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連載
背負った十字架
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「ですから私は順を追って話をしていたのですよ。まぁ、遠くから話を進めていたのは騎士レインに事実だと認めさせるためでもありましたが・・・・・・仕方ありません、話を簡潔にいたしましょう。最初から騎士レインはノワール家当主が犯人だと決めつけ行動をしています。そこには何か特別な感情があったのではないか、と私は考えました。次の王をどうしてもノワール家の血を継いでいるスクレット様になって欲しくないのは何故か・・・・・・その時、私はとある噂話を思い出しましてね」
リヴィエールは言いながらレインの表情を窺う。
話の中心になってしまったレインは下唇を噛み眉間にシワを寄せ、明らかに動揺していていた。
動揺する男とそれを覗き込む男。
そんな二人を見ながらエヴァンシル王は話を進める。
「なんだ、その噂話とは」
「ノワール家前当主には隠し子がいたという話です。前当主とはアヴァール・ノワールの父のこと。その話が貴族たちの間で語られていたようなのです」
「隠し子だと?」
「はい。もともと前当主には結婚を誓った女性がいたそうです。しかしながらその女性は貴族ではなかった・・・・・・ノワール家の発展のために貴族同士の結婚を求められた前当主は女性と会うことを禁じられたのだとか。その後、貴族の娘と結婚し産まれた子がアヴァール・ノワール。そこまではよくある話でしょう・・・・・・貴族というものは血や家柄を何よりも大切だと考えていますからね。会うことを禁じられていた前当主でしたが、どうやら密かに愛を継続していたらしく、アヴァールが生まれた何年か後、女性との間に子が産まれた。それを知った前当主の妻は激怒・・・・・・貴族という立場を利用し、その女性に無実の罪を被せ、処刑したのではないかと」
そう語るリヴィエールの視線は常にレインに向けられていた。
「その話は本当か? そうだとすれば許されぬ行為だ。だが、何故その話が騎士レインと繋がる?」
「噂では女性が処刑されたのち、産まれた子はノワール家前当主が付き合いのある家に養子に出したとされています。そしてその子は母に似た美しい金髪と耳の後ろに十字架のような痣があったそうです。まるで産まれた直後から、重い重い十字架を背負わされているかのように・・・・・・」
リヴィエールが話した瞬間にレインは自分の右耳を手で押さえる。
先ほどからリヴィエールがレインを覗き込んでいたのは痣を確認するためだったらしい。
それに気づいた王はレインに命じる。
「騎士レインよ、リヴィエールの話は本当か? 違うというのならば耳の裏を見せてみよ」
命令を受けたレインは観念したように押さえていた手をおろし、口を開いた。
「リヴィエール様の話は・・・・・・真実です。アヴァール・ノワールは私の腹違いの兄・・・・・・間違いありません」
ゆっくりと真実を語ったレイン。
まるで罪を告白するような言葉である。
一呼吸おいて、レインはそのまま話を続けた。
「確かに私はノワール家を恨んでおります。私から母を奪ったノワール家を恨まずにはいられませんでした。そしてリヴィエール様の仰るとおり、私は何としてでもノワール家がジュウザ様殺害を指示したと証明し、ノワール家を潰したいがために暗殺者スネークを追い、国を出ました。しかし、私はそこから様々な出会いを経て、大切なのは過去ではなく未来だと知ったのです。ですから、先ほどの進言はノワール家を恨んでのことではありません。全てはオランディの未来のために・・・・・・天地天明・・・・・・いえ、亡き母に誓って」
リヴィエールは言いながらレインの表情を窺う。
話の中心になってしまったレインは下唇を噛み眉間にシワを寄せ、明らかに動揺していていた。
動揺する男とそれを覗き込む男。
そんな二人を見ながらエヴァンシル王は話を進める。
「なんだ、その噂話とは」
「ノワール家前当主には隠し子がいたという話です。前当主とはアヴァール・ノワールの父のこと。その話が貴族たちの間で語られていたようなのです」
「隠し子だと?」
「はい。もともと前当主には結婚を誓った女性がいたそうです。しかしながらその女性は貴族ではなかった・・・・・・ノワール家の発展のために貴族同士の結婚を求められた前当主は女性と会うことを禁じられたのだとか。その後、貴族の娘と結婚し産まれた子がアヴァール・ノワール。そこまではよくある話でしょう・・・・・・貴族というものは血や家柄を何よりも大切だと考えていますからね。会うことを禁じられていた前当主でしたが、どうやら密かに愛を継続していたらしく、アヴァールが生まれた何年か後、女性との間に子が産まれた。それを知った前当主の妻は激怒・・・・・・貴族という立場を利用し、その女性に無実の罪を被せ、処刑したのではないかと」
そう語るリヴィエールの視線は常にレインに向けられていた。
「その話は本当か? そうだとすれば許されぬ行為だ。だが、何故その話が騎士レインと繋がる?」
「噂では女性が処刑されたのち、産まれた子はノワール家前当主が付き合いのある家に養子に出したとされています。そしてその子は母に似た美しい金髪と耳の後ろに十字架のような痣があったそうです。まるで産まれた直後から、重い重い十字架を背負わされているかのように・・・・・・」
リヴィエールが話した瞬間にレインは自分の右耳を手で押さえる。
先ほどからリヴィエールがレインを覗き込んでいたのは痣を確認するためだったらしい。
それに気づいた王はレインに命じる。
「騎士レインよ、リヴィエールの話は本当か? 違うというのならば耳の裏を見せてみよ」
命令を受けたレインは観念したように押さえていた手をおろし、口を開いた。
「リヴィエール様の話は・・・・・・真実です。アヴァール・ノワールは私の腹違いの兄・・・・・・間違いありません」
ゆっくりと真実を語ったレイン。
まるで罪を告白するような言葉である。
一呼吸おいて、レインはそのまま話を続けた。
「確かに私はノワール家を恨んでおります。私から母を奪ったノワール家を恨まずにはいられませんでした。そしてリヴィエール様の仰るとおり、私は何としてでもノワール家がジュウザ様殺害を指示したと証明し、ノワール家を潰したいがために暗殺者スネークを追い、国を出ました。しかし、私はそこから様々な出会いを経て、大切なのは過去ではなく未来だと知ったのです。ですから、先ほどの進言はノワール家を恨んでのことではありません。全てはオランディの未来のために・・・・・・天地天明・・・・・・いえ、亡き母に誓って」
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