220 / 729
連載
朝の買い物
しおりを挟む
アルダリンに気づいた倉野が声をかける。
「あ、おはようございます、アルダリンさん」
「おお、クラノさん。お早いですなぁ。どうですか、よく寝られましたか」
「ええ、ぐっすりです」
「それは良かった。ところで、どこかへお出かけになられるのですか?」
そう問いかけられた倉野はツクネを指差しながら答えた。
「はい、ちょっとこの子のご飯を買いに行こうかと思って」
「ほお、これは珍しい魔物ですな。このような魔物は見たことがない。移動用とも思えませんが愛玩用ということですか」
「いえ、相棒というか家族のようなものですよ」
「ほっほっほ、なるほど。そのような考え方もありますか。いやはや、魔物は移動用というような固定概念など捨てなければなりませんな。確かに愛らしい」
微笑みながらアルダリンはツクネを眺める。
アルダリンの視線を受けたツクネは褒められたことが分かったのか嬉しそうにスンスンと鼻を鳴らし、倉野はそんなツクネを撫でた。
その様子を眺めながらアルダリンは思い出したように話を続ける。
「おお、そうだ。食糧を買いに行かれるのでしたな。ですと、宿を出て左に曲がったところに大通りがありその中に食料品を取り扱っている店があります。ノーベンバー商会の契約している販売店ですから、品質は保証しますよ」
「ありがとうございます。助かります」
倉野はアルダリンに礼を言うとそのまま宿を後にした。
聞いた通り宿を出て左に向かうと様々な店が並ぶ大通りに出る。武器や日用品、食料から装飾品までなんでも揃っていた。人通りも多く大きな祭りのようである。
だが、この様子が物流の街スデルスタンの日常なのだろう。
まるで上京した若者のように歩く人と店の数に感心する倉野。
「すごいなぁ、ツクネ。本当にお祭りみたいだ」
「クク?」
「ははっ、ツクネにはお祭りなんてわかんないよな。こうやって人が集まるイベントがあるんだよ。さて、食料品店はどこかなっと」
そう言いながら倉野は周囲の店を見渡す。すると店前に果物を並べている店を発見した。
間違いなく食料品店だと判断した倉野はすぐにその店に向かう。
倉野が近づくと店番をしている女性が話しかけてきた。
「あら、お兄さん。何を探してるのかい?」
「あ、はい。えっと干し肉がいくつか欲しいんですけどありますか?」
店番の女性に倉野が問いかけると女性は強く頷く。
「ああ、あるよ。ちょっと待ってて」
そう言って女性は店の奥に入り、袋を抱えて戻ってきた。
「ほらよ、これでいいかい?」
女性に渡された袋を受け取ると倉野は中を確認する。そこには干し肉が綺麗に並べて入れられていた。
干し肉を確認した倉野は頷いて答える。
「はい、大丈夫です。えっと値段は・・・・・・」
「ああ、銀貨三枚と銅貨が五枚だよ、って言いたいところだけど銀貨三枚でいいよ」
「え?」
「ほら、お兄さんあれでしょ、アルダリンさんの連れの三人組ってやつ」
店の女性にそう言われ倉野は驚きながら頷いた。
「はい。でもどうして」
「ふふ、そりゃそうさ。ここじゃあ物も流れるが情報も流れるのよ。アルダリンさんが三人の同行者を連れてやってきたって噂になってたのさ。同行者の見た目の情報もね」
なるほど、と倉野は心の中で呟く。アルダリンの影響力はやはり大きいらしい。
銀貨三枚を払った倉野は礼を言い宿に向けて歩き始めた。
「あ、おはようございます、アルダリンさん」
「おお、クラノさん。お早いですなぁ。どうですか、よく寝られましたか」
「ええ、ぐっすりです」
「それは良かった。ところで、どこかへお出かけになられるのですか?」
そう問いかけられた倉野はツクネを指差しながら答えた。
「はい、ちょっとこの子のご飯を買いに行こうかと思って」
「ほお、これは珍しい魔物ですな。このような魔物は見たことがない。移動用とも思えませんが愛玩用ということですか」
「いえ、相棒というか家族のようなものですよ」
「ほっほっほ、なるほど。そのような考え方もありますか。いやはや、魔物は移動用というような固定概念など捨てなければなりませんな。確かに愛らしい」
微笑みながらアルダリンはツクネを眺める。
アルダリンの視線を受けたツクネは褒められたことが分かったのか嬉しそうにスンスンと鼻を鳴らし、倉野はそんなツクネを撫でた。
その様子を眺めながらアルダリンは思い出したように話を続ける。
「おお、そうだ。食糧を買いに行かれるのでしたな。ですと、宿を出て左に曲がったところに大通りがありその中に食料品を取り扱っている店があります。ノーベンバー商会の契約している販売店ですから、品質は保証しますよ」
「ありがとうございます。助かります」
倉野はアルダリンに礼を言うとそのまま宿を後にした。
聞いた通り宿を出て左に向かうと様々な店が並ぶ大通りに出る。武器や日用品、食料から装飾品までなんでも揃っていた。人通りも多く大きな祭りのようである。
だが、この様子が物流の街スデルスタンの日常なのだろう。
まるで上京した若者のように歩く人と店の数に感心する倉野。
「すごいなぁ、ツクネ。本当にお祭りみたいだ」
「クク?」
「ははっ、ツクネにはお祭りなんてわかんないよな。こうやって人が集まるイベントがあるんだよ。さて、食料品店はどこかなっと」
そう言いながら倉野は周囲の店を見渡す。すると店前に果物を並べている店を発見した。
間違いなく食料品店だと判断した倉野はすぐにその店に向かう。
倉野が近づくと店番をしている女性が話しかけてきた。
「あら、お兄さん。何を探してるのかい?」
「あ、はい。えっと干し肉がいくつか欲しいんですけどありますか?」
店番の女性に倉野が問いかけると女性は強く頷く。
「ああ、あるよ。ちょっと待ってて」
そう言って女性は店の奥に入り、袋を抱えて戻ってきた。
「ほらよ、これでいいかい?」
女性に渡された袋を受け取ると倉野は中を確認する。そこには干し肉が綺麗に並べて入れられていた。
干し肉を確認した倉野は頷いて答える。
「はい、大丈夫です。えっと値段は・・・・・・」
「ああ、銀貨三枚と銅貨が五枚だよ、って言いたいところだけど銀貨三枚でいいよ」
「え?」
「ほら、お兄さんあれでしょ、アルダリンさんの連れの三人組ってやつ」
店の女性にそう言われ倉野は驚きながら頷いた。
「はい。でもどうして」
「ふふ、そりゃそうさ。ここじゃあ物も流れるが情報も流れるのよ。アルダリンさんが三人の同行者を連れてやってきたって噂になってたのさ。同行者の見た目の情報もね」
なるほど、と倉野は心の中で呟く。アルダリンの影響力はやはり大きいらしい。
銀貨三枚を払った倉野は礼を言い宿に向けて歩き始めた。
1
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。