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リオネの恋心、倉野の罪悪感

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「あら、いいの? 随分かっこいいことするじゃない」

 ノエルは微笑みながら倉野が取り出した銀貨を受け取った。
 その隣でリオネは申し訳なさそうにしている。

「本当にいいんですか?」
「はい、せっかくなので名物を食べるの付き合ってくださいよ」

 倉野が答えるとリオネは優しい表情で小さく頷いた。
 二人の会話を聞いていたノエルが二人を離れてクラーケンの串焼きを売っている店に走っていく。

「じゃあ、買ってくるからちょっと待っててね」
「あ、ノエルさん」

 店に向かうノエルに倉野が呼びかけたが彼女は微笑んでそのまま行ってしまった。

「いいのかな、ノエルさんに買いに行ってもらって」

 倉野が思わずそう漏らすとリオネが優しく微笑む。

「気を遣ってくれたんじゃないでしょうか。私とクラノさんを二人にしようとしてくれたんだと思います。クラノさんと再会できて嬉しい反面、迷惑だったんじゃないかなって考えてる私のために」

 リオネの言葉を聞いた倉野はすぐに首を横に振った。

「そんな、迷惑だなんて。そんなことあるわけありません。僕もリオネさんに再会できて嬉しいですよ」
「ふふっ、相変わらず優しいんですね、クラノさん。そんなクラノさんだからこそ私は好きになったんです」
「え?」

 リオネからの突然の告白に戸惑う倉野。もちろんその気持ちに気づいてはいたが、こうもはっきり伝えられるとは思っていなかったのだ。
 焦る倉野の姿を見てリオネは悪戯に微笑む。

「ふふふっ、気づいてたんじゃないんですか?」
「いや、その、それは」
「心配しないでください。今すぐどうしたいなんて思ってませんよ。けれど、伝えたかったんです、この気持ちを。ただ一緒にいられて嬉しいだけなんです」

 そんなリオネの純粋な気持ちを聞いた倉野は小さな罪悪感が心の片隅にあると気づいた。
 こんなにもリオネは正直に気持ちを伝えてくれているのに、自分はリオネに隠し事をしている。それが罪悪感の正体だった。
 自分がこの世界の人間ではないから、それだけの理由で深い関わりを恐れている。
 もちろん友情や仲間意識を感じる者はこれまでにもいた。レインやダン、レオポルトなどがそれに該当する。
 だが、恋愛関係となれば別だ。自分に何かあれば悲しませることになるだろう。もしかすると自分の正体を知ったときに傷つけるかもしれない。
 自分の正体を隠した状態でいること。それが倉野の心に重石を載せている。
 だが、自分の正体が暴かれたときにこの世界から拒絶されるのではないか、という気持ちが拭えない。
 この世界においての呪術師のように大きな力を持つ少数は淘汰されかねないだろう。
 そう考えるあまり倉野自身、どうすればいいのかわからなくなっていた。
 倉野にできるのは微笑み返すことだけである。

「僕もリオネさんといられて嬉しいです」

 そう倉野が答えていると串を三本持ったノエルが帰ってきた。

「買ってきたわよ。早く食べましょ、お腹空いちゃった」
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