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正しい犠牲
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言葉の重圧がエイターを追い詰める。
先ほど油断していたとはいえ実質ノエルに敗北しているエイター。それに加えてビスタ国の伝説であるレオポルトが参戦。ネメシスの主戦力であるブレッドは倉野と戦っている状況ではエイターのみでレオポルトとノエルを相手にしなければならない。
どう考えても勝てるとは思えない。理想のためならば命を捨てることすら厭わないエイターだが、このままでは目的を達成することができなくなってしまう。
死ぬよりも辛い現実が目の前にあった。
追い詰められたと自覚したエイターはその心の内を吐き出す。
「何故、我らの理想が理解できない! 国などというものが存在するからこそ人は争い犠牲を生む。そのために悲しみは生まれる。犠牲も悲しみもその根源から絶たねばならんのだ!」
そんなエイターに剣を向けながらノエルが聞き返した。
「そのためにどれほどの犠牲が出たとしても?」
「ああ、そうだ。世界中に生まれるであろう大きな犠牲を小さな犠牲で止めるのだ!」
「人の死を数で判断するのなら、アンタらがしていることも戦争と何ら変わりないわ」
「何とでも言うがいい。我々は夜が来るたびに悩んできた。これは正しいことなのかと・・・・・・正しい犠牲なのかと。だが、誰かが世界を変えなければならない。そのために罵声も恨みも血も浴びよう。それが我々の掲げる正義だ」
必死に自分たちの行いを正義だと語るエイター。そんな言葉を聞いたノエルは悲しげな表情でこう答える。
「この世界に正しい犠牲なんてないわ。残るのは悲しみだけよ」
「知った風な口を聞くな!」
ノエルの言葉に逆上したエイターは大剣を素早く振り上げた。狙いはノエルである。
その動きを察知したレオポルトが拳を握りしめたが、ノエルが先に動いた。エイターとの戦いは自分が終わらせるという意思表示だろう。
レオポルトはノエルの気持ちを理解し、その行く末を見守った。
一気に大剣を振り下ろすエイターに対してノエルは真っ向から剣を振り抜く。
「悪いわね、私たちは分かり合えないみたい。ライトニング・ギア・ラリィ・フロウ!」
上からその重さを利用し振り下ろされた大剣を目掛けて全力で自分の剣をぶつけるノエル。足に集約した電撃を押さえつけられたバネのように一気に右手まで移動させ、一撃に全てを乗せた。
ノエルの剣はエイターの大剣にぶつかり金属音を鳴らす。そしてそのまま大剣を弾き飛ばした。
エイターの手から離れた大剣はくるくると回転しながら後方へと飛ばされ、封印されるように大地に突き刺さる。
武器を失ったエイターは手の痺れを感じながらその場から動けなくなった。自分の意思ではない。ノエルがその喉元に剣を突きつけているからである。
エイターの命を握ったノエルはゆっくりと語りかけた。
「遺言があるなら聞いてあげるわよ」
「ふっ、言葉を遺す相手などいない・・・・・・婚約者も母も五年前に死んだ。私の大切な者など誰一人としてこの世に残ってはいない。極東大戦によって全てを失った・・・・・・国と国のくだらない戦いに巻き込まれてな。もう良い・・・・・・さっさと殺せ。だが私を殺したとしてもネメシスは消えない。ブレッド、いや操縦しているジルトールがいる限りな!」
先ほど油断していたとはいえ実質ノエルに敗北しているエイター。それに加えてビスタ国の伝説であるレオポルトが参戦。ネメシスの主戦力であるブレッドは倉野と戦っている状況ではエイターのみでレオポルトとノエルを相手にしなければならない。
どう考えても勝てるとは思えない。理想のためならば命を捨てることすら厭わないエイターだが、このままでは目的を達成することができなくなってしまう。
死ぬよりも辛い現実が目の前にあった。
追い詰められたと自覚したエイターはその心の内を吐き出す。
「何故、我らの理想が理解できない! 国などというものが存在するからこそ人は争い犠牲を生む。そのために悲しみは生まれる。犠牲も悲しみもその根源から絶たねばならんのだ!」
そんなエイターに剣を向けながらノエルが聞き返した。
「そのためにどれほどの犠牲が出たとしても?」
「ああ、そうだ。世界中に生まれるであろう大きな犠牲を小さな犠牲で止めるのだ!」
「人の死を数で判断するのなら、アンタらがしていることも戦争と何ら変わりないわ」
「何とでも言うがいい。我々は夜が来るたびに悩んできた。これは正しいことなのかと・・・・・・正しい犠牲なのかと。だが、誰かが世界を変えなければならない。そのために罵声も恨みも血も浴びよう。それが我々の掲げる正義だ」
必死に自分たちの行いを正義だと語るエイター。そんな言葉を聞いたノエルは悲しげな表情でこう答える。
「この世界に正しい犠牲なんてないわ。残るのは悲しみだけよ」
「知った風な口を聞くな!」
ノエルの言葉に逆上したエイターは大剣を素早く振り上げた。狙いはノエルである。
その動きを察知したレオポルトが拳を握りしめたが、ノエルが先に動いた。エイターとの戦いは自分が終わらせるという意思表示だろう。
レオポルトはノエルの気持ちを理解し、その行く末を見守った。
一気に大剣を振り下ろすエイターに対してノエルは真っ向から剣を振り抜く。
「悪いわね、私たちは分かり合えないみたい。ライトニング・ギア・ラリィ・フロウ!」
上からその重さを利用し振り下ろされた大剣を目掛けて全力で自分の剣をぶつけるノエル。足に集約した電撃を押さえつけられたバネのように一気に右手まで移動させ、一撃に全てを乗せた。
ノエルの剣はエイターの大剣にぶつかり金属音を鳴らす。そしてそのまま大剣を弾き飛ばした。
エイターの手から離れた大剣はくるくると回転しながら後方へと飛ばされ、封印されるように大地に突き刺さる。
武器を失ったエイターは手の痺れを感じながらその場から動けなくなった。自分の意思ではない。ノエルがその喉元に剣を突きつけているからである。
エイターの命を握ったノエルはゆっくりと語りかけた。
「遺言があるなら聞いてあげるわよ」
「ふっ、言葉を遺す相手などいない・・・・・・婚約者も母も五年前に死んだ。私の大切な者など誰一人としてこの世に残ってはいない。極東大戦によって全てを失った・・・・・・国と国のくだらない戦いに巻き込まれてな。もう良い・・・・・・さっさと殺せ。だが私を殺したとしてもネメシスは消えない。ブレッド、いや操縦しているジルトールがいる限りな!」
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