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彼女は知っていた

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 ずっと分かっていたようにノエルはそう話した。
 彼女の言葉を聞いた倉野は驚きを隠せずに目を見開く。

「ど、どうしてそれを」

 倉野が聞き返すとノエルは呆れたように笑った。

「むしろどうして気づかないと思ったのよ。数々の常識外れな能力にドラゴンとの契約、悪魔との交渉までしちゃうし、この世界の常識に疎い。どう考えたって違う世界の人間ってことでしょ?」
「うっ・・・・・・そう言われればそうですよね」
「まぁ、私が長く同行しているってのもあるわよね。けどクラノが隠してるみたいだったから何も言わないでいたってわけよ」

 ノエルにそう言われた倉野はなるほどと頷く。確かに今までで一番長く同行しているのはノエルだ。気づく確率は一番高いだろう。
 彼女なりに倉野を気遣い黙っていたのだった。
 そんなリオネとは逆にグランダー伯爵は驚き、言葉を失っている。異世界人の存在などそうそう信じられるものではない。仕方ないことだ。
 既にこの場にいる全員に話すと覚悟を決めていた倉野は自分の正体を明かす。
 自分が異世界人であること。自分には魔力もレベルもなく、スキルを努力によって強化するというシステムの中で生きているということ。
 それを知った伯爵は驚きながらも何処か納得したというように頷いた。

「そうだったのか・・・・・・いやはや驚いたよ。私自身貴族として世界の様々な文献には目を通している。だが、異世界人の存在など初めて聞いた。どんな国おとぎ話や伝承にも出てこない。つまりは誰も想像しなかったことだよ。この世界以外の世界が存在しているなんてね。だが、クラノ殿の常識外れな能力に納得のいく理由でもある」

 グランダー伯爵に続きシラムも頷く。

「そうですな。スッキリした気分です」

 全員の反応を見た後に倉野はゆっくりと口を開いた。

「いきなり話して信じてもらえるものでもないですし、自分だけが違う世界の人間だと言い出せずにいたんです。一人になるのが怖くて・・・・・・」
「どうして一人になるのよ」

 倉野の弱気な言葉を聞いたノエルは即座にそう聞き返す。
 
「そりゃ言ってしまえば違う生き物かもしれませんし」
「馬鹿ねぇ、クラノはクラノでしょ。たとえその正体が何だって構いはしないわ。背中を預けて戦える大切な仲間よ。多分レインだってそう言うはずよ。何言ってんだ相棒ってね。クラノは違うの? 私たちを違う生き物だと思ってるわけ?」
「そんなことありませんよ。大切な仲間です」
「なら気にすることないじゃない。ほら、もうこんなシケた話は終わりにしましょう。せっかく本音を話し合えたんだもの。酒でも飲みたい気分だわ」

 ノエルはそう言ってから輝くような笑顔を見せた
 彼女の言うとおりいつまでも同じ話を繰り返しても意味はない。この場にいる全員が同じ気持ちだったようで、同時に頷く。
 そして伯爵がシラムにこう話しかけた。

「そろそろ昼食の時間じゃないか? 確かにクラノ殿との距離が縮まった祝いの日だからね。酒も用意してくれ」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」

 指示を受けたシラムはそう答えて昼食の準備を始める。
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