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連載
戦わない戦い
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その声に気付いたレインは話すの止めて振り返る。
「クラノ! ノエル! 戻ってきたのか」
安堵からなのかレインは笑顔を浮かべた。それは戦うべき相手を前にした表情ではない。
そこに三人の信頼関係が見てとれた。
振り返ったレインはその視線の先に見慣れない男がいることに気づく。怪しく光る紫の長髪に血のような赤い瞳、背中には闇を想像させる漆黒の翼が生えている男。その手には強い魔力を放つ大剣が握られていた。その男が人間ではないとすぐにわかる。
レインの視線に気付いた倉野は強く頷き声をかけた。
「お待たせしました。大変でしたか?」
「いいや、クラノたちに比べれば容易いことさ。俺が相手にしていたのは人間だからね。それでクラノ、あの男は・・・・・・って聞くだけ野暮か。全てを揃えてきたんだね」
「はい、アスタロトです。これが最後の戦いになりますよ。まぁ、剣は必要のない戦いですが」
倉野はそう言いながらレインの先にいるルージュ家の軍勢を観察する。
ルージュ軍は全員が赤の布をマフラーの様に首に巻いてた。横に三十人ほど並び、その背後にまたそれぞれ三十人ほど並んでいる。正方形のような形で隊列を組み待機していた。その数およそ千。
その千人の中心には移動用の魔物に乗った男がおり、こちらを睨んでいる。おそらくその男がルージュ家当主ブレイズなのだろう。
そして千人の先頭には鎧に身を包み強者の風格を放つ男がいた。ルージュ軍を率いる立場なのだろうか。
レインと話していたのはこの男だろう。
対して国軍はその三倍ほどの人数がいる。数だけが勝敗を決めるわけではないが倉野の素人目に見てもルージュ軍に勝ち目があるとは思えない。
それほど焦りながら、揺るぎない覚悟を持って攻めてきたことがわかる。
観察している倉野に対してレインが問いかけた。
「剣のいらない戦い?」
「ええ、ペンは剣より強しってことです」
「ペンで戦うのかい?」
「いいえ、言論は武力に勝るって意味ですよ。まぁ、今の状況とあってるかは微妙ですが」
そう言いながら倉野は微笑む。
レインと話しているとルージュ軍側から声が響いた。先頭にいる鎧の男である。
「何を話している! こちらには戦う準備がある。こちらの条件を飲まないのであれば武力をもって押し通す! 速やかに返答せよ」
男の言葉を聞いたレインの表情は一気に険しくなった。
「くっ、やはりルージュ軍は好戦的だね。特に彼・・・・・・ルージュ家の私兵軍を束ねるイージスは戦うことを生きがいにしている男さ。クラノが戦ったフォルテの師匠でもある。どうやらルージュ軍はもう待ってくれそうにないね」
そうレインが話すと倉野は頷いてから即座に振り返り大声を上げる。
「アスタロト! 命令だ。エヴァンシル王を連れてここまで来い!」
背後で待機していたアスタロトに強く命じる倉野。
命令を受けたアスタロトはクレアシオンを持っていない左手でエヴァンシル王の服を掴んだ。
「え?」
「命令は絶対だ。行くぞ、人の王よ」
驚く王にそう告げたアスタロトは王を掴んだまま大きく跳躍し、放物線を描いてから倉野の隣に着地する。
王からすればジェットコースターに乗ったようなものだ。顔面蒼白の状態で呼吸を荒げている。
「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったぞ。もっと優しく運んでくれ」
「では、次はそう命じるように言え。私に下された命令に貴様を優しく運ぶことは含まれていない」
不満を唱える王にそう言ってからアスタロトはいやらしく微笑む。
「クラノ! ノエル! 戻ってきたのか」
安堵からなのかレインは笑顔を浮かべた。それは戦うべき相手を前にした表情ではない。
そこに三人の信頼関係が見てとれた。
振り返ったレインはその視線の先に見慣れない男がいることに気づく。怪しく光る紫の長髪に血のような赤い瞳、背中には闇を想像させる漆黒の翼が生えている男。その手には強い魔力を放つ大剣が握られていた。その男が人間ではないとすぐにわかる。
レインの視線に気付いた倉野は強く頷き声をかけた。
「お待たせしました。大変でしたか?」
「いいや、クラノたちに比べれば容易いことさ。俺が相手にしていたのは人間だからね。それでクラノ、あの男は・・・・・・って聞くだけ野暮か。全てを揃えてきたんだね」
「はい、アスタロトです。これが最後の戦いになりますよ。まぁ、剣は必要のない戦いですが」
倉野はそう言いながらレインの先にいるルージュ家の軍勢を観察する。
ルージュ軍は全員が赤の布をマフラーの様に首に巻いてた。横に三十人ほど並び、その背後にまたそれぞれ三十人ほど並んでいる。正方形のような形で隊列を組み待機していた。その数およそ千。
その千人の中心には移動用の魔物に乗った男がおり、こちらを睨んでいる。おそらくその男がルージュ家当主ブレイズなのだろう。
そして千人の先頭には鎧に身を包み強者の風格を放つ男がいた。ルージュ軍を率いる立場なのだろうか。
レインと話していたのはこの男だろう。
対して国軍はその三倍ほどの人数がいる。数だけが勝敗を決めるわけではないが倉野の素人目に見てもルージュ軍に勝ち目があるとは思えない。
それほど焦りながら、揺るぎない覚悟を持って攻めてきたことがわかる。
観察している倉野に対してレインが問いかけた。
「剣のいらない戦い?」
「ええ、ペンは剣より強しってことです」
「ペンで戦うのかい?」
「いいえ、言論は武力に勝るって意味ですよ。まぁ、今の状況とあってるかは微妙ですが」
そう言いながら倉野は微笑む。
レインと話しているとルージュ軍側から声が響いた。先頭にいる鎧の男である。
「何を話している! こちらには戦う準備がある。こちらの条件を飲まないのであれば武力をもって押し通す! 速やかに返答せよ」
男の言葉を聞いたレインの表情は一気に険しくなった。
「くっ、やはりルージュ軍は好戦的だね。特に彼・・・・・・ルージュ家の私兵軍を束ねるイージスは戦うことを生きがいにしている男さ。クラノが戦ったフォルテの師匠でもある。どうやらルージュ軍はもう待ってくれそうにないね」
そうレインが話すと倉野は頷いてから即座に振り返り大声を上げる。
「アスタロト! 命令だ。エヴァンシル王を連れてここまで来い!」
背後で待機していたアスタロトに強く命じる倉野。
命令を受けたアスタロトはクレアシオンを持っていない左手でエヴァンシル王の服を掴んだ。
「え?」
「命令は絶対だ。行くぞ、人の王よ」
驚く王にそう告げたアスタロトは王を掴んだまま大きく跳躍し、放物線を描いてから倉野の隣に着地する。
王からすればジェットコースターに乗ったようなものだ。顔面蒼白の状態で呼吸を荒げている。
「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったぞ。もっと優しく運んでくれ」
「では、次はそう命じるように言え。私に下された命令に貴様を優しく運ぶことは含まれていない」
不満を唱える王にそう言ってからアスタロトはいやらしく微笑む。
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