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戦利品は約束

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 そんなレインの背後からエヴァンシル王が全員に聞こえるように話し始めた。

「我が国は間違いなくクラノ殿に救われた。本来ならば見返りを求めて然るべき場面なのだが、クラノ殿にそんな意思はないのだろう」
「まぁ、目立ちたくないですしね」

 そう答える倉野に対して王は軽く笑ってから言葉を続ける。

「ふっ、それも本心だろうが我が国のことを考えてくれているのだろう。クラノ殿に勲章を与えるとなれば何が起こったのかを露わにしなければならない。それはオランディ内に大きな動揺と混乱を招くことになる。恩人がそこまで考えてくれているのだ、私たちにできることは精一杯見送ることだけじゃないだろうか」

 話してから王は立ち上がり倉野に近づいた。そのまま右手を出し、倉野に握手を求める。
 照れ臭そうに倉野は王の握手に応え、その手を握った。
 そんな倉野の表情を見ながら王は口を開く。

「王として、オランディに生きる者として最大の感謝をクラノ殿に送ろう。そして貴殿に何かあればオランディの総力を持って助けることを約束する。第二の祖国だと思ってくれていい。また貴殿と会える日を楽しみにしているぞ」
「はい、僕もオランディに何かあれば駆けつけます」

 倉野が王にそう答えると、既にリヴィエールもエヴァンシル王の隣にいた。

「このリヴィエール、ここまで他人との別れを惜しんだことはございません。たった数刻の付き合いですが、この出会いを忘れることはないでしょう」
「僕もですよリヴィエールさん」
「これでも私は様々な方面に顔が効きます。いつでも私の名前を出してください。リヴィエール・キリシマの名前を聞けばその辺の賊は戦うことすらしないはずです」
「どんな過去を背負ってるんですか」

 驚きながら答える倉野にリヴィエールは笑顔で返す。
 そんな話をしていると突然ブレイズが立ち上がった。

「あの・・・・・・何と言っていいか」

 ブレイズはそう言って言葉を絞り出そうとする。彼も彼なりに倉野に伝えたいことがあるようだ。
 しかし、何をどのように伝えていいのかわからない。そんなブレイズの気持ちを感じた倉野は微笑んで話しかける。

「どうか、フォルテとメディーナさんと一緒にオランディを支えてください。大切な人のために行動できるブレイズさんのこと、僕は好きですよ」
「ああ、約束しよう。ルージュ家はオランディの平和にだけ存在することを」

 ブレイズの答えを聞いた倉野は安心して頷いた。
 オランディ最強の剣士を従えているルージュ家がオランディの平和を守ると約束してくれるのならば、これ以上の安心材料はないだろう。
 それぞれと別れの挨拶を済ませた倉野は部屋から立ち去ろうとした。
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