異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

クラーケンの串焼き

　二人と合流した倉野は軽く微笑んでから首を横に振った。

「いえいえ、今来たばっかりですよ」
「あら、紳士的なこと言うわね」

　そう言ってノエルは笑って返す。その隣でリオネも微笑んでいた。
　合流した三人はデルターラの大通りを見て歩こうと話し合い決定する。
　店が並んでいる大通りを歩くと食べ物の匂いがあちらこちらから漂ってきた。

「いい匂いがしますね」

　リオネが言いながら周囲を見渡す。どうやら大通りには食べ物を売っている店が多いらしい。店頭で肉を焼いていたり、焼き菓子を販売している店が見えた。
　リオネの言葉を聞いた倉野が二人に問いかける。

「この匂いを嗅ぐとお腹空いてきますね。何か食べますか？」
「そうね。船に乗る前に何か食べておきたいわね」

　ノエルが答えると同調するようにリオネも頷いた。

「はい、私もお腹空いてきちゃいました」
「でも迷いますね。いろんなものが売ってますから」

　倉野がそう話すとノエルが何かを思いついたように口を開く。

「でも、どうせならここの名物を食べたいわよね。ちょっと待ってて聞いてくる」

　そのままノエルは二人と離れ、近くの果物を販売している店に近づいていった。どうやら店の店員に話を聞いているらしい。
　そんなノエルを見ながらリオネは思わず言葉を漏らす。

「すごいですね、ノエルさんって。物怖じしないというか行動力がすごいです」
「ははっ、確かにそうですね。一緒にいると心強いですよ」

　微笑みながら倉野が答えるとリオネは少しだけ俯いた。

「羨ましいです。どちらかというと私は人と関わるのが得意ではないですから」
「そうなんですか？　そうは思わなかったですけど。でも、そういえば誰とも組まないから孤高の薔薇って呼ばれてましたね」
「その呼び名は恥ずかしいからやめてください」

　恥ずかしそうに頬を隠してリオネが答える。
　そんな話をしているとノエルが倉野たちのところに戻ってきた。

「聞いてきたわよ。あれ、どうしたの何か話してた？」

　照れているリオネに気づきノエルが問いかける。するとリオネが首を横に振った。

「な、なんでもないです。それより、名物ってなんだったんですか？」
「えっとね、クラーケンの串焼きなんだってさ。すぐそこで売ってるみたい。行ってみない？」
「いいですね。行きましょうよクラノさん」

　女性二人でクラーケンの串焼きを食べると決定すると倉野はその背中を追いかけるように着いていく。
　ノエルが聞いてきた通りに進むと、店頭で白い塊を串に刺して焼いている店が見えた。
　近くで見るとそれが大きなイカの切り身のようなものだとわかる。
　その近くには立て看板があり倉野には読めない文字で何かが書かれていた。
　どうやらそれは商品名と値段だったらしく、リオネが読み上げる。

「クラーケンの串焼き、一本銀貨一枚」

　同じく立て看板を読んだノエルが人差し指を顎に当てながら口を開いた。

「銀貨一枚かぁ。少し高いような気もするわね。でも名物だとそういうものか」
「せっかくだから食べましょうよ。僕が払いますから」

　倉野はそう言って鞄の中から銀貨三枚を取り出す。