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連載
男と男
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既にブレイズの思考は追いついていない。
そんなブレイズにとどめを刺すようにエヴァンシル王が言葉を続けた。
「ブレイズよ、貴殿の目的は妹メディーナを救うことだろう。その目的も方法も知っている。妹を想うあまり冷静さを欠いての行動だ、その気持ちはわからないでもない。だがな、全てを許すことはできぬ・・・・・・貴殿も、貴殿と繋がっているアヴァール・ノワールもな。自分の目的、野望のために王子を殺害した罪は償え。そうすれば必ずメディーナを救うと約束しよう」
王の言葉を聞いたブライズは俯き、ゆっくりと口を開く。
「全てを・・・・・・知っているのですね。分かっていながら、妹を救うと?」
「私だけの意見ではない。部外者ながらこの件に命を賭けてくれたクラノ殿がメディーナを救うと言っている。もちろん私も救えるのならば救ってやりたい」
「クラノ殿が・・・・・・」
そう言いながら再び倉野に視線を送るブレイズ。視線を受けた倉野は大きく頷いた。
「ですがブレイズさんやメディーナさんのためだけではありません。僕と戦ったフォルテの為にも、メディーナさんを救いたいんです」
「貴殿がフォルテと・・・・・・いや、今生き残っているということはフォルテに勝ったということですか?」
「僕だけの力じゃないですけどね」
倉野が微笑みながらブレイズに返答すると、ブレイズは緊張から解き放たれたように安堵の表情を浮かべる。まるで憑物が落ちたような柔らかい表情だ。
ルージュ家当主ブレイズは他の貴族とは違い、戦いが身近にある貴族。戦うことで芽生える相手への情や尊敬は分かっている。真剣勝負の中でお互いを認め合う心、仲間意識のようなものを知っていた。
自分が最も信頼するフォルテが戦い、破れた相手。その倉野がフォルテの為にと言っている、それは他のどのような言葉よりもブレイズの心に刺さった。
ブレイズはゆっくりと口を開く。
「フォルテは私が知る中で最も強い男です。倒すのは簡単じゃなかったでしょう」
「ええ、誰よりも強かったです。それも全てメディーナさんを想う心の強さでしょう。それがフォルテの正義だったんだと思います」
「私も一人の男、戦いの中で芽生える絆も知っています。そしてその戦いの中でフォルテを想ってくれたのならば、私も貴殿を信じるべきなのでしょうな・・・・・・クラノ殿、私の命と引き換えにメディーナを救ってくれますか?」
覚悟を決めたようにブレイズはそう問いかけた。命をかけたブレイズの言葉、いや、一人の男としての言葉に倉野は強く頷く。
「もちろんです」
ブレイズの想いを受け止めた倉野の言葉は強く重い。男と男の約束を交わしたブレイズはすっきりとした表情で立ち上がりエヴァンシル王と向き合う。
「私に死罪を言い渡してください。もはや後悔はない。妹の為とはいえ王子を殺す指示を出した罪をこの命で償いましょう」
そんなブレイズにとどめを刺すようにエヴァンシル王が言葉を続けた。
「ブレイズよ、貴殿の目的は妹メディーナを救うことだろう。その目的も方法も知っている。妹を想うあまり冷静さを欠いての行動だ、その気持ちはわからないでもない。だがな、全てを許すことはできぬ・・・・・・貴殿も、貴殿と繋がっているアヴァール・ノワールもな。自分の目的、野望のために王子を殺害した罪は償え。そうすれば必ずメディーナを救うと約束しよう」
王の言葉を聞いたブライズは俯き、ゆっくりと口を開く。
「全てを・・・・・・知っているのですね。分かっていながら、妹を救うと?」
「私だけの意見ではない。部外者ながらこの件に命を賭けてくれたクラノ殿がメディーナを救うと言っている。もちろん私も救えるのならば救ってやりたい」
「クラノ殿が・・・・・・」
そう言いながら再び倉野に視線を送るブレイズ。視線を受けた倉野は大きく頷いた。
「ですがブレイズさんやメディーナさんのためだけではありません。僕と戦ったフォルテの為にも、メディーナさんを救いたいんです」
「貴殿がフォルテと・・・・・・いや、今生き残っているということはフォルテに勝ったということですか?」
「僕だけの力じゃないですけどね」
倉野が微笑みながらブレイズに返答すると、ブレイズは緊張から解き放たれたように安堵の表情を浮かべる。まるで憑物が落ちたような柔らかい表情だ。
ルージュ家当主ブレイズは他の貴族とは違い、戦いが身近にある貴族。戦うことで芽生える相手への情や尊敬は分かっている。真剣勝負の中でお互いを認め合う心、仲間意識のようなものを知っていた。
自分が最も信頼するフォルテが戦い、破れた相手。その倉野がフォルテの為にと言っている、それは他のどのような言葉よりもブレイズの心に刺さった。
ブレイズはゆっくりと口を開く。
「フォルテは私が知る中で最も強い男です。倒すのは簡単じゃなかったでしょう」
「ええ、誰よりも強かったです。それも全てメディーナさんを想う心の強さでしょう。それがフォルテの正義だったんだと思います」
「私も一人の男、戦いの中で芽生える絆も知っています。そしてその戦いの中でフォルテを想ってくれたのならば、私も貴殿を信じるべきなのでしょうな・・・・・・クラノ殿、私の命と引き換えにメディーナを救ってくれますか?」
覚悟を決めたようにブレイズはそう問いかけた。命をかけたブレイズの言葉、いや、一人の男としての言葉に倉野は強く頷く。
「もちろんです」
ブレイズの想いを受け止めた倉野の言葉は強く重い。男と男の約束を交わしたブレイズはすっきりとした表情で立ち上がりエヴァンシル王と向き合う。
「私に死罪を言い渡してください。もはや後悔はない。妹の為とはいえ王子を殺す指示を出した罪をこの命で償いましょう」
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