異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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星空に浮かぶ船

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 波風を堪能した倉野たちはそのままグランマリア号船内に戻った。
 一階にある食堂は一般のレストランよりも広く既に人が集まっており、食事を楽しんでいる。
 外からその様子を眺めた倉野たちは二階に上がった。二階には地図通り各種商店が並んでいる。もちろん船の中であるため武器などの扱いはなく、服や装飾品、日用品などの店がほとんどだ。
 今すぐに何かを購入すると言う予定はないためすぐに三階に上がる倉野たち。三階にあるのはギャンブルルームや運動室などの施設である。出航したばかりなので運動室には誰もいなかったが、体育館のような広い空間があり体を動かすための部屋らしい。
 しかしギャンブルルームは既に満員になっていた。異様な熱気と独特な空気に包まれるギャンブルルーム。古今東西どの世界でも賭け事というものは人の心を掴むもの。リオネの話によればギャンブルをするためにこの船に乗る者も多いらしい。ノエルは一勝負したい言っていたのだが、とりあえず最上階にある展望室を見てからしようということで八階まで上がった。
 展望室に上がると数人が外の風景を楽しんでいる。日が沈み切った海上は空に輝く星々とそれを鏡のように写す真っ暗な海面だけが見え、まるで夜空を浮かんでいるように錯覚させた。
 そんな光景を見ながらリオネが目を輝かせる。まるで瞳の中に星空広がる夜空を宿しているかのような輝きだ。

「すごい景色・・・・・・自分がどこにいるのか忘れてしまいそうです」
「そうね。そんなガラじゃないけど感動してるわ」

 ノエルも言いながら窓の外を眺める。
 だが、倉野だけは展望室に用意されているベンチに座り込み口元を押さえていた。
 そんな倉野の様子に気づいたリオネが話しかける。

「あれ? そうしたんですか、クラノさん。体調が優れない様子ですが」

 声をかけられた倉野は少し遅れて反応した。

「あ、ああ。いえ、ちょっと吐き気が・・・・・・」

 そう答える倉野の表情を見るノエル。顔色が悪く、目眩がしているのか無意識に頭を揺らしていた。
 倉野の状態を把握したノエルはなるほどと頷き口を開く。

「船酔いってやつね。大きな船ほど酔いにくいって言うけれど、疲れが溜まってたり環境が合わなかったりすると酔うことはあるらしいわ。こればっかりは根性や気合いではどうにもならないから休むしかないわね。とりあえず客室に戻ることにしましょう」

 言いながらノエルは倉野の腕を掴んだ。そのまま倉野を立ち上がらせ、自分の肩に掴んだ腕を回す。まさに肩を貸すという状況だ。

「すみません、ありがとうございます」

 目の前がぐわんぐわんと揺れる気持ちの悪さを感じながら倉野が礼を言うとノエルは仕方ないというように微笑む。

「あら、いつ無料だなんて言った? 貸しにしておくからいつか返してね」
「元気になったら利息つけて両肩返しますよ」

 そう言いながら倉野はノエルに支えられるように自室へと戻った。
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