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連載
不完全な世界
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そう強く言い放つエイターにノエルは呆れたようにため息を吹きかける。
「はぁ・・・・・・世界が気に食わなかったら壊せばいい、理想のために戦って人を殺して負けたら死ねばいいって・・・・・・そんなこと許さないわ。ライトニング・ショック」
ノエルが少し寂しげにそう唱えるとエイターに向けた剣の先から小さな電撃が走った。電撃はエイターの首元から身体中を通り、全身の筋肉の自由を奪う。
その結果、エイターは地面に膝をつくように倒れ込んだ。
「なっ・・・・・・」
「これでしばらく動けないでしょう。死ぬことはないし、意識を失うこともないわ。この戦いの行く末をその目で見守りなさい。あそこでアンタのボスと戦っている男がどうなるのかをね」
言いながらノエルはエイターに背を向けて、倉野の方を向く。
体が動かず地面に倒れ込むエイターに対して言葉をかけたのはレオポルトだった。
「お前さんの気持ちはな、正直わからないでもない。ワシも自分の理想のために戦ったことがある。一体幾つの命を奪ったのか、数えきれない。世界はどこまで行っても不完全だ、そして完成することなどない。どんな法を作ろうが、それを運用するのが人間である限りそこに欲望や感情が乗ってしまう。だからこそ、戦わなければならない。武力に対抗できるのは武力だけだ・・・・・・少し前のワシならばそう思っていた。しかし、最近は少し変わってしまったようだ。どこまでいっても武力には武力で対抗するしかない。だが、武力にも種類がある。奪うための武力ではなく、守るための武力・・・・・・どうだ、綺麗事だと思うだろう。ふっ・・・・・・ワシもだ」
「だったら・・・・・・何故、あの男に与する・・・・・・」
「さぁな。だが、どうせ戦うなら、綺麗事を真実にした方がいいだろう。お前さんらが自分たちの境遇を不幸だと思うのなら、この先世界でそんな悲しいことが起きぬように戦えばいい。けれど国という単位を壊すのではなく、国と国を繋げて世界中の国を一つにすれば同じことだ」
「そんな夢のような戯言を・・・・・・」
「そんな夢のような戯言を真剣に語るような人間だからこそ、ワシはあの男を信じている。少なくともビスタ国とイルシュナはあの男によって一つになろうとしているのだ。さて、少し話すぎたな。あとはそこで見ていろ、クラノがどんな男なのかを」
そう言ってレオポルトもまたエイターに背を向ける。
全ての罪を背負い世界を変えるつもりでいたエイター。その意思が間違っていたとも、行動が間違っていたとも思わない。自分たちの正義に基づいて行動しただけだ。後悔もない。
だが、気がつけば必死でブレッドと戦う倉野を目で追いかけていた。
そして心のどこかで消えかけていた本当の正義が燃え始めたように感じる。
信じて疑わなかった自分の理想が正義の炎に照らされゆらゆらと揺れ始めた。
その頃、倉野は未だにブレッドに攻撃を放ち回避するという一連の動きから抜け出せずにいる。
「止める方法・・・・・・どうすれば!」
沸騰してしまいそうなほど思考するが活路は見えない。効果のない攻撃を繰り出し、回避するだけだった。
脳内の迷路に迷い込んだ倉野。そんな倉野に戦いを終えたレオポルトが声をかける。
「クラノ、戦いの基本は力の根源だ。これだけ大きな相手も体を支える部分がなければ動けない」
「はぁ・・・・・・世界が気に食わなかったら壊せばいい、理想のために戦って人を殺して負けたら死ねばいいって・・・・・・そんなこと許さないわ。ライトニング・ショック」
ノエルが少し寂しげにそう唱えるとエイターに向けた剣の先から小さな電撃が走った。電撃はエイターの首元から身体中を通り、全身の筋肉の自由を奪う。
その結果、エイターは地面に膝をつくように倒れ込んだ。
「なっ・・・・・・」
「これでしばらく動けないでしょう。死ぬことはないし、意識を失うこともないわ。この戦いの行く末をその目で見守りなさい。あそこでアンタのボスと戦っている男がどうなるのかをね」
言いながらノエルはエイターに背を向けて、倉野の方を向く。
体が動かず地面に倒れ込むエイターに対して言葉をかけたのはレオポルトだった。
「お前さんの気持ちはな、正直わからないでもない。ワシも自分の理想のために戦ったことがある。一体幾つの命を奪ったのか、数えきれない。世界はどこまで行っても不完全だ、そして完成することなどない。どんな法を作ろうが、それを運用するのが人間である限りそこに欲望や感情が乗ってしまう。だからこそ、戦わなければならない。武力に対抗できるのは武力だけだ・・・・・・少し前のワシならばそう思っていた。しかし、最近は少し変わってしまったようだ。どこまでいっても武力には武力で対抗するしかない。だが、武力にも種類がある。奪うための武力ではなく、守るための武力・・・・・・どうだ、綺麗事だと思うだろう。ふっ・・・・・・ワシもだ」
「だったら・・・・・・何故、あの男に与する・・・・・・」
「さぁな。だが、どうせ戦うなら、綺麗事を真実にした方がいいだろう。お前さんらが自分たちの境遇を不幸だと思うのなら、この先世界でそんな悲しいことが起きぬように戦えばいい。けれど国という単位を壊すのではなく、国と国を繋げて世界中の国を一つにすれば同じことだ」
「そんな夢のような戯言を・・・・・・」
「そんな夢のような戯言を真剣に語るような人間だからこそ、ワシはあの男を信じている。少なくともビスタ国とイルシュナはあの男によって一つになろうとしているのだ。さて、少し話すぎたな。あとはそこで見ていろ、クラノがどんな男なのかを」
そう言ってレオポルトもまたエイターに背を向ける。
全ての罪を背負い世界を変えるつもりでいたエイター。その意思が間違っていたとも、行動が間違っていたとも思わない。自分たちの正義に基づいて行動しただけだ。後悔もない。
だが、気がつけば必死でブレッドと戦う倉野を目で追いかけていた。
そして心のどこかで消えかけていた本当の正義が燃え始めたように感じる。
信じて疑わなかった自分の理想が正義の炎に照らされゆらゆらと揺れ始めた。
その頃、倉野は未だにブレッドに攻撃を放ち回避するという一連の動きから抜け出せずにいる。
「止める方法・・・・・・どうすれば!」
沸騰してしまいそうなほど思考するが活路は見えない。効果のない攻撃を繰り出し、回避するだけだった。
脳内の迷路に迷い込んだ倉野。そんな倉野に戦いを終えたレオポルトが声をかける。
「クラノ、戦いの基本は力の根源だ。これだけ大きな相手も体を支える部分がなければ動けない」
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