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上からの命令
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「ありがとうございます伯爵。その皇帝陛下に会うのはいつですか?」
「クラノ殿・・・・・・良いのかい?」
「はい。やっぱり緊張しますけど、全てを受け入れようと思います。伯爵に迷惑をかけるわけにもいきませんしね」
少し照れ臭そうに倉野が話すと伯爵は倉野の手を包み込むように握り、感謝の意を表す。
「ありがとう、クラノ殿。いや、もちろんクラノ殿に断られたら命懸けで断ろうとは思っていた。けれど相手は皇帝陛下だからね、機嫌を損ねたらどうしようと内心ヒヤヒヤしていたんだよ。いやぁ、本当に助かるよ」
「会うだけですし、全然大丈夫ですよ。それで、会うのはいつですか? もしかして明日とか?」
「いや、できる限り早い方が良いと仰られていてね。可能なら今からでも」
「へ?」
予想外の答えに驚く倉野。まさか今日、今すぐだとは思っていなかった。
そこから伯爵が話を付け足したのだが、今回の事件を長引かせると国中に不安だけが広がってしまうと言う。罪人を罰するだけではなく、英雄として功労者を讃えることで民衆は安心するらしい。
そのために今すぐにでも倉野を城に召喚する必要があった。
伯爵の疲労度や表情から察するに、これまで何度も倉野を連れてくるように言われていたのだろう。
自分よりも上の立場の者から何度も命令を受けながらも状況的に不可能だと報告し続けなければならない居心地の悪さからようやく解放される伯爵。
その笑顔は素晴らしく軽やかな者であった。
伯爵からの説明を受けた倉野は皇帝陛下に会うということの重大さをじわじわと理解し始め、緊張を感じる。
「皇帝かぁ・・・・・・僕の首一つくらい簡単に飛ばせてしまうんでしょうね」
何気なく倉野が呟くとグランダー伯爵が首を横に振ってから笑みを浮かべた。
「そんなことないさ。クラノ殿の首が飛ぶ様な状況であれば、私の首も一緒に飛ぶからね。正確には二つくらい簡単に飛ばせる、だね」
「嫌な訂正の仕方ですね。それじゃあ、今から行きますか」
そう言ってベッドから立ち上がろうとする倉野。その肩を支えながらレイチェルが問いかける。
「本当に大丈夫ですか? まだ、起きたばかりじゃないですか。お父様はああ言っていましたけど、今すぐじゃなくても・・・・・・」
倉野の体を気遣うレイチェル。その気遣いは本当にありがたく心にも染みた。だが、倉野は知っている。上司から何度も進捗状況を確認される居心地の悪さを。それによって発生する胃痛を。
「ありがとうございます、レイチェルさん。でも大丈夫ですよ。元々怪我で眠っていたわけではなく、強制睡眠状態にあっただけですから。起きてしまえば、いつもの朝と変わりませんよ」
「そうですか・・・・・・でも無理はなさらないでくださいね」
「そうします」
レイチェルにそう答え、倉野は自分の鞄を確認する。その中ではいつも通りツクネがすやすやと眠っていた。倉野が購入した覚えのない干し肉を枕にして眠っているツクネ。どうやらこの三日間はレイチェルたちがツクネの世話をしてくれていたらしい。
そんな姿を確認した倉野は準備完了と言わんばかりに伯爵の方を向くが、何か違和感を感じた。
「あれ? 何か、伯爵いつもと服装が・・・・・・」
そう、違和感があったのは伯爵の服装。いつもよりも豪華な装飾にグランダー伯爵家の紋章が着けられており、どこか動きにくそうにも見えた。
そこでようやく倉野が気づく。
「そういえば僕、この服しか持ってないんでした」
「クラノ殿・・・・・・良いのかい?」
「はい。やっぱり緊張しますけど、全てを受け入れようと思います。伯爵に迷惑をかけるわけにもいきませんしね」
少し照れ臭そうに倉野が話すと伯爵は倉野の手を包み込むように握り、感謝の意を表す。
「ありがとう、クラノ殿。いや、もちろんクラノ殿に断られたら命懸けで断ろうとは思っていた。けれど相手は皇帝陛下だからね、機嫌を損ねたらどうしようと内心ヒヤヒヤしていたんだよ。いやぁ、本当に助かるよ」
「会うだけですし、全然大丈夫ですよ。それで、会うのはいつですか? もしかして明日とか?」
「いや、できる限り早い方が良いと仰られていてね。可能なら今からでも」
「へ?」
予想外の答えに驚く倉野。まさか今日、今すぐだとは思っていなかった。
そこから伯爵が話を付け足したのだが、今回の事件を長引かせると国中に不安だけが広がってしまうと言う。罪人を罰するだけではなく、英雄として功労者を讃えることで民衆は安心するらしい。
そのために今すぐにでも倉野を城に召喚する必要があった。
伯爵の疲労度や表情から察するに、これまで何度も倉野を連れてくるように言われていたのだろう。
自分よりも上の立場の者から何度も命令を受けながらも状況的に不可能だと報告し続けなければならない居心地の悪さからようやく解放される伯爵。
その笑顔は素晴らしく軽やかな者であった。
伯爵からの説明を受けた倉野は皇帝陛下に会うということの重大さをじわじわと理解し始め、緊張を感じる。
「皇帝かぁ・・・・・・僕の首一つくらい簡単に飛ばせてしまうんでしょうね」
何気なく倉野が呟くとグランダー伯爵が首を横に振ってから笑みを浮かべた。
「そんなことないさ。クラノ殿の首が飛ぶ様な状況であれば、私の首も一緒に飛ぶからね。正確には二つくらい簡単に飛ばせる、だね」
「嫌な訂正の仕方ですね。それじゃあ、今から行きますか」
そう言ってベッドから立ち上がろうとする倉野。その肩を支えながらレイチェルが問いかける。
「本当に大丈夫ですか? まだ、起きたばかりじゃないですか。お父様はああ言っていましたけど、今すぐじゃなくても・・・・・・」
倉野の体を気遣うレイチェル。その気遣いは本当にありがたく心にも染みた。だが、倉野は知っている。上司から何度も進捗状況を確認される居心地の悪さを。それによって発生する胃痛を。
「ありがとうございます、レイチェルさん。でも大丈夫ですよ。元々怪我で眠っていたわけではなく、強制睡眠状態にあっただけですから。起きてしまえば、いつもの朝と変わりませんよ」
「そうですか・・・・・・でも無理はなさらないでくださいね」
「そうします」
レイチェルにそう答え、倉野は自分の鞄を確認する。その中ではいつも通りツクネがすやすやと眠っていた。倉野が購入した覚えのない干し肉を枕にして眠っているツクネ。どうやらこの三日間はレイチェルたちがツクネの世話をしてくれていたらしい。
そんな姿を確認した倉野は準備完了と言わんばかりに伯爵の方を向くが、何か違和感を感じた。
「あれ? 何か、伯爵いつもと服装が・・・・・・」
そう、違和感があったのは伯爵の服装。いつもよりも豪華な装飾にグランダー伯爵家の紋章が着けられており、どこか動きにくそうにも見えた。
そこでようやく倉野が気づく。
「そういえば僕、この服しか持ってないんでした」
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