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三人の本音

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 なぜ笑っているのだろうと倉野が首を傾げると次はレイチェルが先に口を開く。

「困ってますね、クラノ様。どんな困難にも立ち向かうクラノ様がここまで狼狽るなんて、なんだか可笑しくて。今はまだ答えを保留にしてくださっても良いですよ。ね、リオネさん」
「ええ、ようやくクラノさんが距離を縮めてくれましたから。今日はこれで満足ですよ。私やレイチェルさんはただ気持ちを伝えたかっただけです。それにしても面白い反応でしたね」

 顔を見合わせてリオネとレイチェルは笑い合った。
 そんな二人に釣られて倉野も笑顔になってしまう。
 この三人がより深く心を交わした瞬間だった。
 
「さぁ、全員スッキリしたところで屋敷に戻りましょうか。おそらく、こういう機会を作るためにシラムが計画したのだと思いますから、待っているはずですよ」

 レイチェルは自分たちが外を歩くことになったきっかけを思い返しながらそう話す。
 それを聞いた倉野は、なるほどと頷いた。確かにノエルを雇うための詳しい話し合いといえば筋の通った理由だが、考えてみれば急すぎる。倉野の喉につっかえた何かを吐き出せるように。そんな倉野を思うリオネとレイチェルに本音を話させるためにシラム計画し、察したグランダー伯爵とノエルが乗っかったのだと理解した。
 理解した上で倉野は苦笑する。

「全く、シラムさんって人は本当・・・・・・感謝しますよ」

 そう呟く倉野にリオネが微笑みかけた。

「さぁ、行きましょうクラノさん」
「そうですね」

 こうしてお互いの本音をぶつけ合った倉野、リオネ、レイチェルは来た時よりも軽い足取りでグランダー伯爵邸に戻る。
 グランダー伯爵邸の大広間に戻ると既に伯爵とノエル、シラムが椅子に座っており紅茶のようなものを飲んでいた。

「あら、思ってたよりも早かったわね」

 扉を開けて倉野たちが大広間に入った瞬間、ノエルが口角を上げながらそう話しかける。
 それに続くようにシラムが口を開いた。

「必要なお話はできましたかな。言葉とはタイミングです。機会を逃してしまうと伝えることができなくなるかもしれない。意味が変わってしまうかもしれない。鉄と同じですな。熱が逃げたあとどれだけ叩こうと意味がないのです。お分かりですかな?」

 そんな言葉を聞いた倉野は言葉の真意を理解し頷く。

「はい」
「そうですか。それは良かった。申し訳ございません、老いぼれが少々話しすぎましたな」
「いえ、ありがとうございます」

 礼を言う倉野にシラムは優しく微笑みかけた。
 するとその様子を見ていたグランダー伯爵が倉野たちに話しかける。

「さぁ、椅子に掛けるといい。シラム、お茶を準備してくれ」
「かしこまりました」

 そう答えてシラムはお茶を準備し始めた。その間に倉野たちは椅子に座る。
 倉野が座るとノエルが口角を上げながらこう問いかけた。

「ちゃんと話せたってわけね。良かったじゃない」
「はい。あの、ノエルさんや伯爵、シラムさんにもちゃんと話しておこうかと思うのですが・・・・・・」

 ノエルの言葉に倉野がそう返すと彼女は軽く笑い飛ばす。

「ははっ、どうせ倉野がこの世界の人間じゃないってことでしょ」
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