異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

商人VS商人

　そんなオルタールにノエルが言い返そうと身を乗り出すが、それよりも先にアルダリンが口を開いた。

「待っていただきたいですな、オルタールさん。私の同行者を威圧するのならば黙っていませんぞ」

　彼もまた威圧するように言い放つ。
　商人としてはアルダリンの方が立場が上だ。ノーベンバー商会の大きさや影響力を見てきたノエルたちにもそれはわかる。
　だが、この場において武力として最も強いのは誰かと考えればキーンかもしれない。ノエルやリオネも弱いわけではないだろう。しかし、キーンからは底知れぬ強者の風格のようなものを感じた。
　それはつまりキーンを従えているオルタールの優位を意味する。
　アルダリンから威圧されたオルタールは不気味な笑顔のまま問いかけた。

「ほう・・・・・・アルダリンさんが黙っていないとおっしゃるのですか？」
「ええ、ノーベンバー商会の全勢力を持ってお応えします」
「見る限りただの護衛二人のようですが、護衛のためにそこまでされると？』
「もちろんです。私は私の関係者を守るために手段を選びません」

　強気に答えるアルダリン。
　もちろん彼の本心でもあるだろう。ノエルやリオネを守りたい気持ちは強い。だが、今の会話にはこの場を優位に進めるという意味もあった。
　オルタールが放つ言葉の意図も同じだろう。互いに相手よりも上に立とうとしている。
　しばらく睨み合うでもなくお互いに見つめ合ったアルダリンとオルタール。
　その後、オルタールが声を出して笑った。

「はっはっは、アルダリン殿。冗談じゃないですか。私のような者がノーベンバー商会と事を構えようなどと思っておりませんよ。失礼致しました。お嬢さん方もすまなかったね」

　そうオルタールが話すとアルダリンも優しく微笑む。

「ほっほっほ、それはよかった。すみませんな、真っ当な商売と研究開発に勤しんでいると冗談がわからないようになるもので」

　アルダリンは優しい表情でトゲのある言葉を放った。その言葉にはノーベンバー商会全勢力を持って相手するというのは冗談ではない事を含ませている。
　そんな言葉を聞いたオルタールは一瞬固まってから言葉を返した。

「アルダリン殿も冗談がお上手じゃないですか。私も真っ当に商売をしておりますよ」
「そのように聞こえましたかな。決してそのような意味はありませんよ」

　アルダリンがそう話すと、オルタールは再び不気味に微笑み口を開く。

「私の気にしすぎでしたな。本題に戻りましょうか。一体何の御用ですかな？」
「そうですな。前置きが長くなり申し訳ない。聞かせていただきたいことがあるのですが」

　問いかけてくるオルタールにアルダリンが答えた。
　するとオルタールは首を傾げる。

「聞きたいことですか？」