異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
174 / 729
連載

警鐘の目覚まし

しおりを挟む
 自分にだけ聞こえる声で倉野が呟くとそれに答える声が頭の中に響いた。

「不可能だぞ」
「え?」

 聞こえてきた声に思わず反応する倉野。
 その様子をリヴィエールとエヴァンシル王は不思議そうに眺める。だが、レインとノエルは何が起こっているのか瞬時に理解し、倉野の行動を見守った。

「私との精神交換を思い出し、精神交換を用いてメディーナという娘を救おうと考えたな」

 再び声が倉野の頭の中に響く。もちろん声の主は倉野の中に眠るドラゴン、イスベルグだ。
 自分の考えを見透かしている言葉に驚きながらも倉野は小さく頷く。

「はい、その通りです」
「それが不可能だと言っているのだ。いいか、精神交換とは簡単なものではない。人間が人間に入り込む事はできず、相手の体の中に入り込む高度な技術と知能、魔法レベルの高さと魔力量も求められるということだ。というか私は眠ると言っただろ。妙なことに顔を突っ込むな」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃないですか。目の前で起こっている事を見て見ぬふり出来ませんよ」

 倉野は苦笑しながらそう答えた。
 そんな様子を見ていたレインやリヴィエールたちには倉野の声しか聞こえておらず、不思議そうな表情を浮かべている。
 イスベルグと会話している倉野を見ながらリヴィエールがレインに問いかけた。

「彼は一体どうしたんですか。一人で会話をしているようですが・・・・・・スキル説明には副作用でもあるのですか?」
「いや、違いますよ。スキル説明の副作用で見えちゃいけないものが見えているというわけではありません。クラノの・・・・・・彼の中にはドラゴンが封じ込められているのです。その名はイスベルグ」

 レインが答えるとリヴィエールは思わず言葉を失う。

「な・・・・・・」
「どうやらその魔法の一部を使えるようです。幾つかのリスクはあるようですが」
「な、なるほど、クラノ殿の戦闘力はそれに依存しているわけですね」
「いや、確かにその力を使用することもあるようですが、それとは別に肉体的な戦闘力も人間離れしています」
「どのようなことも知ることができるスキルに、ドラゴン級の魔法と人間離れした戦闘力・・・・・・大切な事を聞いていませんでした。彼は人間ですか?」

 冗談のような事を真剣な表情で尋ねるリヴィエール。
 思わず笑いそうになりながらレインは答えた。

「私が見てきた限りは人間ですよ。ただ、底は見えません・・・・・・まるで努力と結果が直結しているかのように」
「無限の可能性を秘めているという事ですか。彼に対する怖さを感じる反面、希望が見えてきたような気もしています」

 そう言いながらリヴィエールは穏やかな表情でイスベルグと会話する倉野を眺める。
 倉野はイスベルグとの会話を続けていた。

「ちゃんと考えて行動したつもりなんですよ。イスベルグさんを起こすつもりなんてなかったんです」
「いいか、私の精神とお前の精神は繋がっている。お前の心が荒れると眠っている私の頭の中に警鐘が鳴るのだ。煩くてかなわん。あの音は何よりも嫌いだ」
「ああ、目覚まし時計に設定した音を嫌いになるようなものですね」
「めざまし? 何を言っているのかわからんが。まぁいい、とにかくその辺の娘に精神交換を行うことは不可能だ。相手の中に入ることが可能な条件を満たしている種族は少ない」
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。