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言い逃れと根拠

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 しかし、オースティンは自分の罪を認めようとはしない。

「う、噂・・・・・・そうだ、噂だ。噂でそう聞いたんだ。ディートのやつは死んだんじゃなく殺されたってな。麻薬を取り扱ってたんだから殺されたって不思議じゃない、そうだろう?」

 そう必死に弁明するオースティンには、最初に話を聞いたときの優しげな雰囲気の面影はなかった。
 そう語るオースティンをリオネが問い詰める。

「確かにディートには黒い噂がありましたし、実際に麻薬の販売をしていたのだから命を狙われてもおかしくないでしょう。ですがどうしてその殺害方法まで知っていたんですか? グラスに毒を塗られていた、と」
「そりゃ知っているだろ。ディートのやつが毒を飲んで死んだなんて、皆知っていることだしな」

 状況を打破しようと必死に言い返すオースティン。だが、そう答えるのは予想していた。
 リオネは即座にこう言い放つ。

「確かに毒を飲んで死んだことは広く知られています。一緒にワインを飲んでいたことも少し調べればわかるでしょう。けれど、グラスに塗られていたことは公開されていません。知っているのは調査をした乗組員と立ち会ったオランディの騎士・・・・・・そして犯人。グラスに塗られていたことは死んだディートすら知らないでしょう」
「く・・・・・・」

 追い詰められたオースティンは下唇を噛みしめながら、必死に次の言葉を探した。だが、溢れてくるのは冷汗だけで、何も答えられない。
 そんなオースティンにノエルが声をかけた。

「もう諦めなさいよ。私たちはアンタが犯人だと確信を持っているの」
「何故だ! オルタールやスミナ・ディフォルにも動機はあるだろ、どうして俺が犯人だと・・・・・・」
「さっきリオネが言ったでしょ。アンタだけがディートが殺されたことを知っていた。それにね、ディートが生きていたからってわざわざ会いに来るのは犯人だけなのよ。考えてみて、今この船内はディートが生きていたって噂で持ちきりだわ。普通、そんな状況で堂々と麻薬を買いに来ようとは思わない。スミナ・ディフォルのように恨みを抱いているとしても、注目されている中会いに来るなんてリスクが高すぎるわ。それほどのリスクを背負ってでもディートに再び会いに来る理由は一つ、完全に息の根を止めるためよ」

 ノエルは貫くようにオースティンに鋭い視線を送りながら言い放つ。
 その説明を聞いたオースティンは何かに気付いたかのように驚いた表情を浮かべ、ゆっくりと口を開いた。

「ま、まさか・・・・・・ディートが生きていた噂も、薬物取引の噂も・・・・・・」

 頭に浮かんだ疑問をそのまま言葉にするオースティンにセブンスが答える。

「ジャックポット。想像通り、その噂は俺たちが流したのさ。船中に広まるようにな。全ては犯人を誘き出す罠ってことだよ。正解の景品として宿泊券をプレゼントしよう、宿泊先は暗く狭い牢獄だ」
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