異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

指輪の秘密

　その視線を受けながらリオネは今朝のことを思い出した。倉野の体調を伺うために部屋に寄ったこと。倉野を心配しての行動だったが、自分が向き合わなくてはならない事件への覚悟と勇気をもらうためでもあった。
　リオネの表情から今朝のことを思い出したと判断した倉野は話を続ける。

「その時、リオネさんの様子が少しおかしいと感じたんです」
「そうだったんですね」

　そうリオネが答えると疑問を抱えて待ちきれないといった様子でノエルが言葉を挟んだ。

「それで、どうしたのよ。何があってセブンスと組むことになったの？」

　ノエルがそう問いかけると倉野は小さく頷いてから言葉を続ける。

「もし何か起きているのなら力になりたい、と僕はあるスキルを発動しました。このスキルの話はここだけにしてもらいたいのですが、僕はスキルでありとあらゆる全てのことを調べることができます」

　倉野の言葉を聞くとセブンスは呆れたように笑った。

「たっく、何度聞いても信じられねぇ話だな。まぁ、常識ってもんは覆るし、理解以上のことが起きるなんてのは時々ある。これだけのことを先読みし計画したんだ、信じるしかねぇわな」

　倉野のスキル説明を知っているノエルはもちろん、全員が納得したように頷く。全員の理解を得た倉野はさらに話を進めた。

「そのスキルのおかげで僕はこのグランマリア号の中で何が起きているのかを知ることができました。リオネさん、ノエルさんが装着している指輪に込められた爆発魔法。それを僕に話すことができないというルール。そしてその魔法を解除するためには二月前に起きた殺人事件を解決しなければならないということ。しかし、この中には嘘の情報が存在しました」
「嘘の情報？」

　説明を聞いたノエルが首を傾げそう呟く。すると倉野はノエルの指に装着された例の指輪を指差した。

「それですよ」
「これ？」
「ええ、その指輪に込められた爆発魔法というのはブラフです。他人に話したからと言っても爆発することはありません。ノエルさんやリオネさん、そしてその付き添いのアルダリンさんに二月前の事件を暴かせるための嘘だったんです」

　倉野が答えるとアルダリンが目を見開いて声を上げる。

「な、なんですって」
「ほら、その証拠に今僕が指輪の話をしても爆発魔法が発動することはありませんよね」
「た、確かにそうですが。先ほどの話を聞く限り、クラノさんがスミナ・ディフォルと話をつけ魔法を解除させたのではないのですかな？」
「いいえ、確かにスミナさんと話しましたが、指輪の魔法については解除していません。もともとその指輪に付与された魔法は外せないようになるというものと音声を送受信するというものだけです」

　そう倉野が話すとアルダリンは首を傾げた。

「ソウジュシン？」
「ああ、えっと指輪を介して声を送ったり指輪の周囲の音をスミナさんが聞くことができるという魔法です。ですから今もスミナさんは部屋の中でこの言葉を聞いていますよ。彼女の目的はあくまでも二月前の事件を解決したいというものですから。リオネさんやノエルさんが選ばれたのは船の中である程度の権力を持っており、商人たちにも顔が利くアルダリンさんの同行者だったからだそうです」

　説明を聞いたリオネはなるほど、と頷き指輪を眺める。