異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

萎縮するネイサン・ヴァルヴァ

　最初に向かったのはネイサン・ヴァルヴァの部屋である。
　都合よく二月前も乗船していた六人の部屋は全て四階にあった。そのため一番階段と近い場所に部屋があるネイサンから話を聞くことにしたのである。
　部屋の前に到着するとノエルが扉を優しく叩き呼びかけた。

「もしもーし、ネイサン・ヴァルヴァさんのお部屋ですかー」

　数回呼びかけるが返答はない。

「いないのかしら」

　そう呟きながら扉から離れるノエル。
　その背後にいたリオネとアルダリンも諦めた様子で、次の部屋に向かおうかと考えていた。
　すると部屋の中から小さな物音が聞こえ、ゆっくりと少しだけ扉が開く。その隙間から女性が半分だけ顔を覗かせ、三人に声をかけた。

「あの・・・・・・どなたですか？」

　女性の姿と声を確認したノエルたちは慌てて扉に近づく。だが女性は三人が近づいてきたのを確認すると慌てて扉を閉めた。

「驚かせちゃったみたいですね」

　リオネがそう言いながら苦笑する。しかしノエルは諦めず再びネイサンに声をかけた。

「ごめんごめん、驚かせちゃったわよね。私たちは怪しい者じゃないわ。少し話を聞かせて欲しいだけなの」

　ノエルの言葉が聞こえたのか、ネイサンは再度ゆっくりと扉を開き半分だけ顔を覗かせる。
　ネイサンの顔が見えたところでノエルが勢いよく近づこうとするが、その動きをリオネが彼女の手を握って止めた。

「ノエル、ちょっと待ってください。また驚か背てしまいますから、このまま事情を話しましょう」

　リオネに諭されるとノエルは納得し頷く。

「確かにそうね。私が話すと怖がられてしまうかもしれないからリオネが話してくれる？」

　そう言って一歩下がるノエル。説明を託されたリオネはノエルと場所を代わり優しくネイサンに話しかけた。

「驚かせてすみません。ネイサンさんで間違いないですか？」

　話しかけるとネイサンはもう少しだけ扉を開き、顔が全て見える状態にする。ようやく見えたネイサンは眼鏡をかけた長髪の大人しい女性だった。

「・・・・・・でいいです」

　必死に何かを伝えようとするネイサンだったが、声が小さいため三人は聞き取れない。
　三人が聞き取れていないことを察したネイサンは再び同じ言葉を口にした。

「ネイサンでいいです。ネイサンさんは語呂が悪いのでネイサンかヴァルヴァと呼んでください」

　その言葉から彼女がネイサンであると確信したリオネは優しく微笑みながら頷く。

「わかりました。えっと私はリオネです。少しだけお話を聞かせていただきたいなと思ってるのですが、いいですか？」
「・・・・・・話って私の研究のことですか？」

　ネイサンは警戒しながら聞き返した。
　海を研究してる彼女からすると話といえば研究についてなのだろう。しかし、今回聞きたいのはそんなことではない。リオネは首を横に振り話を進めた。

「いえ、二月前の話を聞きたいんです」
「二月前？」

　何のことかわからずに再び聞き返す。