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仮定の仮定
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倉野の部屋を出たリオネは食堂で待っていたアルダリン、ノエルと合流する。
二人は食堂の端に席を確保し既に三人分の昼食が用意されていた。
アルダリンたちを発見したリオネは駆け寄り椅子に座る。
「すみません、お待たせしました」
そんなリオネを茶化すように微笑みながらノエルが問いかけた。
「それで調子はどうだったの?」
リオネの行動を見透かしているかのような発言である。
それを聞いたリオネは少し恥ずかしそうに答えた。
「あ、あの。もう大丈夫そうでした」
「そっかそっか。でも確認のためだけに行ったわけじゃないでしょう?」
「はい。ちゃんと別行動を伝えてきましたよ」
「なら問題ないわね。こっちは事件に集中するだけよ」
ノエルは言いながら頷く。
二人の会話を聞いていたアルダリンは意味を理解し言葉にした。
「ああ、なるほど。クラノさんですな」
リオネの行動を確認した後、三人は食事を済ませそのまま話し合いを始める。
最初に口を開いたのはノエルだった。
「さてと、この後どうするかってことよね」
二月前も乗船していた乗客六名に話を聞き終えた今、何をするべきかという話である。
少し考えてからアルダリンが口を開いた。
「そうですな、幾つか考えはありますが悩むところではあります。例えば、ブラッド以外の乗組員で第一発見者を覚えている者がいないか探すとか」
その提案を聞いたノエルは納得できないというようにため息をつく。
「それはあんまり意味ないんじゃないってことになったでしょ。ディートの遺体が発見されてからはパニックだっただろうし、一緒に扉を破ったブラッド以外でしっかりと覚えてる人なんていないと思うわ」
「もちろんそうですが、ゼロでない限り確認しておいて損はないですぞ。一応グランマリア号の幹部に話しておきましょう」
アルダリンがそう話すとノエルは理解したように頷いた。
「なるほどね。今は少しでも可能性が欲しいもの。でもさっき幾つかの考えって言ったわよね、他には何がある?」
「考えというよりも確認すべきことですな。ディートの部屋にあったグラスと葡萄酒の出処。これは商人仲間たちに話を聞けばわかることでしょう。あとはオルタールとディートの繋がりを調べたいところです」
言いながらアルダリンは水を飲み干す。
話を聞いた六名の中で最も怪しい反応を示したのはオルタールだ。ディートと何らかの関わりがあるかもしれない。
少しでも可能性があるならば調べる価値はあるだろう。
アルダリンの言葉を聞いたリオネは疑問を言葉にした。
「でも、そこの繋がりをどうやって調べるんですか? オルタール本人が面識を否定している以上、簡単にわかるような関係ではないはずです」
オルタールがあれだけ自信満々に否定していたということは繋がりがあったとしても、誰にも知られていないということだろう。
情報の限られたグランマリア号の中でその繋がりを見つけられる可能性は低い。
自分の顎髭に触れながら考えたアルダリンはこう答えた。
「ディートとオルタールに繋がりがあると仮定した場合、この船内で会っているとは考えられませんか。何かしらの関係性を持つ二人が同じ船に乗っているのですから、そう考えても不自然はありません」
「仮定に仮定を重ねてるわよそれ」
アルダリンの言葉にノエルはそう返す。
しかし、リオネはなるほど、と頷いていた。
「確かにアルダリンさんの話は都合の良い仮定かもしれませんが、可能性はありますよ。他に手はありませんし調べてみましょう」
二人は食堂の端に席を確保し既に三人分の昼食が用意されていた。
アルダリンたちを発見したリオネは駆け寄り椅子に座る。
「すみません、お待たせしました」
そんなリオネを茶化すように微笑みながらノエルが問いかけた。
「それで調子はどうだったの?」
リオネの行動を見透かしているかのような発言である。
それを聞いたリオネは少し恥ずかしそうに答えた。
「あ、あの。もう大丈夫そうでした」
「そっかそっか。でも確認のためだけに行ったわけじゃないでしょう?」
「はい。ちゃんと別行動を伝えてきましたよ」
「なら問題ないわね。こっちは事件に集中するだけよ」
ノエルは言いながら頷く。
二人の会話を聞いていたアルダリンは意味を理解し言葉にした。
「ああ、なるほど。クラノさんですな」
リオネの行動を確認した後、三人は食事を済ませそのまま話し合いを始める。
最初に口を開いたのはノエルだった。
「さてと、この後どうするかってことよね」
二月前も乗船していた乗客六名に話を聞き終えた今、何をするべきかという話である。
少し考えてからアルダリンが口を開いた。
「そうですな、幾つか考えはありますが悩むところではあります。例えば、ブラッド以外の乗組員で第一発見者を覚えている者がいないか探すとか」
その提案を聞いたノエルは納得できないというようにため息をつく。
「それはあんまり意味ないんじゃないってことになったでしょ。ディートの遺体が発見されてからはパニックだっただろうし、一緒に扉を破ったブラッド以外でしっかりと覚えてる人なんていないと思うわ」
「もちろんそうですが、ゼロでない限り確認しておいて損はないですぞ。一応グランマリア号の幹部に話しておきましょう」
アルダリンがそう話すとノエルは理解したように頷いた。
「なるほどね。今は少しでも可能性が欲しいもの。でもさっき幾つかの考えって言ったわよね、他には何がある?」
「考えというよりも確認すべきことですな。ディートの部屋にあったグラスと葡萄酒の出処。これは商人仲間たちに話を聞けばわかることでしょう。あとはオルタールとディートの繋がりを調べたいところです」
言いながらアルダリンは水を飲み干す。
話を聞いた六名の中で最も怪しい反応を示したのはオルタールだ。ディートと何らかの関わりがあるかもしれない。
少しでも可能性があるならば調べる価値はあるだろう。
アルダリンの言葉を聞いたリオネは疑問を言葉にした。
「でも、そこの繋がりをどうやって調べるんですか? オルタール本人が面識を否定している以上、簡単にわかるような関係ではないはずです」
オルタールがあれだけ自信満々に否定していたということは繋がりがあったとしても、誰にも知られていないということだろう。
情報の限られたグランマリア号の中でその繋がりを見つけられる可能性は低い。
自分の顎髭に触れながら考えたアルダリンはこう答えた。
「ディートとオルタールに繋がりがあると仮定した場合、この船内で会っているとは考えられませんか。何かしらの関係性を持つ二人が同じ船に乗っているのですから、そう考えても不自然はありません」
「仮定に仮定を重ねてるわよそれ」
アルダリンの言葉にノエルはそう返す。
しかし、リオネはなるほど、と頷いていた。
「確かにアルダリンさんの話は都合の良い仮定かもしれませんが、可能性はありますよ。他に手はありませんし調べてみましょう」
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