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家族の温もり
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「中々できることじゃないわ」
「何言ってるんですか。別に譲ったわけじゃないです。ただ・・・・・・誰のものでも涙は見たくない」
ノエルにそう返すリオネの表情は切なく、その分美しく輝いている。夜空を照らす星を美しく感じるのも、いつしか消えてしまうかもしれない儚さを含んでいるからかもしれない。
そんなリオネにシラムは無言で頭を下げた。
リオネの優しさと倉野の言葉でレイチェルの涙は止まり、何もなかったかのように話を進める。
「さ、さぁ、どうぞ中に入ってください。父も楽しみにしているはずですから」
レイチェルの思いを尊重し、涙の件には触れず全員で屋敷の中を進んだ。向かっているのは大広間である。
大広間の前まで到着し、シラムがその重い扉を開くと中には大きな机とその上に並べられた豪華な朝食が見えた。
そして一番奥の椅子にはレイチェルの父であるグランダー伯爵が座っている。
扉が開いたことに気づいた伯爵は立ち上がり全員を迎えた。
「やぁ、いらっしゃい。無事に帰って来てくれて何よりだよ。クラノ殿、ノエル殿と・・・・・・おやレイン殿がえらく女性らしくなっているが・・・・・・」
初めて会うリオネに戸惑いおかしなことを言う伯爵にシラムが冷静な言葉を放つ。
「旦那様。恐れながらこちら、レイン様ではありません。リオネ様と申しまして、クラノ様とは旧知の仲だそうです」
「おお。これは失礼した。クラノ殿が戻って来たと聞き、自分でも驚くほど浮ついてしまっておりましてな。そうかクラノ殿の知り合いならば我が家はいつでも大歓迎だ」
そう話す伯爵に全員が苦笑した。
そこからシラムが一人ずつ席に案内していき、全員が着席すると伯爵が話し始める。
「クラノ殿が急にいなくなった理由はシラムから聞いている。その後、どうなったかはオランディ国の王から手紙が届いたよ。大変な苦労だっただろう」
「そうだったんですか? エヴァンシル王から?」
倉野が聞き返すと伯爵は微笑み答えた。
「ああ、エヴァンシル王とは何度か会った事があるものでね。それほど深い仲ではなかったがこれを機に親睦を深めていけそうだ。レイン殿が私の名前を出してくれたのだろう。クラノ殿への感謝の言葉も手紙には綴られていたよ」
そう言ってからグランダー伯爵は少し怒ったように眉間にシワを寄せ言葉を続ける。
「確かにクラノ殿のした行動は素晴らしいものだ。友人のために命を投げ出し戦う。結果を見れば美談だ。しかし、手放しで褒めることはできない」
「す、すみません」
反射的に倉野が謝ると伯爵はさらに表情を険しくした。
「それほど、私は頼りないかね・・・・・・私だってクラノ殿に大きな借りがある。全ての財産を投げ打とうが、この爵位を失おうが力になりたいと思っているんだ。待ってることしかできない歯痒さを、無事を祈ることしかできない無力さをどうか知ってほしい」
そう語る伯爵の表情はまるで実父のように険しくも優しい。
伯爵の言葉を補足するようにシラムが呟く。
「旦那様も大変心配されておりました。簡単に言えば頼ってもらえなくて寂しかった、ということです。もう、我々は他人ではないのですから」
こちらの世界に来てから倉野は様々な縁に巡り合って来た。心から信頼できる友人も得ている。だが、自分だけが異世界人だという想いが心の何処かにはあった。
血を分けた家族や苦楽を共にする同僚、学生時代を共にした友人のような関係は築けない。どこかでそう思っていた。
大人になってから友人を得る事が難しいと誰もが思うように。
けれど、自分には家族のように心配してくれる人がいると思うだけでこんなにも胸がいっぱいになるのか、と改めて感じた倉野。
無意識に顔が綻んでいた。
「何言ってるんですか。別に譲ったわけじゃないです。ただ・・・・・・誰のものでも涙は見たくない」
ノエルにそう返すリオネの表情は切なく、その分美しく輝いている。夜空を照らす星を美しく感じるのも、いつしか消えてしまうかもしれない儚さを含んでいるからかもしれない。
そんなリオネにシラムは無言で頭を下げた。
リオネの優しさと倉野の言葉でレイチェルの涙は止まり、何もなかったかのように話を進める。
「さ、さぁ、どうぞ中に入ってください。父も楽しみにしているはずですから」
レイチェルの思いを尊重し、涙の件には触れず全員で屋敷の中を進んだ。向かっているのは大広間である。
大広間の前まで到着し、シラムがその重い扉を開くと中には大きな机とその上に並べられた豪華な朝食が見えた。
そして一番奥の椅子にはレイチェルの父であるグランダー伯爵が座っている。
扉が開いたことに気づいた伯爵は立ち上がり全員を迎えた。
「やぁ、いらっしゃい。無事に帰って来てくれて何よりだよ。クラノ殿、ノエル殿と・・・・・・おやレイン殿がえらく女性らしくなっているが・・・・・・」
初めて会うリオネに戸惑いおかしなことを言う伯爵にシラムが冷静な言葉を放つ。
「旦那様。恐れながらこちら、レイン様ではありません。リオネ様と申しまして、クラノ様とは旧知の仲だそうです」
「おお。これは失礼した。クラノ殿が戻って来たと聞き、自分でも驚くほど浮ついてしまっておりましてな。そうかクラノ殿の知り合いならば我が家はいつでも大歓迎だ」
そう話す伯爵に全員が苦笑した。
そこからシラムが一人ずつ席に案内していき、全員が着席すると伯爵が話し始める。
「クラノ殿が急にいなくなった理由はシラムから聞いている。その後、どうなったかはオランディ国の王から手紙が届いたよ。大変な苦労だっただろう」
「そうだったんですか? エヴァンシル王から?」
倉野が聞き返すと伯爵は微笑み答えた。
「ああ、エヴァンシル王とは何度か会った事があるものでね。それほど深い仲ではなかったがこれを機に親睦を深めていけそうだ。レイン殿が私の名前を出してくれたのだろう。クラノ殿への感謝の言葉も手紙には綴られていたよ」
そう言ってからグランダー伯爵は少し怒ったように眉間にシワを寄せ言葉を続ける。
「確かにクラノ殿のした行動は素晴らしいものだ。友人のために命を投げ出し戦う。結果を見れば美談だ。しかし、手放しで褒めることはできない」
「す、すみません」
反射的に倉野が謝ると伯爵はさらに表情を険しくした。
「それほど、私は頼りないかね・・・・・・私だってクラノ殿に大きな借りがある。全ての財産を投げ打とうが、この爵位を失おうが力になりたいと思っているんだ。待ってることしかできない歯痒さを、無事を祈ることしかできない無力さをどうか知ってほしい」
そう語る伯爵の表情はまるで実父のように険しくも優しい。
伯爵の言葉を補足するようにシラムが呟く。
「旦那様も大変心配されておりました。簡単に言えば頼ってもらえなくて寂しかった、ということです。もう、我々は他人ではないのですから」
こちらの世界に来てから倉野は様々な縁に巡り合って来た。心から信頼できる友人も得ている。だが、自分だけが異世界人だという想いが心の何処かにはあった。
血を分けた家族や苦楽を共にする同僚、学生時代を共にした友人のような関係は築けない。どこかでそう思っていた。
大人になってから友人を得る事が難しいと誰もが思うように。
けれど、自分には家族のように心配してくれる人がいると思うだけでこんなにも胸がいっぱいになるのか、と改めて感じた倉野。
無意識に顔が綻んでいた。
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