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開戦ノエルVSエイター

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 そんなイスベルグの言葉を無意識に復唱する倉野。

「心臓から血を・・・・・・頭から信号を・・・・・・」

 現時点では破壊することはできないと断言しておきながらも止められると話したイスベルグの言葉には何か真意があるはずだ。
 思考状態に入った倉野が真剣な表情を浮かべると、まるで心がつながっているかのようにノエルは口角を上げる。

「何か突破口があるかもしれないってことね。いいわ、存分に考えなさい。その間くらい私がアンタの盾になってあげる。でも命をかけるんだからその見返りはしっかりもらうわよ」

 そう言いながらノエルは剣を構えた。
 明らかに戦闘態勢に入ったノエルに紫コートの男が叫ぶ。

「お前も挑もうと言うのか! 世界を改革するために血の道を歩く我々を妨げるというのならば、女であろうが赤子であろうが容赦はしない」

 紫コートの男は自分の背後にいた他の者に手を伸ばした。するとあらかじめ決まっていたかのように、紫コートの男は身の丈ほどもある大剣を受け取る。
 斬るというよりも叩き潰すと言った方が的確だろうか。そんな大剣を片手で構えた紫コートの男はさらに言葉を続ける。

「どのみち、エスエ帝国ごとお前たちは死んでいく運命。エスエ帝国からの答えが返ってくるまで私一人で相手をしてやろう。ネメシス副団長エイター・イロウション・・・・・・お前を殺す者の名前だ。あの世で恨め」

 吐き捨てるように名乗った紫コートの男、エイターは大剣を構えたままノエルに向かって地面を蹴った。
 そんなエイターを迎え撃つようにノエルも体内の魔力を練り上げる。

「御生憎さま、運命を信じるような女じゃないの。ノエル・マスタング・・・・・・馬鹿みたいな組織の二番手を返り討ちにする者の名前よ。覚えてなくていいわ」

 相手の神経を逆撫するように応えたノエルは右手に魔力を集めた。

「雷鳴よ、響き渡れ。ライトニング・ギア・ラリィ!」

 ノエルがそう唱えると彼女の右手が青い電撃に包まれる。電気によって筋肉を刺激することで限界を超えた動きを可能にするノエルの魔法。レオポルトとの戦いで使用していたものだ。
 この魔法はノエルの体にかかる負担も大きい。最初から発動するということは彼女なりに相手の戦力を高く評価しているということだった。
 そうでなければエイターの一撃を受け止めることなどできない。
 エイターはノエルの目前まで駆け抜けるとその勢いのまま大剣を振り下ろした。

「二番手? 私が団長の志に心酔し、従っているだけだ。純粋な戦闘力だけならば、誰にも負けぬ!」

 叫びながらノエルを叩き潰そうとする一撃。しかし、その一撃はノエルの剣によって受け止められた。

「おめでとう。ようやく知ることができるわよ。敗北の苦みをね!」

 余裕そうな笑みを浮かべてエイターの剣を弾くノエル。だが、その右手には強い痺れを感じていた。一撃を受け止めただけでエイターの強さが分かる。
 純粋な力。破壊力。
 
「なんて力・・・・・・私の攻撃なんて通じない・・・・・・」

 そう呟くノエルに対してエイターは口角を上げて見せた。

「ふっ、そうだ、お前では」
「これまでの私だったらそう思ってたかもしれないわね」
「何?」
「残念。アンタよりも強い相手と少し前に戦ったのよ。その相手に比べれば、悲観するほどの力じゃないわ」

 言いながらノエルは鋭い視線をエイターに向ける。
 その胸の中では血煙の獅子が咆哮していた。踏み込め。全てを断ち切るように踏み込むのだと。
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