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連載
笑うオルタール
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スミナ・ディフォルの話が聞けなかったことで可能性を一つ失った三人は即座に次の者の部屋に向かう。
美術商のオルタール・デレだ。アルダリンが持っている事前情報によれば粗悪品や価値のないものを高値で売りつけるような男らしい。
面識のあるアルダリンが部屋の扉を叩く。
特に呼びかけることもせずにノックを続けると、すぐに返事が返ってきた。
「はい」
聞こえたのは感情の感じられない低い声である。
返事が聞こえてしばらく待っているとゆっくり扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは頭にバンダナを巻いた身長の高い男。まるで全身を筋肉の鎧で固めたような体つきをしている。
男は見下ろすようにアルダリンの姿を確認すると機械のように問いかけてきた。
「何だ」
男の大きさに驚きながらもアルダリンは言葉を返す。
「貴方はキーン・コスマリアですな。オルタールさんと話がしたいのですが」
その容姿からアルダリンは目の前の男をキーンだと判断した。アルダリンはキーンと直接会話をしたことはない。だが、オルタールとは何度かあったことがあり、いつもその隣にいるためすぐに分かった。
名前を言い当てられたキーンは全く表情を変えることなく、アルダリンの顔をまじまじと眺め、何かを理解したように頷く。
「そうか。分かった」
そう言ってキーンは部屋の中に戻った。
部屋の奥で誰かと話している声が聞こえ、しばらくするとキーンは再び三人の元へ帰ってくる。
帰ってきたキーンは三人に向けてこう言い放った。
「許可が出た。入れ」
無表情のまま言ったキーンは背を向けて部屋の中に入っていく。
その大きな背中にノエルが不機嫌そうに呟いた。
「何よ、あの態度。感情がないみたいじゃない」
「まぁまぁ、ノエル。部屋に入れてくれるってことはお話を聞かせてもらえるってことですよ」
ノエルを宥めるようにリオネが微笑む。
そのままアルダリン、ノエル、リオネはキーンの背中を追いかけ、部屋の中に入った。
すると部屋の中では細身の男が椅子に座って待ち構えている。
その男は不気味な笑みを浮かべ、両手を広げた。
「これはこれはアルダリン殿ではありませんか。すみません、うちのキーンは無愛想な男でしてな。何か失礼はなかったですか」
その態度からその細身の男がオルタールだとわかる。
元々面識のあったアルダリンは優しく微笑みながら言葉を返した。
「いえいえ、突然押しかけた私たちこそ迷惑ではなかったですか」
「他ならぬアルダリン殿ですから、いつでも歓迎いたしますよ。それで一体何の御用ですか?」
不気味な笑顔を浮かべたままオルタールは問いかける。
その表情を見ながらノエルはリオネに小さな声で話しかけた。
「見て、口角は上がってるけど目は笑ってないわ。それに痩せ方が何か不自然じゃない?」
表情の不気味さとその体型について話すとキーンがノエルを睨みつける。
聞こえるはずのない声量だったのに、とノエルが視線に驚いた。するとオルタールは右手を上げてキーンの視線を遮り口を開く。
「すみませんな、お嬢さん。こいつは耳がよく、陰口には敏感なのですよ。ちなみに視力も筋力も身体能力もその辺の者とは比べものになりません。暴れだすと誰にも止められないので妙な言動はお控えいただきたい」
牽制するような発言をするオルタール。
美術商のオルタール・デレだ。アルダリンが持っている事前情報によれば粗悪品や価値のないものを高値で売りつけるような男らしい。
面識のあるアルダリンが部屋の扉を叩く。
特に呼びかけることもせずにノックを続けると、すぐに返事が返ってきた。
「はい」
聞こえたのは感情の感じられない低い声である。
返事が聞こえてしばらく待っているとゆっくり扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは頭にバンダナを巻いた身長の高い男。まるで全身を筋肉の鎧で固めたような体つきをしている。
男は見下ろすようにアルダリンの姿を確認すると機械のように問いかけてきた。
「何だ」
男の大きさに驚きながらもアルダリンは言葉を返す。
「貴方はキーン・コスマリアですな。オルタールさんと話がしたいのですが」
その容姿からアルダリンは目の前の男をキーンだと判断した。アルダリンはキーンと直接会話をしたことはない。だが、オルタールとは何度かあったことがあり、いつもその隣にいるためすぐに分かった。
名前を言い当てられたキーンは全く表情を変えることなく、アルダリンの顔をまじまじと眺め、何かを理解したように頷く。
「そうか。分かった」
そう言ってキーンは部屋の中に戻った。
部屋の奥で誰かと話している声が聞こえ、しばらくするとキーンは再び三人の元へ帰ってくる。
帰ってきたキーンは三人に向けてこう言い放った。
「許可が出た。入れ」
無表情のまま言ったキーンは背を向けて部屋の中に入っていく。
その大きな背中にノエルが不機嫌そうに呟いた。
「何よ、あの態度。感情がないみたいじゃない」
「まぁまぁ、ノエル。部屋に入れてくれるってことはお話を聞かせてもらえるってことですよ」
ノエルを宥めるようにリオネが微笑む。
そのままアルダリン、ノエル、リオネはキーンの背中を追いかけ、部屋の中に入った。
すると部屋の中では細身の男が椅子に座って待ち構えている。
その男は不気味な笑みを浮かべ、両手を広げた。
「これはこれはアルダリン殿ではありませんか。すみません、うちのキーンは無愛想な男でしてな。何か失礼はなかったですか」
その態度からその細身の男がオルタールだとわかる。
元々面識のあったアルダリンは優しく微笑みながら言葉を返した。
「いえいえ、突然押しかけた私たちこそ迷惑ではなかったですか」
「他ならぬアルダリン殿ですから、いつでも歓迎いたしますよ。それで一体何の御用ですか?」
不気味な笑顔を浮かべたままオルタールは問いかける。
その表情を見ながらノエルはリオネに小さな声で話しかけた。
「見て、口角は上がってるけど目は笑ってないわ。それに痩せ方が何か不自然じゃない?」
表情の不気味さとその体型について話すとキーンがノエルを睨みつける。
聞こえるはずのない声量だったのに、とノエルが視線に驚いた。するとオルタールは右手を上げてキーンの視線を遮り口を開く。
「すみませんな、お嬢さん。こいつは耳がよく、陰口には敏感なのですよ。ちなみに視力も筋力も身体能力もその辺の者とは比べものになりません。暴れだすと誰にも止められないので妙な言動はお控えいただきたい」
牽制するような発言をするオルタール。
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