異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

女神の微笑み

「ある噂？」

　リオネが聞き返すとセブンスは自分のこめかみを指差して答えた。

「気持ちよーくなる薬の売買をしようとしてる奴がいるって話さ。いわゆる麻薬・・・・・・そいつを体内に取り入れれば気分は天国。目の前に天使が舞い降り、現実なんて全て忘れぶっとんじまうらしい。そいつには依存性があり一度味わえば全ての財産を吐き捨ててでも欲するって話だ。誰かを殺してでも手に入れたくなる。だが、そんな代物に代償がないわけがない。徐々に体を蝕みいずれは命を落とす」
「じゃあ、ディートはその麻薬を扱っていたってこと？」

　麻薬についての説明を聞いたノエルが話を急かすように問いかける。するとセブンスはゆっくりと頷いた。

「いや、真実は闇の中、何せ本人が死んじまってんだからな。けど、様々な情報を総合すると一番怪しいのがディートって商人だった。だから俺はディートについての情報を細かく集め、ルーレットを回している時も観察していたって話だよ。まぁ、結果的に麻薬の情報は得られなかったけどな」

　残念そうに語るセブンス。その言い回しに含みを感じたリオネが再び聞き返す。

「麻薬の情報は、って言いましたよね。ってことは他の情報を得たってことですか？」
「良い返しだな、大人しいお嬢さん。確かに俺はディートについての情報を持っている」
「教えてください。どうしても必要なんです」

　食い気味に懇願するリオネだったがセブンスは怪しく微笑み、両手を銃のようにして二人を同時に指差した。

「待て待て、情報を集めるのだってロハじゃないんだぜ。ここまで語っただけでも感謝して欲しいものさ」

　その言葉から、情報に対する対価を寄越せと言っているのだろう、と判断したノエルは一度下唇を噛んでから悔しそうに問いかける。

「何が欲しいのよ？」
「ここはギャンブルルームだぜ。欲しいものは勝ち取るのさ」
「ギャンブルをしようって言うの？」
「ああ、ここにコインがある。表には女神の絵が描いてあり、裏には何も描いていない」

　言いながらセブンスは掌を広げて見せた。その上には髪の長い女性が描いてあるコインが乗っている。そしてそのままコインを真上に放り投げた。
　コインはくるくると回転しながら頭上まで舞い上がり、落ちてくる。セブンスはそれを素早く握りしめ、そのまま拳を突き出しこう言い放った。

「女神が微笑めば、俺の知っていることを全て話そう」
「つまり、表が出れば私たちの勝ちってことね。それで、負ければ私たちは何を渡せば良いのよ？」

　賭けの内容を理解したノエルは自分たちが何をベットしているのかを確認する。
　するとセブンスは楽しそうに微笑んでから答えた。

「そうだなぁ、せっかく休んでいるところを起こされたんだ。心地よく眠れるように膝枕でもしてもらおうか」

　条件を聞いたノエルは呆れたようにため息をつく。

「はぁ・・・・・・仕方ないわね。でも今は時間がないのエスエ帝国に到着してからでも良い？」

　ノエルはそう答えたが、この賭けに負けた場合、事件の真相からは遠ざかりエスエ帝国に到着することはない。たとえ負けても膝を差し出すことはないのだ。
　それを瞬時に理解したリオネはノエルの言葉に乗っかる。

「エスエ帝国に到着してからで良いなら私も膝を差し出します」
「オーケー、これで賭けは成立だな。手を開くぜ」

　言いながらセブンスはゆっくりと掌を開いた。