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ラストチャンス

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 ジュドーの補足について恥ずかしそうにレオポルトが口を挟んだ。

「それは言わなくてもよかろう。ほら、ジュドーある程度の量をまとめてクラノに渡してやれ」
「もう準備しておりますよ。常温で保存できますが、長期間保つわけではありませんのでご使用はお早めに」

 言いながらジュドーは獅子草の入った布袋をクラノに手渡す。

「ありがとうございます」

 受け取ったクラノは礼を言いそのままスミナ・ディフォルに渡した。スミナ・ディフォルは涙ぐみながらそれを手にしようとするが、そこでレオポルトが彼女に向けて言葉を放つ。

「お嬢さん、本来ならばそれはビスタ国以外の者が手に入れられるものではない。それを理解しているか?」
「は、はい、もちろんです。クラノさんにもお二人にも感謝してますわ」

 スミナ・ディフォルがそう答えるとレオポルトは声色を低くし、真剣な表情で言葉を返した。

「そうではない。こんなことを言うと恩着せがましいかもしれんが確かに、今、お嬢さんがすべきことは感謝かもしれない。けれど大切なのはこれからだ」
「これから・・・・・・」
「ああ、そうだ。先ほどジュドーから受けた報告によるとお嬢さんの婚約者が目を覚まさなくなったのは麻薬のせいだという。原因は麻薬でもその責任は本人にある。瞬間の快楽に逃げ、正常な判断ができなくなった結果だ。そして一度快楽を味わった者は命を落としかけても中々抜け出せない。何が言いたいかというとな、そうなった時、もう一度獅子草を手に入れる方法がないということだ。説教臭くなってしまったが、これはお前さんと婚約者が立ち直るラストチャンス・・・・・・その覚悟を決めてからその獅子草を受け取って欲しい」

 レオポルトの真剣な言葉を聞いたスミナ・ディフォルはここから待っているであろう未来を想像する。彼女は婚約者のために麻薬について調べてきた。そのため依存者がどんな状態になるのかをよく知っている。
 そこから抜け出すのがどれほどの苦痛と覚悟をを伴うのか。
 言葉の意味やこの先の困難を理解した上でスミナ・ディフォルは頷く。

「はい、彼を殴ってでも、縛りつけてでも辞めさせてみせます。私の罪を許してくれたノエルたちやクラノさん、そしてこんな私に真剣な言葉を下さったレオポルトさんたちの恩に報いれるように」

 彼女の心からの誓いを聞いたレオポルトは表情を和らげ、微笑んだ。

「そうか、わかっているなら良い。全く年寄りは恩着せがましくなっていかんなぁ。さて、辛気臭い話はこれで終わりだ。ジュドーよ、再会の祝宴を開きたい、今すぐ準備は出来るか?」

 そう問いかけるレオポルトにジュドーは軽く微笑みこう返す。

「ここで準備することも可能ですが、せっかくの再会です。ふさわしい場所があるのではないでしょうか? クラノ様との再会を待ち望んでいる方もいらっしゃるでしょう」

 レオポルトと倉野はジュドーがどこのことを言っているのかすぐにわかった。
 そう二人が出会ったあの酒場である。
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