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悪魔、再び

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 そこにあるのは倉野への確かな信頼。どのような状況であってもレインの正義は倉野と共にあるということだった。
 レインに必ずブレッドを倒すと宣言した倉野だが、唯一の活路も断たれている。

「ブレッドを・・・・・・止める。だけど、どうすれば・・・・・・」

 残ったのは負けてはいけない、負けるわけにはいかないという気持ちと三人の仲間たち。倉野はそう思っていた。そんな倉野にイスベルグが声をかける。

「まだ分かっていないのか? お前の力はこれまで他人のために流してきた血と汗。そして経験だと教えただろう・・・・・・優男がここまで転移してきた方法とそれを成した者が誰かを考えれば、どうすればいいか分かるはずだ。相手はお前の声を待っている」

 イスベルグの言葉を聞いた倉野は記憶を遡った。
 この戦闘が始まりブレッドへの魔法が無駄だと分かった瞬間からイスベルグが声を発していない時間がある。その間、イスベルグは何かをしていた。

「イスベルグさんが転移魔法を? いや、イスベルグさんの転移魔法は魔石に魔法式を書き込むものだ。ってことはオランディにいる誰かに声を届けていた・・・・・・オランディで転移魔法が使えそうな人・・・・・・人? そうか!」

 呟きながら思考していた倉野は自分の発言からある人物の顔を思い浮かべる。いや人物と呼んでいい者ではない。その者は文字通り悪魔、人間の常識の外にいる存在だ。

「アスタロトが転移魔法を使用したんですね。だからレインさんがここに」

 答えを出した倉野にレインが微笑む。

「ああ、その通りさ。そしてアスタロトはもう一度転移魔法を使用する準備をしているよ。倉野の合図を待ってね」
「もう一度転移魔法を?」
「倉野に必要なのはあの兵器を破壊する武器だろ? どんな魔法よりも強力な武器。だが扱える者などほとんどいない、破壊と創造を司る諸刃の剣さ。あとは分かるな? 俺は行くよ、こちらに向かってきている敵を倒さなければならないからね」

 倉野にそう告げるとレインはブレッドの背後に向かって走り出した。
 そんなレインに続くようにノエルとレオポルトもそちらに向かって走っていく。
 倉野の横を走り抜ける際、その二人は言葉を残した。

「任せたわよ、クラノ。この国の・・・・・・ううんこの世界の行く末を」
「生きて戻り酒を呑もう。帝都中の酒を飲み干すまで寝かせはせんぞ」

 二人の言葉を聞いた倉野はその背中を見送りながら笑みを浮かべる。

「そんなの生きて帰っても死んじゃいますよ。けど、ありがとうございます。レインさん、ノエルさん、レオポルトさん。おかげで僕は戦える・・・・・・イスベルグさん、僕の声をアスタロトに届けてください」

 倉野の呼びかけに応えるイスベルグ。

「ああ、だが覚悟しろ。あの武器を扱うのは容易ではないぞ」
「はい、分かっています」
「ならば、言葉にしろ。武器の名前を叫べ。お前が手にするのは何だ」
「天地創造の剣、クレアシオンを我が手に!」

 その叫びに悪魔の声が反応した。

「御意・・・・・・だワン」

 何だか締まらないなぁ、そう思いながら倉野は手を上に突き出し、アスタロトの魔法で転移してきた身の丈ほどもある剣を受け取る。
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