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 ノエルの目にはブレッドという巨大な兵器に立ち向かう倉野が映っている。
 それはちょうど倉野がクレアシオンを手にし、ブレッドの右手を弾いた直後であった。
 反撃の決定的な瞬間を目にしたノエルは驚きの表情を浮かべる。

「え、今クラノの剣がブレッドを弾き飛ばしたように見えたんだけど」

 ノエルがそう話しかけるとレインが嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。

「ああ、あの剣は特別だからね。ノエルも知っているはずだよ。あれは魔法など超越した存在・・・・・・悪魔すら封印できる代物さ」
「じゃあ、あれってクレアシオンなの?」

 そんな会話をするノエルとレインにレオポルトが問いかける。

「クレアシオン? どこかで聞いたような名前だがクラノはそんなものを持っていたのか?」

 その問いかけに対しノエルが首を横に振った。

「ううん、オランディに置いてきたはずなのよ。そういえばオランディでの話はしていなかったわね。ちょっとした事件を解決するためにオランディの伝説に触れることになってね。その流れであのクレアシオンに巡り合ったのよ」
「オランディの伝説だと? まさか悪魔伝説ではあるまいな」
「ああ、それそれ」
「・・・・・・お前さんたちは本当に・・・・・・いやクラノがいたのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが。それで、その悪魔を討ち倒したとでもいうのか?」

 呆れたようにそう言い放つレオポルト。そんな彼に同意するかのようにレインは苦笑いを浮かべた。

「ははは、そう思うのも無理はない。クラノはいつだって想像を超えて・・・・・・いや常識を壊していくからね。さらに常識を壊すことを言うならクラノはその悪魔を従わせたのさ」
「・・・・・・もはや言葉も出ん」

 呆れを通り越して頭を抱えるレオポルト。
 そんなレオポルトの理解を待たずしてレインは話を進める。

「まぁ、常識外れにも感じるけど、今考えれば必要なことだったんだよ。ああ、ご心配なく。オランディは悪魔を政治的な武器にすることはない、何せあの悪魔はクラノにしか従わないからね。今回も俺を転移させたのも悪魔、クレアシオンを転移させたのも悪魔さ。全ては倉野を救うためにね」
「なるほど、これ以上聞いても理解が追いつかなさそうだ。常識的な知識や発想では何とかなるものでもない。だがわかったことはあるぞ。あの剣があればブレッドを倒せるということだな」
「いや、そこまではわからなかった。けどクラノの表情を見た今、断言できるよ。勝つのはクラノさ」

 レインはそう言いながら倉野を指さした。
 指の先には晴れやかな表情を浮かべてクレアシオンを構えている倉野がブレッドと向かい合っている。
 ブレッドの絶対防御に圧倒的な信頼を置いていた操縦者ジルトール。腕を弾かれた動揺からか動けずにいた。
 対して倉野はクレアシオンを握ったことでその秘めたる能力を理解し、感情が昂る。まるでクレアシオンが意思を持ち倉野の感情に干渉しているかのようだった。

「そっちが動かないならこっちからいくぞ。脱出するなら早めにしてくれ。手加減できそうにない」

 そう言い放ち、地面を蹴る倉野。ここからが本当の倉野VSブレッドである。
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