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連載
二つの錠
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ジョンの話を聞いたノエルは再び状況をまとめ推測する。
「そっか、ジョンが当日に居たのならもっと話聞けたんだけどな。でも酒から毒が検出されていないなら、どうやって毒を飲んだのかしら。それはもう判明してる?」
「ええ、調査した者の報告によれば落ちているグラスから毒が検出されたそうです」
そう答えながらジョンは落ちているグラスを指さした。
彼の指の先には床に転がるグラスがある。机の上にあったグラスと合わせて五つ目のグラスだ。
五つのグラスと葡萄酒の瓶。そこから導き出される当時の状況は一つである。
「つまり、ディートはその日、この部屋で誰かと酒盛りをしていたってことね。その途中で毒の塗られたグラスを使用し、自殺に見せかけて殺された」
ノエルが状況を整理し話すと、リオネが疑問を口にした。
「でも、ディートさんは密室で死んでいたんですよね? 酒を飲んでいる最中に死んだとすれば、殺害した後に密室にしたってことですか?」
「そうなるわね。それくらい鍵を盗み出していれば簡単にできるんじゃない?」
リオネの疑問に対しノエルがそう答えると、ジョンが口を挟む。
「それは不可能ですよ」
「え?」
思わず聞き返してしまうノエル。
するとジョンは扉へと近づき、密室について説明を始めた。
「この部屋に限らず、全ての客室は二つの錠が設置されているんです」
「二つの錠?」
言葉の意味がわからずリオネが疑問を呟くと、ジョンは小さく頷き説明を続ける。
「ええ、お分かりかと思いますが錠とは扉を固定する機構。鍵はそれを開閉する道具です。全ての客室には外から鍵をかける錠が設置されており、お客様の外出時に使用していただく仕組みになっておりますが、それ以外にも錠が設置されているんです。それが扉の内側からかける錠です。この二つはそれぞれ独立した機構になっており、内側からかけた錠を外からの鍵で開けることはできません。これはお客様のプライベートを守るための仕組みなんです」
ジョンの説明を聞いたノエルはなるほどと頷いた。
「内側にいるときは誰にも開けられないってなれば安心して過ごせるものね」
「そうです。そして、ディート氏が死亡した際には内側からの錠が閉じておりました。外から鍵で開けることはできませんし、ディート氏が一人で死んでいた以上、ディート氏が自分で錠を閉じたとしか考えられません」
二つの錠が示すのはこの部屋が間違いなく密室であったという事実である。
ディートは自ら内側の錠を閉じ毒を飲んだ。それは間違い無いだろう。
「じゃあ、自殺で間違いないってこと?」
ノエルが疑問を口にするとリオネが首を横に振った。
「いいえ、密室でだったとしても自分で毒を飲んだとしても自殺ではありません」
「でも、この状況じゃあ」
「そう考えるしか無いんです」
言いながらリオネは左手中指の指輪をノエルに見せる。指輪を見たノエルは下唇を噛みながら自分を納得させるように頷いた。
「そうね・・・・・・他殺って決めてかかるしかないわね。普通に考えたんじゃあ、状況的には自殺・・・・・・考えるべきはどうやって内側から錠を閉じさせた上で毒を飲ませたか」
「そっか、ジョンが当日に居たのならもっと話聞けたんだけどな。でも酒から毒が検出されていないなら、どうやって毒を飲んだのかしら。それはもう判明してる?」
「ええ、調査した者の報告によれば落ちているグラスから毒が検出されたそうです」
そう答えながらジョンは落ちているグラスを指さした。
彼の指の先には床に転がるグラスがある。机の上にあったグラスと合わせて五つ目のグラスだ。
五つのグラスと葡萄酒の瓶。そこから導き出される当時の状況は一つである。
「つまり、ディートはその日、この部屋で誰かと酒盛りをしていたってことね。その途中で毒の塗られたグラスを使用し、自殺に見せかけて殺された」
ノエルが状況を整理し話すと、リオネが疑問を口にした。
「でも、ディートさんは密室で死んでいたんですよね? 酒を飲んでいる最中に死んだとすれば、殺害した後に密室にしたってことですか?」
「そうなるわね。それくらい鍵を盗み出していれば簡単にできるんじゃない?」
リオネの疑問に対しノエルがそう答えると、ジョンが口を挟む。
「それは不可能ですよ」
「え?」
思わず聞き返してしまうノエル。
するとジョンは扉へと近づき、密室について説明を始めた。
「この部屋に限らず、全ての客室は二つの錠が設置されているんです」
「二つの錠?」
言葉の意味がわからずリオネが疑問を呟くと、ジョンは小さく頷き説明を続ける。
「ええ、お分かりかと思いますが錠とは扉を固定する機構。鍵はそれを開閉する道具です。全ての客室には外から鍵をかける錠が設置されており、お客様の外出時に使用していただく仕組みになっておりますが、それ以外にも錠が設置されているんです。それが扉の内側からかける錠です。この二つはそれぞれ独立した機構になっており、内側からかけた錠を外からの鍵で開けることはできません。これはお客様のプライベートを守るための仕組みなんです」
ジョンの説明を聞いたノエルはなるほどと頷いた。
「内側にいるときは誰にも開けられないってなれば安心して過ごせるものね」
「そうです。そして、ディート氏が死亡した際には内側からの錠が閉じておりました。外から鍵で開けることはできませんし、ディート氏が一人で死んでいた以上、ディート氏が自分で錠を閉じたとしか考えられません」
二つの錠が示すのはこの部屋が間違いなく密室であったという事実である。
ディートは自ら内側の錠を閉じ毒を飲んだ。それは間違い無いだろう。
「じゃあ、自殺で間違いないってこと?」
ノエルが疑問を口にするとリオネが首を横に振った。
「いいえ、密室でだったとしても自分で毒を飲んだとしても自殺ではありません」
「でも、この状況じゃあ」
「そう考えるしか無いんです」
言いながらリオネは左手中指の指輪をノエルに見せる。指輪を見たノエルは下唇を噛みながら自分を納得させるように頷いた。
「そうね・・・・・・他殺って決めてかかるしかないわね。普通に考えたんじゃあ、状況的には自殺・・・・・・考えるべきはどうやって内側から錠を閉じさせた上で毒を飲ませたか」
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