異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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威圧の理由

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 そう問いかけるオルタールは薄ら笑いを浮かべていた。
 お互いに相手を良く思っていないのだろう。言葉の節々に隠す気のない棘が感じられた。
 アルダリンは元々オルタールを悪どい美術商だと知っており、その性格も知っている。それに加えてキーンの強さを利用して威圧してきたのだ。抵抗するのも無理はない。
 だが、オルタールがアルダリンを威圧する理由はないはずだ。
 アルダリンの背後で話を聞いていたノエルとリオネはオルタールに何かやましいことがあるのではないかと推測する。
 互いの思惑や推測が部屋の中に充満する中、アルダリンがオルタールの問いかけに答えた。

「聞きたいことというのは二月前のことです。オルタールさんは二月前もこのグランマリア号に乗船しておられますな」
「ええ、エスエ帝国へは美術品を買い付けるため定期的に渡っていますよ。それがどうかしましたか?」

 再び問いかけるオルタール。
 アルダリンはオルタールの表情を見逃さないように集中しながら口を開く。

「二月前、この船の中で起きた自殺について調査をしておりまして、何か知っていることはありませんか?」

 そうアルダリンが話した瞬間オルタールは一瞬眉間にシワを寄せた。
 だが、オルタールはその動作を隠すように不気味な笑顔を浮かべ答える。

「ああ、確か商人の男が自室で死んでいたと聞きましたな。何を調査されているのかはわかりませんが、死んだ商人とは面識もありませんよ。故に知っていることなど何もないです」

 一瞬の動揺に気付いていたアルダリンだったが、一度知らないと言い放った者から証言を聞くことなど不可能だと判断し頷いた。

「なるほど・・・・・・そうですか。お手数をおかけしましたなオルタール殿。これ以上は迷惑でしょうし、帰らせていただきましょうか」

 アルダリンは言いながら振り返り、ノエルとリオネに部屋を出るように手で合図をする。
 合図を受けたノエルたちはそのまま部屋を出て行き、最後にアルダリンはオルタールにこう言い残した。

「何か思い出された時は教えてください」

 その言葉を聞いたオルタールは最後まで不気味な笑みを浮かべながら答える。

「もちろんですよ」

 そのまま部屋を出たアルダリンは外で待っていたノエルとリオネに声をかけた。

「これで二月前も乗船していた六名の話は聞けました。どうでしょう、一度私の部屋に戻りませんか。ここだと話を聞かれる恐れがありますからな」
「そうね。その方が良いわね」

 ノエルはそう答え、リオネは頷く。
 こうして幾つかの証言を得た三人はアルダリンの部屋に戻った。
 部屋に戻り、机を囲んで椅子に座るとアルダリンが二人に問いかける。

「どうでしたか。何か気になる証言はありましたかな?」
 
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