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連載

爆発回避の布石

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 一足先に部屋を出てリオネが向かったのは倉野の部屋である。
 扉をノックすると倉野の返事が帰ってきた。

「あ、はい」
「リオネです。入っても良いですか?」
「ええ、どうぞ」

 倉野の答えを聞いたリオネが扉を開ける。部屋に入ると倉野はまだベッドの上にいた。どうやら先ほどまで寝ていたらしく上体を起こしている最中である。
 その様子を目にしたリオネは申し訳なさそうに口を開いた。

「あ、起こしちゃいましたか?」
「いえ、ちょうど起きようと思っていたところだったんです」

 そう言いながら倉野は自分の膝の上で眠っているツクネを撫でる。
 ツクネは心地良さそうに小さな寝息を立てて、体を丸めていた。
 倉野の顔色は朝よりも良くなっているように見えたリオネは調子を伺うように声をかける。

「どうですか、クラノさん。体調はよくなりましたか?」
「はい、朝よりもかなり良くなりました。さっき、乗組員の方が薬を持ってきてくれたんですよ。多分、アルダリンさんが手配してくれたんだと思います」

 伸びをしながら倉野はすっきりしたように答えた。
 もちろん薬の効果もあったが、一気に回復したのには理由がある。倉野自身気づいていないが船酔いに苦しみ続けている中で船酔い耐性というスキルを取得していた。
 倉野の返答を聞いたリオネは嬉しそうに微笑む。

「そうですか、本当によかったです」
「リオネさんもありがとうございます。お水とかツクネのご飯とか持ってきてもらって助かりました」
「いえいえ、そろそろ昼食の時間ですが、食べれそうですか? もし食べれそうなら何か持ってきますよ」

 リオネが問いかけると倉野は自分の腹部に触れながら首を傾げた。

「うーん、そうですね。まだお腹空いてないんですよ。実はさっき、薬と一緒にちょっとした食事を持ってきてもらったので」

 確かに机の上には一枚の皿とフォークが置いてあり、食事をした形跡がある。
 安心したリオネは微笑んでから話しかけた。

「それは良かった。食事ができたならもう大丈夫そうですね」
「はい、ご心配をおかけしました。あ、僕は何も食べないですけど食堂に行くなら一緒にいきましょう」

 そう話す倉野。だが、食堂ではアルダリンとノエルが待っている。
 食事をしながら事件についての話もするはずだ。
 事件についての話を倉野に聞かせるわけにはいかない、と考えたリオネは首を横に振る。

「すみません、ちょっと約束があるので一緒には行けないんです」

 申し訳なさそうに話すリオネに違和感を覚えた倉野は首を傾げた。

「約束・・・・・・ですか?」
「はい。ですので、そろそろ失礼しますね」

 そう言いながらリオネは振り返り、部屋を出ようとする。
 リオネが倉野の部屋に寄った目的はこれだった。そろそろ倉野の体調が回復するかもしれないと予測したリオネ。もしかすると倉野がリオネたちを探しあてるかもしれない。その結果ディートの死について倉野に知られてしまうと指輪の爆発魔法が起動してしまう。そんな事態を防ぐために別行動すると宣言しにきたのだった。
 そんなリオネの背中に倉野はこう問いかける。

「あの・・・・・・リオネさん。何かあったんですか?」
「何でもないですよ。大丈夫です」

 それだけ答えてリオネは部屋を出た。
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