184 / 729
連載
忠誠を誓うワン
しおりを挟む
イスベルグから与えられた選択肢は実質命令だ。
それを拒む権利などアスタロトにはない。
他人の命を奪おうとした者は代償として自らの権利を失うことがある。強者であることを振りかざした者が弱者側に回った結果だ。
諦めたようにアスタロトは頭を下げる。
「・・・・・・我が忠誠をイスベルグ様に・・・・・・」
そう答えたアスタロトに対してイスベルグは再び問いかけた。
「何だ、不満そうだな?」
「い、いえ、そのようなことは・・・・・・」
「貴様は本当に服従したと思っているのか?」
「も、もちろんでございます。イスベルグ様のような強者に服従できることは何よりの幸せです」
「そうか、そんなに幸せならば小型の魔物のように仰向けになり嬉しそうにワンワンと鳴いてみろ」
イスベルグは嬉しそうにそう命じる。
その様子を見ていたノエル、エヴァンシル王、リヴィエールは絶句していた。
人類を滅ぼすかもしれないと思っていた悪魔が目の前で完全に心を折られ、弄ばれている。
三人は同じような文面になる感情を相反する意味で抱いていた。
これが伝説の悪魔か。これが伝説のドラゴンか。
そんな視線を感じながらアスタロトは仰向けでコロコロと転がる。
「ワンワンワンワン」
可哀想になるほど無様な姿を見せるアスタロトに楽しそうなイスベルグ。
何とあっけない結末だろうか。
そう思いながらもエヴァンシル王は言葉を漏らす。
「これ、どっちが悪魔?」
「ど、どちらでしょうか」
王の疑問に答えるリヴィエールも目の前の現実を信じられずにいた。
体の内側から見ていた倉野も呆れたように言葉をかける。
「イスベルグさん、やりすぎですよ。めちゃくちゃ強そうな悪魔が登場して一分で犬になったのですが」
「ん? イヌ? わからんが、悪魔を従わせるには徹底的に上下関係を叩き込まなければならない。最初が肝心だ」
「だからって、無駄に美形の悪魔が地面をゴロゴロしながらワンワン言ってるのはちょっと見てられない」
もはやアスタロトに同情してしまう倉野だった。
アスタロトを従わせたイスベルグは疲れたようにため息をつき、倉野に話しかける。
「私は疲れた。次こそは本当にしばらく眠るからな。後は任せたぞ」
そう言ってから精神交換を発動するイスベルグ。
いきなり元に戻った倉野は驚き、足元をふらつかせる。
「うわっと」
「ワンワンワンどうされたのですかワン?」
突然様子が変わった倉野にアスタロトが問いかけた。
「いや、何でもないよ」
「ん? イスベルグ様ではない・・・・・・何者だ?」
イスベルグと倉野が入れ替わったことを感じたアスタロトは下から睨むように倉野を見る。その鋭い視線に驚く倉野。
「え、あの」
「イスベルグ様以外には従わぬ!」
そう言い放つアスタロトだったが、それに気づいたイスベルグが倉野の口を操った。
「おい、私ならいるぞ。この男の中に私はいる。つまりこの男と私は同体だ。この男の言葉は私の言葉と思え」
「な・・・・・・なるほど。わかりました」
戸惑いながら答えるアスタロト。しかし、イスベルグはさらに言葉を続けた。
「返事はワンだ」
「ワン」
こうして倉野はアスタロトを服従させることに成功したのである。
それを拒む権利などアスタロトにはない。
他人の命を奪おうとした者は代償として自らの権利を失うことがある。強者であることを振りかざした者が弱者側に回った結果だ。
諦めたようにアスタロトは頭を下げる。
「・・・・・・我が忠誠をイスベルグ様に・・・・・・」
そう答えたアスタロトに対してイスベルグは再び問いかけた。
「何だ、不満そうだな?」
「い、いえ、そのようなことは・・・・・・」
「貴様は本当に服従したと思っているのか?」
「も、もちろんでございます。イスベルグ様のような強者に服従できることは何よりの幸せです」
「そうか、そんなに幸せならば小型の魔物のように仰向けになり嬉しそうにワンワンと鳴いてみろ」
イスベルグは嬉しそうにそう命じる。
その様子を見ていたノエル、エヴァンシル王、リヴィエールは絶句していた。
人類を滅ぼすかもしれないと思っていた悪魔が目の前で完全に心を折られ、弄ばれている。
三人は同じような文面になる感情を相反する意味で抱いていた。
これが伝説の悪魔か。これが伝説のドラゴンか。
そんな視線を感じながらアスタロトは仰向けでコロコロと転がる。
「ワンワンワンワン」
可哀想になるほど無様な姿を見せるアスタロトに楽しそうなイスベルグ。
何とあっけない結末だろうか。
そう思いながらもエヴァンシル王は言葉を漏らす。
「これ、どっちが悪魔?」
「ど、どちらでしょうか」
王の疑問に答えるリヴィエールも目の前の現実を信じられずにいた。
体の内側から見ていた倉野も呆れたように言葉をかける。
「イスベルグさん、やりすぎですよ。めちゃくちゃ強そうな悪魔が登場して一分で犬になったのですが」
「ん? イヌ? わからんが、悪魔を従わせるには徹底的に上下関係を叩き込まなければならない。最初が肝心だ」
「だからって、無駄に美形の悪魔が地面をゴロゴロしながらワンワン言ってるのはちょっと見てられない」
もはやアスタロトに同情してしまう倉野だった。
アスタロトを従わせたイスベルグは疲れたようにため息をつき、倉野に話しかける。
「私は疲れた。次こそは本当にしばらく眠るからな。後は任せたぞ」
そう言ってから精神交換を発動するイスベルグ。
いきなり元に戻った倉野は驚き、足元をふらつかせる。
「うわっと」
「ワンワンワンどうされたのですかワン?」
突然様子が変わった倉野にアスタロトが問いかけた。
「いや、何でもないよ」
「ん? イスベルグ様ではない・・・・・・何者だ?」
イスベルグと倉野が入れ替わったことを感じたアスタロトは下から睨むように倉野を見る。その鋭い視線に驚く倉野。
「え、あの」
「イスベルグ様以外には従わぬ!」
そう言い放つアスタロトだったが、それに気づいたイスベルグが倉野の口を操った。
「おい、私ならいるぞ。この男の中に私はいる。つまりこの男と私は同体だ。この男の言葉は私の言葉と思え」
「な・・・・・・なるほど。わかりました」
戸惑いながら答えるアスタロト。しかし、イスベルグはさらに言葉を続けた。
「返事はワンだ」
「ワン」
こうして倉野はアスタロトを服従させることに成功したのである。
1
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。