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望むものとその先
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「褒賞という形で土地をクラノに授けてはどうでしょうか。それも利用価値のない場所で結構です。建物や農地なども必要ありません」
レオポルトの言葉を聞いた倉野は驚きの声を漏らす。
「ちょ、レオポルトさん、領地って」
驚く倉野の動きを止めるようにレオポルトが右の掌を向けた。
そして倉野と同じく驚いた人間がもう一人、皇帝である。
「どういうことっすか? 利用価値のない土地って。確かにこちらとしては格好がつくし有難い話っすけど、何か思惑があるって感じがするっす。領地が欲しいならある程度収入が望める場所でも構わないっすよ」
皇帝の話は尤もだと倉野は頷いた。領地など貰っても使い道はなく、持て余すだろう。それに領地を受け取って仕舞えばエスエ帝国の国籍を持つことになりかねない。いや、そうなるだろう。
さらに倉野が違和感を覚えたのはグランダー伯爵たちの反応だ。
伯爵もレインもノエルも全く驚かない。まるでこの話を知っていたかのようである。
皇帝の反応を受けたレオポルトは予想通りだと言わんばかりに口角を上げ、話を続けた。
「いえ、利用価値がないからこそ利用価値があるんですよ。そのためにはもう一つお願いしなければなりません」
「もう一つっすか?」
「はい。その領地をエスエ帝国領から外していただきたい」
「・・・・・・なるほどっすね。なんとなく読めてきましたよ。利用方法まではわかったっす。それで最終的な目標はなんなんすか?」
どうやらレオポルトの思惑を察したらしい皇帝。その上でより深い話を持ちかけてきた。
最終的な目標。その言葉を待っていたかのようにレオポルトは口を開く。
その言葉は誰しもが知っていて、大人になるにつれ夢物語のように感じるもの。簡単な言葉の中に全ての想いを詰めた、わかりやすい正義。
「世界平和。それが私・・・・・・いえ、私たちの最終目標です」
レオポルトがそう言い切ると、まるで一緒に宣言したかのように伯爵、レイン、ノエルも目を輝かせていた。
四人の表情を見ていた倉野はなるほど、と察する。そうか、自分が意識を失っている間、四人はこの話を進めていたのか、と。
どうすれば世界中を平和にできるか、考え抜いた結論がそれだったのだろう。まだ話の全貌を掴みきれていない倉野だったが、四人の思いは伝わってきた。
「レオポルトさん・・・・・・」
倉野がそう呟くとレオポルトは優しく微笑む。
「すまんな、お前さんに全てを話すと混乱するかと思い黙っていた。何しろいきなりの謁見だったからな」
「いえ、確かに寝起きで全てを理解するのは無理だったでしょうし、その目標に異論はありません。でも、世界平和のために領地ってどういうことですか? いまいち話が・・・・・・」
倉野が聞き返すとレオポルトが答える前に皇帝が口を開いた。
「話遮って申し訳ないっすけど、それって国家っすか?」
皇帝の言葉は全てを理解した上で辿り着いた、一つも二つも先の問いかけである。意味がわからず倉野が首を傾げているとレオポルトが質問に答えた。
「いえ、建国に至るためにはまだ何もかもが足りません。それに新しい国は戦争の火種になり兼ねませんからね。どの国にも属さない独自の機関、と言ったところでしょうか」
「なるほど・・・・・・っす。色々詰めるべきところはあるでしょうけど、一番の問題は善悪の区別っすね。何度も戦争に参加しているレオポルト殿にこんなことを言うのはアレっすけど、一方にとっての正義は一方にとって悪で、その逆もまた然りっすよ。どちらかに加担することはどちらかを潰すこと。その判断はどうするんすか?」
口調は軽いものの皇帝の言葉は真剣そのもの。言葉の重さだけは倉野にも伝わっていた。とはいえ、話の全貌は未だわからず、言葉だけが頭上を飛び交う。
そんな話に追いつけていない倉野を指差して、レオポルトはこう答えた。
レオポルトの言葉を聞いた倉野は驚きの声を漏らす。
「ちょ、レオポルトさん、領地って」
驚く倉野の動きを止めるようにレオポルトが右の掌を向けた。
そして倉野と同じく驚いた人間がもう一人、皇帝である。
「どういうことっすか? 利用価値のない土地って。確かにこちらとしては格好がつくし有難い話っすけど、何か思惑があるって感じがするっす。領地が欲しいならある程度収入が望める場所でも構わないっすよ」
皇帝の話は尤もだと倉野は頷いた。領地など貰っても使い道はなく、持て余すだろう。それに領地を受け取って仕舞えばエスエ帝国の国籍を持つことになりかねない。いや、そうなるだろう。
さらに倉野が違和感を覚えたのはグランダー伯爵たちの反応だ。
伯爵もレインもノエルも全く驚かない。まるでこの話を知っていたかのようである。
皇帝の反応を受けたレオポルトは予想通りだと言わんばかりに口角を上げ、話を続けた。
「いえ、利用価値がないからこそ利用価値があるんですよ。そのためにはもう一つお願いしなければなりません」
「もう一つっすか?」
「はい。その領地をエスエ帝国領から外していただきたい」
「・・・・・・なるほどっすね。なんとなく読めてきましたよ。利用方法まではわかったっす。それで最終的な目標はなんなんすか?」
どうやらレオポルトの思惑を察したらしい皇帝。その上でより深い話を持ちかけてきた。
最終的な目標。その言葉を待っていたかのようにレオポルトは口を開く。
その言葉は誰しもが知っていて、大人になるにつれ夢物語のように感じるもの。簡単な言葉の中に全ての想いを詰めた、わかりやすい正義。
「世界平和。それが私・・・・・・いえ、私たちの最終目標です」
レオポルトがそう言い切ると、まるで一緒に宣言したかのように伯爵、レイン、ノエルも目を輝かせていた。
四人の表情を見ていた倉野はなるほど、と察する。そうか、自分が意識を失っている間、四人はこの話を進めていたのか、と。
どうすれば世界中を平和にできるか、考え抜いた結論がそれだったのだろう。まだ話の全貌を掴みきれていない倉野だったが、四人の思いは伝わってきた。
「レオポルトさん・・・・・・」
倉野がそう呟くとレオポルトは優しく微笑む。
「すまんな、お前さんに全てを話すと混乱するかと思い黙っていた。何しろいきなりの謁見だったからな」
「いえ、確かに寝起きで全てを理解するのは無理だったでしょうし、その目標に異論はありません。でも、世界平和のために領地ってどういうことですか? いまいち話が・・・・・・」
倉野が聞き返すとレオポルトが答える前に皇帝が口を開いた。
「話遮って申し訳ないっすけど、それって国家っすか?」
皇帝の言葉は全てを理解した上で辿り着いた、一つも二つも先の問いかけである。意味がわからず倉野が首を傾げているとレオポルトが質問に答えた。
「いえ、建国に至るためにはまだ何もかもが足りません。それに新しい国は戦争の火種になり兼ねませんからね。どの国にも属さない独自の機関、と言ったところでしょうか」
「なるほど・・・・・・っす。色々詰めるべきところはあるでしょうけど、一番の問題は善悪の区別っすね。何度も戦争に参加しているレオポルト殿にこんなことを言うのはアレっすけど、一方にとっての正義は一方にとって悪で、その逆もまた然りっすよ。どちらかに加担することはどちらかを潰すこと。その判断はどうするんすか?」
口調は軽いものの皇帝の言葉は真剣そのもの。言葉の重さだけは倉野にも伝わっていた。とはいえ、話の全貌は未だわからず、言葉だけが頭上を飛び交う。
そんな話に追いつけていない倉野を指差して、レオポルトはこう答えた。
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