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空白の時間

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 確かにアルダリンはゼロから現状を打破する方法としてターゲットの気持ちを考えてみるのはどうかと言い残している。
 この状況であればターゲットはディートだ。だが、今ディートの気持ちを考えてどうするのかとノエルは疑問を抱いたのである。
 そんなノエルにリオネはこう答えた。

「ディートの気持ちを考えて、グランマリア号に乗ってからの行動を追いかけるんです」
「ディートがグランマリア号に乗ってからの行動かぁ。自分の部屋で酒を飲んでいたんじゃないの?」

 先ほどの疑問が解消したノエルは今までの情報を思い出し言葉にする。
 ディートの行動として知っているのは、船に乗る前に酒場で豪遊していたことと、自室で何者かと葡萄酒を飲んでいたことの二つだ。
 船に乗る前と乗ってから、一見するとその二つの行動は続いておりディートの動きを把握しているようにも感じる。
 しかし、リオネはより細かく考えていた。

「港の酒場で豪遊していたディートがグランマリア号に乗船してすぐに自分の部屋でお酒を飲むでしょうか?」

 リオネの言葉を聞いたノエルは首を傾げる。

「飲むんじゃない? 酒場で豪遊していたってことは既に酔っていただろうし、そのまま部屋で飲み直したとか」
「普通の人ならそうするかもしれません。そこでディートの気持ちになってみて欲しいんです。酒場で豪遊したあと豪華客船に乗っているんですよ」
「そっか、この船には遊ぶ場所が幾らでもある。酒場で豪遊するような男がいきなり部屋で大人しく酒を飲んだとは考えにくいかも」

 ディートの気持ちになり乗船してからの行動を推測するリオネにノエルは同意した。
 ノエルの同意を得たリオネはさらに推測を広げる。

「少なくともディートの部屋を見る限り、船に乗ってから長時間過ごしたようには思えないんですよ。食事の形跡もなく荷物も少ない、その後誰かとお酒を飲んでいることを考えれば眠っていたわけではなさそうですし・・・・・・船に乗ってから私たちの知らない時間があるはずなんです」
「あるはず・・・・・・か。そうね、そう決めつけて考えないと可能性なんて見出せないわ。私もディートの気持ちになってみるわね」

 リオネはそう言ってから思い切り空気を吸い込み、言葉として吐き出した。

「うっ、葡萄酒に毒が!」
「どこを再現してるんですか。そこじゃないでしょう、ノエル」
「わかってるわよ、やってみただけ」

 なぜか死の間際を再現したノエルはリオネに指摘され恥ずかしそうにそう答える。
 しかし即座にノエルは真剣な表情で考え言葉にした。

「豪遊して船に乗ってからの時間か・・・・・・そう言えばディートはそれほどお金を持っていなかったのよね。一応、エスエ帝国でお金の当てがあったって話に落ち着いたけど、こうは考えられないかしら。この船の中でお金を使ったって」
「この船の中で・・・・・・そうか、ギャンブルですね」

 グランマリア号の中にある施設を思い出しリオネはそう答える。
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