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朝の買い物

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 アルダリンに気づいた倉野が声をかける。

「あ、おはようございます、アルダリンさん」
「おお、クラノさん。お早いですなぁ。どうですか、よく寝られましたか」
「ええ、ぐっすりです」
「それは良かった。ところで、どこかへお出かけになられるのですか?」

 そう問いかけられた倉野はツクネを指差しながら答えた。

「はい、ちょっとこの子のご飯を買いに行こうかと思って」
「ほお、これは珍しい魔物ですな。このような魔物は見たことがない。移動用とも思えませんが愛玩用ということですか」
「いえ、相棒というか家族のようなものですよ」
「ほっほっほ、なるほど。そのような考え方もありますか。いやはや、魔物は移動用というような固定概念など捨てなければなりませんな。確かに愛らしい」

 微笑みながらアルダリンはツクネを眺める。
 アルダリンの視線を受けたツクネは褒められたことが分かったのか嬉しそうにスンスンと鼻を鳴らし、倉野はそんなツクネを撫でた。
 その様子を眺めながらアルダリンは思い出したように話を続ける。

「おお、そうだ。食糧を買いに行かれるのでしたな。ですと、宿を出て左に曲がったところに大通りがありその中に食料品を取り扱っている店があります。ノーベンバー商会の契約している販売店ですから、品質は保証しますよ」
「ありがとうございます。助かります」

 倉野はアルダリンに礼を言うとそのまま宿を後にした。
 聞いた通り宿を出て左に向かうと様々な店が並ぶ大通りに出る。武器や日用品、食料から装飾品までなんでも揃っていた。人通りも多く大きな祭りのようである。
 だが、この様子が物流の街スデルスタンの日常なのだろう。
 まるで上京した若者のように歩く人と店の数に感心する倉野。

「すごいなぁ、ツクネ。本当にお祭りみたいだ」
「クク?」
「ははっ、ツクネにはお祭りなんてわかんないよな。こうやって人が集まるイベントがあるんだよ。さて、食料品店はどこかなっと」

 そう言いながら倉野は周囲の店を見渡す。すると店前に果物を並べている店を発見した。
 間違いなく食料品店だと判断した倉野はすぐにその店に向かう。
 倉野が近づくと店番をしている女性が話しかけてきた。

「あら、お兄さん。何を探してるのかい?」
「あ、はい。えっと干し肉がいくつか欲しいんですけどありますか?」

 店番の女性に倉野が問いかけると女性は強く頷く。

「ああ、あるよ。ちょっと待ってて」

 そう言って女性は店の奥に入り、袋を抱えて戻ってきた。

「ほらよ、これでいいかい?」

 女性に渡された袋を受け取ると倉野は中を確認する。そこには干し肉が綺麗に並べて入れられていた。
 干し肉を確認した倉野は頷いて答える。

「はい、大丈夫です。えっと値段は・・・・・・」
「ああ、銀貨三枚と銅貨が五枚だよ、って言いたいところだけど銀貨三枚でいいよ」
「え?」
「ほら、お兄さんあれでしょ、アルダリンさんの連れの三人組ってやつ」

 店の女性にそう言われ倉野は驚きながら頷いた。

「はい。でもどうして」
「ふふ、そりゃそうさ。ここじゃあ物も流れるが情報も流れるのよ。アルダリンさんが三人の同行者を連れてやってきたって噂になってたのさ。同行者の見た目の情報もね」

 なるほど、と倉野は心の中で呟く。アルダリンの影響力はやはり大きいらしい。
 銀貨三枚を払った倉野は礼を言い宿に向けて歩き始めた。
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