。そんな事情を察してレオポルトたちはこの案を固めていたのだろう。
 倉野を中心としたどこの国にも属さない世界平和を目指す機関。そのために必要なものは何か、そう考えた上で皇帝に話を持ちかけたのだった。
 どこの国にも関与されない領地を持ちながら、世界に対する影響力を持つ方法。
 レオポルトはそのジレンマを掻い潜るために皇帝を巻き込んでいた。そんな思惑を察している皇帝はその図案を言葉にする。

「中々策士っすね。どれだけエスエ帝国が関与していない機関だと言い張っても、元々がウチの領地である以上周囲の国はエスエ帝国が後ろにいると邪推してしまう。簡単には手出しできなくなるっすね。しかもそれだけじゃないっすよね?」

 皇帝の言葉を聞いたレオポルトは強く頷いた。

「ええ、流石ですな。若いながらもこの大国を治めている方は察しが良くて助かります。お察しの通りビスタ国、オランディからもこの機関に対しての助力を取り付けてきました。その上で一切干渉しないことも決定しています」

 既にそこまで進んでいるのかと倉野は驚き目を見開く。案だけではなくある程度進行しているようだ。
 自分が眠っている間に進んでいたことに驚きながらも、倉野は嬉しさを感じる。確かに個人だけで考えれば倉野は強い。だが世界に対する影響力を持っているわけではなかった。そんな倉野が世界平和を掲げたところで、できることなど高が知れているだろう。もしもレオポルトの話が叶えば、影響力を持った上で世界平和を目指すことができるはずだ。
 そんなレオポルトの言葉に対して皇帝は微笑んでからこう返す。
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