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それぞれのセンチメンタル

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 合流したニャルと共に倉野たちは再会の祝宴を続けた。
 倉野にとって久しぶりに心を落ち着かせることのできる時間である。
 元の世界で連勤した後の飲み会を思い出していた。心の許せる同僚と仕事や世間についての愚痴を漏らす。そんなひと時が何よりも楽しかった。
 この祝宴にいるメンバーは異世界人の倉野にとって心を許せる数少ない者たちである。

「あー、楽しいな」

 酒に酔って来た頃、思わず倉野はそう呟いた。それを聞いたレオポルトは少し驚いたような表情をしてから笑う。

「はっはっは、お前さんのそんな顔初めて見たぞ。こう見れば普通の人間と変わらんな」
「何言ってるんですか、普通の人間ですよ僕は」
「お前さんが普通なら世界は簡単に崩壊するぞ。いやお前さんだからこそ、それほどの力を持っていても悪しき影響をもたらさないとも言える。いい影響は与えているがな」

 レオポルトは言いながらゆっくり味わうように酒を傾けた。倉野に救われたビスタ国やそれ以外にも先ほど聞いた話を思い返す。
 たった一人の存在が世界を揺るがすほどの事件を何度も解決している倉野。その倉野が異世界人であると知っているレオポルトは、まるで神が世界を救うために遣わせた勇者であるかのように感じていた。
 この世界がある程度成長し、ギリギリのところでバランスを保っている状態だからこそ倉野のような存在が必要なのだろう。だが、もしも・・・・・・もっと早く倉野がこの世界に来ていれば、自分の手を血で染めることなどなかったのではないか。
 そんな風に考えるのは自分が歳をとったからなのかと、自然に笑みが溢れるレオポルト。
 こうして祝宴の夜は過ぎ、気持ちよく酒に酔い倉野たちは大使館に宿泊することになった。

 倉野の目を覚まさせたのはツクネの鳴き声である。

「ククク」

 朝だよ、とツクネなりに伝えていた。
 声に気づいた倉野は即座に目を覚まし、ツクネの頭を撫でる。

「うーん、おはよう、ツクネ。そっか、大使館に泊まらせてもらったんだったね。楽しい祝宴だったな、ツクネも久しぶりにニャルさんと遊んでもらって楽しそうだったね」
「ククー」

 満足そうに答えるツクネ。その嬉しそうな表情を眺めながら倉野はベッドから起き上がり身支度を整えた。

「さてと、挨拶をして帝都に向かうとしようか」

 そう倉野が話しかけるとツクネはわかっているかのようにいつも通り倉野の鞄に入り込む。
 準備を終えると倉野は宿泊していた部屋を出た。すると、ちょうど朝の挨拶をしているジュドーとノエルが見える。

「あ、ノエルさんにジュドーさん。おはようございます」

 倉野が話しかけるとノエルは軽く手を上げ、ジュドーは軽く頭を下げた。

「おはよう、クラノ」
「おはようございます、クラノ様」

 挨拶を終えたところでジュドーが倉野に問いかける。

「これからどうされるご予定です? しばらくオーリオに滞在されるのでしょうか?」
「いえ、すぐに帝都へ向かおうと思っております。知人が待っているので」

 倉野がそう答えるとジュドーは少し残念そうな顔をして頷いた。

「そうですか。それでは、お引き留めするわけにはいきませんね。そろそろレオポルト様もお目覚めでしょうから最後にお会いしていただければと」
「もちろんです」
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