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出会ってしまった二人

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 まるで恋愛映画のシーンを切り取ったようにも見える。最初に動いたのは倉野でもリオネでもなくちょうど起きて来たノエルだった。

「おーい、廊下で何しようとしてるんですかー」

 いきなりの声に驚いた倉野とリオネは心臓と連動したかのように飛び跳ねる。

「うわっ、ノエルさん。お、おはようございます」
「お、おはよう、ノエル」

 動揺しながら挨拶する二人にノエルはじとっとした目で近寄った。

「おはよう、二人とも。今、廊下で何かしようとしてなかった? 公共の場でするべきではないことを」
「そ、そんなことするわけないじゃないですか。ちょうど部屋の前で会っただけですよ」

 慌てて否定する倉野。そんな倉野にノエルは微笑みかける。

「まぁ、戦いにおいては馬鹿みたいな度胸を見せるクラノだけど、こういうことにおいてはそんな度胸なさそうだもんね」

 何日も同行しているノエルは既に倉野の性格を見抜いていた。
 挨拶を終えた後、リオネが自由行動になったことを知るとノエルが倉野に問いかける。

「それで、今日はどうするのよ。一緒に行くの? 私予定通りに行こうと思うけど」

 ノエルの言葉を聞いたリオネは首を傾げた。

「予定って?」
「ほら、クラノ。もう説明しといた方がいいんじゃないの? リオネを置いていくわけにはいかないじゃない」

 リオネがそう話した瞬間である。廊下の向こう側から甘い声が響いて来た。

「クラノ様!」

 聞き覚えのある声に倉野が振り向くとそこにはちょうど話そうとしていた人物が立っていた。
 グランダー伯爵家令嬢レイチェルとその執事シラムである。
 レイチェルは勢いよく倉野に近づくと、もう離さないとでも言いたげに抱きついた。
 そんなレイチェルにシラムが声をかける。

「はしたないですよ、レイチェル様」
「仕方ないじゃないですか。これだけ待っていたのですから。本当に無事でよかった」

 その表情はまさしく愛しい異性に向けるそれだった。
 驚きながら、倉野はレイチェルに問いかける。

「レイチェルさん、どうしてここに」
「クラノ様がレイン様とオランディを救うために旅立たれたことを聞いた私は、帝都の衛兵に依頼したのです。クラノ様が帝都に戻って来たら手続きをするはず。それを報告してほしいと」
「でも、どうしてこの十六夜の馬亭にいると分かったんですか」

 そう倉野が問いかけると今度はシラムが答えた。

「この十六夜の馬亭、グランダー家も幾つか部屋を契約しております。クラノ様が訪れた際には報告していただけるように依頼しておいたのですよ」

 そう話すシラムだったが、この庶民街にはいくつもの宿屋がある。おそらくはその全てに同じ依頼をしていたはずだ。
 それを察した倉野はなるほど、と頷いているが納得していない者がこの場にいる。ノエルだけがそのことに気づいていた。

「あの、リオネ、これはね」

 何が起きているのかを説明しようとノエルが話しかけると、リオネは不自然なほどの笑顔で倉野と倉野に抱きついて離さないレイチェルに近づく。
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