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揺れぬ水面
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拳を振り抜いた倉野は本来感じるべきものを感じていなかった。衝撃である。全力で鉄の塊を殴れば相応の衝撃を受けるはずだ。だが、まるで静かに入水したのかと思うほどの感触しかない。
驚きというよりも違和感に近かった。違和感に集中力を奪われてしまいスキル神速が解除される。
破壊するつもりで殴った兵器は何事もなかったかのように微動だにしない。
「な・・・・・・どうして」
思わず倉野は声を漏らした。
するとすぐ側にいた紫コートの男が笑みを浮かべる。
「ふっ、なるほど。速度にも攻撃力にも自信があったようだな。だが、我々の兵器ブレッドには効かぬ」
ブレッドとは兵器の名称なのだろう。そんな紫コートの近くにいたネメシスの団員たちもニヤニヤと笑みを浮かべていた。
何が起きているのかわからなかった倉野は再びスキル豪腕を発動し、攻撃を試みる。
「はぁあああああ!」
全身全霊で振り抜いた拳だったが、先ほどと同じように衝撃はない。
「攻撃が効かない・・・・・・」
攻撃力だけで言えばブレッドが崩壊していてもおかしくないはずだ。しかし、ブレッドは全くダメージを受けていない。
自分の攻撃が通用せず、一瞬頭が真っ白になる倉野。その隙を見計ったかのようにブレッドの上半身が動き、その右手が倉野を目掛けて振り下ろされる。
足元を這う虫でも払い飛ばすかのように倉野の体を後方に弾き飛ばそうとしていた。
「クラノ!」
思わずノエルが叫んだが、倉野は攻撃が通用しなかったという事実に思考を奪われ気づいていない。
そんな倉野の危機を察知したのはイスベルグだった。
倉野の体の中に住うドラゴンが倉野に語りかける。
「おい、死ぬつもりか」
「え?」
イスベルグの言葉でようやく自分の身に降りかかろうとしている危険に気づいた倉野は思わず右手を開いて前に突き出した。
何を考えていたわけでもない。ただ、体が勝手に動いたのである。
その動きを察したイスベルグはこう呟いた。
「体が私の存在に慣れたということか。お前が死んでしまっては私にとっても痛手だ。いいだろう力を貸してやる。略式・・・・・・氷壁創造」
イスベルグの言葉に合わせて倉野の突き出した右手が青白く光り、一瞬で目の前に氷の壁が現れる。
ブレッドの右手はその氷壁にぶつかり勢いを弱めた。だが氷壁を崩し、当初の半分くらいの速度になりながらも倉野の体にぶつかる。
「くっ! ぐあ・・・・・・」
半分の勢いになったとは言え、相当の衝撃を受けた倉野はそのまま後方に飛ばされた。だが、なんとか着地し立ち上がる。
そんな倉野にイスベルグが言葉をかけた。
「略式だと氷壁の強度はこんなものか。完全詠唱とは比べものにならん脆さだな。おいクラノ、気を付けろ。あの兵器は衝撃を全て吸収する」
「衝撃吸収・・・・・・だから殴っても全く効果がなかったのか。物理攻撃が効かないのなら・・・・・・イスベルグさん、もう一度力を貸してください」
ダメージを負いながらも倉野の心は折れない。既に次の攻撃に焦点を当てていた。
驚きというよりも違和感に近かった。違和感に集中力を奪われてしまいスキル神速が解除される。
破壊するつもりで殴った兵器は何事もなかったかのように微動だにしない。
「な・・・・・・どうして」
思わず倉野は声を漏らした。
するとすぐ側にいた紫コートの男が笑みを浮かべる。
「ふっ、なるほど。速度にも攻撃力にも自信があったようだな。だが、我々の兵器ブレッドには効かぬ」
ブレッドとは兵器の名称なのだろう。そんな紫コートの近くにいたネメシスの団員たちもニヤニヤと笑みを浮かべていた。
何が起きているのかわからなかった倉野は再びスキル豪腕を発動し、攻撃を試みる。
「はぁあああああ!」
全身全霊で振り抜いた拳だったが、先ほどと同じように衝撃はない。
「攻撃が効かない・・・・・・」
攻撃力だけで言えばブレッドが崩壊していてもおかしくないはずだ。しかし、ブレッドは全くダメージを受けていない。
自分の攻撃が通用せず、一瞬頭が真っ白になる倉野。その隙を見計ったかのようにブレッドの上半身が動き、その右手が倉野を目掛けて振り下ろされる。
足元を這う虫でも払い飛ばすかのように倉野の体を後方に弾き飛ばそうとしていた。
「クラノ!」
思わずノエルが叫んだが、倉野は攻撃が通用しなかったという事実に思考を奪われ気づいていない。
そんな倉野の危機を察知したのはイスベルグだった。
倉野の体の中に住うドラゴンが倉野に語りかける。
「おい、死ぬつもりか」
「え?」
イスベルグの言葉でようやく自分の身に降りかかろうとしている危険に気づいた倉野は思わず右手を開いて前に突き出した。
何を考えていたわけでもない。ただ、体が勝手に動いたのである。
その動きを察したイスベルグはこう呟いた。
「体が私の存在に慣れたということか。お前が死んでしまっては私にとっても痛手だ。いいだろう力を貸してやる。略式・・・・・・氷壁創造」
イスベルグの言葉に合わせて倉野の突き出した右手が青白く光り、一瞬で目の前に氷の壁が現れる。
ブレッドの右手はその氷壁にぶつかり勢いを弱めた。だが氷壁を崩し、当初の半分くらいの速度になりながらも倉野の体にぶつかる。
「くっ! ぐあ・・・・・・」
半分の勢いになったとは言え、相当の衝撃を受けた倉野はそのまま後方に飛ばされた。だが、なんとか着地し立ち上がる。
そんな倉野にイスベルグが言葉をかけた。
「略式だと氷壁の強度はこんなものか。完全詠唱とは比べものにならん脆さだな。おいクラノ、気を付けろ。あの兵器は衝撃を全て吸収する」
「衝撃吸収・・・・・・だから殴っても全く効果がなかったのか。物理攻撃が効かないのなら・・・・・・イスベルグさん、もう一度力を貸してください」
ダメージを負いながらも倉野の心は折れない。既に次の攻撃に焦点を当てていた。
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